Neetel Inside ニートノベル
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部屋が寒い。僕は蒲団を二重に被って小さく震えていた。吐く息は白かった。
エアコンの故障である。
何もこんな時に壊れなくても……と愚痴が溢れそうになる。ただでさえ部屋が広々としていて、心の中も寒々しいというのに……。あかん。このままでは身体も心も凍え死ぬ。もっと楽しいことを考えなくては。
ひとまずは寒さをなんとかしなくてはならない。取りあえず部屋の中で発熱してくれそうなものを片っ端から用意していく。冷蔵庫……ほんのり温かいが抱くには大きすぎる。あと見てるとめっちゃ寒気する。洗濯機……うるさい。あとあんまりあったかくない。テレビ……期待したが思ったよりもあったかくない。液晶のバカやろう。
最後に目に止まったのはガスコンロだった。火は悪くない。水でも沸かせば上半身は温かくなるだろう。料理は気が紛れるし、作ったものを口に入れれば中から温まることも出来る。下半身は……蒲団から出なければいいか。
料理なぞ何ヶ月ぶりだろう。ひょっとしたら年単位かもしれん。失敗すると落ち込んで寒さが倍増しそうだから簡単な奴がいい。蒲団を頭からかぶって冷蔵庫をそろりと開けると、味噌煮込みうどんのチルド麺が見えた。買ったのは僕ではない。とはいえ、買った本人がこれを食べることはないだろうから、僕がここで食べてしまっても問題はないはずだ。
取り出してみると二人前だった。二人前はまずい。前提として、そんなには食えない。かといって1人前だけ食べて残すのは、精神衛生上よろしくない。一緒に食べるつもりで買われたものを、勝手に一つだけ食うのは……なんというか、気が進まない。帰ってくる保障もないのにおかしな話だが、それでも、買った本人の意志を確認していない以上、勝手に手をつけてはいけないもののように思われる。
バカなことを考えているなーと思いつつ、僕は味噌煮込みうどんを諦めることにした。代わりに、少々貧相だがインスタントの味噌汁を取り出す。鍋の中に放り込んで、残りの飯と一緒にグラグラ沸かす。なんちゃって味噌雑炊だ。豆腐とかゴボウとかショウガとか、手を加えられないでもなかったが(そもそも普通の味噌もある)、これ以上冷蔵庫を開けていたら心身共に冷え切ってしまいそうだった。
出来上がった雑炊で顔を温めながら、ついこの間出ていったアイツを思う。味噌煮込みうどん、取っておくからさ、早く戻ってきてくれよ。頼む。早く食べたいんだ。

       

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