Neetel Inside ニートノベル
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 雨を避けて車の中で留守番をしていたら、帰ってくるなり妹が鼻をつまんだ。
「うわっ、くさっ」
「え? 臭い? 何が」
「お兄ちゃんの足! そんな犯罪的な臭いさせておいてのほほんと座ってられるわけないでしょ、ほら立って!」
 あれよあれよという間に俺は車から追い出されてしまった。
「しばらくそこで待っているように。私たちは車の洗浄に行ってくるから」
 そう言い残すと、妹たちは車を駆って行ってしまった。後に残されたのは、臭い足をぶら下げた俺。そして、その臭いに鼻をつまみながら遠巻きに見ている主婦の方々である。
「あら、なんだか臭いわね」
「あれ見て、あの人じゃない?」
「クンクン……あー確かにあっちから臭ってくるわー」
「ホント酷い臭いね。ちゃんと身体洗ってるのかしら?」
「食べ物のそばであんな臭いさせないでほしいわ」
 ねえ、俺なんか悪いことしたかな?
 そんなことを思っていると、後ろでガチャリと金属音がした。振り向くと制帽とガスマスクを被った警官が一人。それに何故か俺の手が後ろ手に回って手錠をかけられている。
「午前10時40分、確保」
 ねえ、俺ほんとにそんなに悪いことしたのかな。

 そのままパトカーに乗せられて向かうこと1時間。辿りついたのは見たこともないような寂れた山奥の廃墟だった。どう見ても警察署や留置場ではない。そのままパトカーを降ろされ、中に入るように言われる。まさか新手の警官を装った誘拐? 俺ってこんな目に合うほど悪いことをしたのだろうか。教えて欲しい。
 中には明らかに人の気配がしたが、後ろから警官に急き立てられては立ち止まることも出来ない。おずおずと俺は中に入った。
 まず目に入ったのはサングラスや金髪のロングヘア、スキンヘッド、いかつい身体とシルバーアクセサリーなんかで身を固めている、いわゆる『ワル』と呼ばれるような奴らだ。中にはヘルメットや角材、鉄パイプなんかで武装した奴らもいる。突然のことに皆が『ギョッ』とした顔を一瞬したが、次の瞬間すぐさま鼻をつまむとそのまま苦しそうな顔をして地面に倒れ込んだ。誰かの「ウッ、ぐざっ」という呻きが聞こえた。
 後をついてきたガスマスクの警官が言った。
「暴徒鎮圧へのご協力感謝します。お蔭で暴力沙汰にならずに済みました」
 ねえ、これも俺のせい? 俺の足が臭いせいなの?

       

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