Neetel Inside ニートノベル
表紙

日替わり小説
10/20〜

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「どうした、朝からご機嫌だな」
「そうなんだよ……フフフ、分かっちゃう?」
 俺はヒロと顔を見合わせた。冗談のつもりで言ったのに、こんな反応が返ってくるとは。
「相当なご機嫌っぷりだな。頭でも打ったか?」
「打ってないよぉ。もう冗談が上手なんだから」
 ノブはニヤニヤ笑っている。
「なあ、マジで何があったんだよ。教えてくれよ、俺たちの仲だろ?」
「えーでもな……」
「なんだよ、隠し事はなしにしようぜ? 友達じゃん」
 なんとか理由を聞き出そうとしたが、こういう時のノブはやはり用心深くて俺たちのことを微塵も信用してくれない。
「いや、やっぱ駄目。君らに言ったらさんざんっぱらからかわれたりおちょくられたりして台無しになるのが見えてるからね」
 この件はおしまいとばかりにノブは席を立った。俺たちはノブに見えないところで目線を合わせ、即座に行動を開始した。

 その日の放課後、ノブは校舎裏にある旧体育倉庫の前に立っていた。奴の前にいるのは何と女子生徒だ。タイの色からすると後輩だろうか。落ち着きなく身体を揺らしながらノブをちらちらと見ている。二人とも俺たちのことは気付いていない。後をつけたのはバレていないようだ。
「実は、先輩に前から言いたいことがあって」
「うんうん、何?」
「えっと……その……」
 女の子はもじもじしながら俯いて言い淀んでいる。ノブの声は優しかった。
「言えるまで待つからね。落ち着いて喋ってごらん」
「はい……実は……ずっと前から嫌いでした! 二度と姿見せないでください!」
 周囲が凍り付く音がした。女の子はキャーと叫びながら走り去っていく。擦れ違いざまに真っ赤になった顔がチラリと見えた。
 ノブはといえば、魂の抜けたような表情でぼんやりと突っ立っている。死んでいるのかもしれない。
「ノブ? 大丈夫かー生きてるかー」
「元気出せよ! 何、ちょっと言い方が刺激的だっただけで、明日から何か変わるわけでもないじゃん」
「うるせえ! つけてくんな! 死ね!」
「まあまあ怒るなって。ショックだったかもしれないけど、今日のとこはうちで飲んで忘れようぜ! 未成年だからノンアルコールだけど」
 泣き喚くノブを両脇から抱えて俺達は夕暮れの街へ繰り出していった。ちなみにヒロの実家はコンビニのフランチャイズである。

       

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