Neetel Inside 文芸新都
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―――少女はランプを辿ってみる事にした。

ランプは大木に木の実のように成っているのだから、人が作ったものではない。
となれば、ランプと人は繋がらない。
それでも少女がランプを辿ろうと思ったのは、単純に好奇心からだった。
寧ろ人と繋がらないと思ったからこそ、ならこのランプは何と繋がるのだろうという疑問が首を擡げてしまったのだ。
なんだかとっても危ない発想な気もしたけれど、少女は少し俯いてから、それでもすぐに歩き出した。

ランプはやはり道のように繋がっていた。
地面は他の場所と変わらないが、ランプだけが続くように伸びていた。
それを辿っている途中、少女はランプが一定の高さで成っている事に気づいた。
植物から、その一部みたいに生えているのに、決まった高さで生えているのだ。
自然のようで人工物のような、よく分からない感覚に少女は首を傾げた。
然し考えていても答えは勿論出ないので、少女はやはり歩き続けていた。
風景は変わらず、木々が深く生い茂る森でしかなく、変化はまるでない。
真っ直ぐ歩いているのか、くねくねと曲がりくねっているのかも、まるで分からなくなってきた。
そんな頃、ようやくひとつの変化が少女の目の前に訪れた。
否、正確には少女がその変化の傍へと訪れたのだ。

それは真っ白いワンピースに身を包みながら、袖から木の枝が絡みあうように伸び、頭部はランプで出来た何かだった。
ランプで出来た頭部にも木の枝が僅かに絡み、まるで髪の毛のように蔦が伸びていて、それはツインテールのように左右に流れていた。
木の枝が絡まって出来た四肢は大木を包み、煌々と辺りを照らす頭部は大木に添えられていた。
少女は一瞬、それはオブジェか何かだと思っていた。
だからほんの少し目を見開いて驚いただけで、悲鳴をあげたりはしなかった。
だが、少女が近づいた瞬間、その何かに包まれた大木からにょきにょきと小さなランプが生えた。
それは紛れも無く、少女が今も右手に持ち、そして辿ってきたランプだった。
どうやら、それがランプを大木に生やして回っていたらしいと少女はすぐに察した。
そして恐る恐るそれに近づくと、それはランプで出来た頭部を、くるりと向きを変えた。
ちょうど、顔を向けるように、少女の方へ。
「あら珍しい。見ない姿ね。」
そしてランプは鈴を転がすような可愛らしい声で、そう言った。
少女はぎょっと目を大きく見開いて肩を持ち上げ、体を強張らせた。
声も出ないほどに驚いたが、ぽっかりと空いた口が少女がどれだけ驚いたかを示していた。
だが、ランプはなんでもないようにその木の枝で出来た首を傾げた。
「……ああ、貴方、外の子なのね。」
少女は外、というのが何を指すのか分からなかったが、思わず首を何度も縦に振った。
それを見て、ランプは小さく頷いて、ややあってから大木から身を離した。
それから木の枝でささっとワンピースの皺を器用に伸ばしてから、明らかに指よりも多い木の枝でスカートの端を摘んだ。
「お初にお目にかかりますわ。わたくし、クヴィェチナといいますの。貴方のお名前を教えてくださっても、よろしくて?」
そして先程とは打って変わったような、大袈裟な口調で告げながらまた首を傾げた。
それがなんだかとてもとてもおかしくて、少女はきょとんと目を丸めた後、少しだけ笑ってしまった。
「笑うなんて失礼な子ね。外の子はみんなこうやって挨拶するんでしょ?」
クヴィェチナというランプの、恐らく少女だろう彼女は、そう告げながら少し頭部の光を強めた。
眩しくて思わず顔を両手で覆いながら、少女は首を左右に振った。
「……え?違うの?」
訝しむクヴィェチナの言葉に、少女は小さく頷いた。
クヴィェチナの光が少し柔らかくなったので、少女は手をおろして、皆が皆そういう挨拶をするのではない事を告げた。
それから、自分の名前と分かる範囲で自分がどうして此処にいるのかをクヴィェチナへ説明した。
「なるほど。エリシュカは私が生やしたランプを辿ってきたのね。」
少女、エリシュカは小さく頷いて、ふっと思い出したように手元のランプを見下ろした。
そして少しだけ悩んだ後、頭を下げて、クヴィェチナへ差し出した。
そして、勝手にランプを摘んでしまった事を謝罪し、それを彼女へ返そうとした。
クヴィェチナはそんなエリシュカを見て少し悩むように俯いた後、首を左右に振った。
明かりがぼやけ、長い蔦がぶんぶんと靡いた。
「ううん、良いわ。あげる。この森は、明かりがないと不便だから。」
クヴィェチナの頭部のランプがチカチカと瞬き、まるでそれが笑顔のように見えて、エリシュカは自然と笑みを浮かべて顔を上げた。
それから頷くと、改めてランプを自分の方へと寄せて、その明かりを見下ろした。
「ねぇ、これからどうするの?」
クヴィェチナの言葉に、エリシュカは―――


A) グヴィェチナに付いて行く事にした。
B) 帰り道を探しもう少し森を歩いてみる事にした。
C) どこか休めるところは無いかを聞いてみる事にした。

       

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