Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

タイトル「好きなだけ暴れていいゾ」
-------------------------------------------

~回想~
園長先生ボイス「
ここは埼玉県 春日部市
時を遡ること大会の三ヶ月前の丁度午後2時くらいになった頃」

春日部市で聞き込みをしている運営黒服。
指令は「野原しんのすけ」の身辺調査。

――最強池沼トーナメントに備えた準備活動の一環。
中途半端な池沼ばかり参加させていては殺し合いにならないし、観客も盛り上がらない。
トーナメントには少なくとも一名は規格外の選手が必要なのだ――

と、そう指示を受けた黒服数名が春日部市を散り散りに練り歩く。
(しんちゃんキャラに黒磯という黒服モブがいるのでその見た目イメージ)

そして集まった情報はあまりに不自然。
池沼が居座っている町の住人というのは大抵池沼のせいで九死に一生を得ることになるため、池沼のことをボロカスに言うのが普通。
だがしかし、春日部市の住人はむしろ肯定的。
聞いた話から推測すれば、野原一家はある種のカリスマ性さえ垣間見せている。



一週間の身辺調査の後、運営本部によって調査担当者に真実は伝えられた。
「野原しんのすけは社会性池沼ではあるが池沼ではない・・・『超人』だ」

その時、ベテラン調査員だけが本当の真実に気づいた。
今回の最強池沼トーナメントは、「ただの池沼の殺し合い」ではない。
間違いなく「あの超人一家」が関わってくる。
野原しんのすけは彼への供物なのか、あるいは勝機があるのか。
21世紀を代表する超人衝突の予感は、それだけでこの壮年の男の全身を青ざめて震わせた。


~回想終わり~

-------------------------------------------


山田「あで!? オイラとおんなじ高さに目があるねぇ! そこにいるのは小杉君かい!?」

首をブラブラと左右に揺らしながら山田が入場ゲート先を見つめる。
刹那、けたたましい咆哮。爆音。
しんのすけ「ほほほほほほおおおおおおおい!!!!!!!!!!!」
体育座りのままの状態で、異常な速度のしんのすけが入場した。
俗にいうケツダケ歩き。
鉄製の床表面を溶かしながら火花を上げてジャンプし、山田の目の前に着地した。


『あ、赤コーナー!! 地上最強の幼稚園児がやって来た!! 』
『オーラが凄いゾ!! 天才[天災]的だゾ!! 』
『身長392cm、体重4.5t!! ふたば幼稚園ひまわり組!!!』
『嵐を呼ぶ五才児ッ!! 野原・・・しんのすけェェーーーーーーーッッ!!! (みさえ風裏声)』


首を肩より下に構え、腰を肩より上に突き出した異常な程の猫背。
それでも尚、山田と同じ視線。

とても異様な子供だった.
巨大な頭をさらに巨大な四角い胴体で支えている.
そんな子供特有の三頭身身の丈は,見ただけで4m近い.
しかも,ジャガイモのような形の頭は,頭だけで1mを軽く超えている.

しんのすけはライオンより大きいだろう顎をだらしなく垂らし,猿のように広げた口から歯茎と牙を剥き出しにしていた.
だが,それ以上に奇怪なのは巨体に似合わない服装.
血よりも鮮やかな真っ赤な半袖のシャツと
目がチカチカする程の黄色の原色の半ズボン,
そして汚れ一つ無い真っ白な靴下.
どう見ても化け物なのに,どう見ても子供なのだった.


山田「なんだい・・・? 君もオイラと遊びたいのかい」

先ほどまで運営の兵士と戦っていた山田には、この大会の趣旨さえわからない。
目の前にいるしんのすけさえ、人間の手先と思っている。
両選手、見合ったまましばしの沈黙が続いた。


そして――
ひろし『しんのすけぇぇぇ!! 頑張れよぉぉ!!』
みさえ『しんちゃーーん!! 無理しなくてもいいんだからねー!!』
ひまわり『たいたいたぁーーーいっ!!!!!! あ”あ”ぁぁいッ!!』

会場に響くマイク音声。
選手に深い縁のある者には呼びかけ用のマイクが渡されている。
基本用途は死に目の池沼に最期の罵声を浴びせることである。
だが、今回は違った。

しんのすけの両親である ひろし みさえ は当然として、
同じ幼稚園の仲間、商店街の人、近所の人、春日部住人の声援がそこにはあった。
選手用として、観客席が会場の壁のスクリーンに映し出されていた。


その光景を見たその時、山田に衝撃が走った。
池沼とは・・・人間から蔑まれ虐げられ、家族からもゴミ同然に捨てられるものではないのか。

山田「じょ・・・」

振り返った山田の目に映るスクリーン。
ほとんど人はいないが、確かに見覚えのある人間が少しはいる。
花輪、まる子、たまえ、はまじ・・・
そこには誰も山田を応援する者はいなかった。
皆一様に恨みがましい目をしている。
まるでかつて幼少の自分を虐めていた人間のように。

山田「ぐぎぎぎぎぎぎ・・・」

やかんのように顔を真っ赤に充血させて悔しがる山田。
人間に向けられていた敵意の矛先がしんのすけに移った瞬間であった。

       

表紙
Tweet

Neetsha