Neetel Inside 文芸新都
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かげろう
起編

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「陽炎、蜉蝣…どちらもはかないものの例え」


今窓際一番後ろの席でボーっとしている俺は、地元の高校に通う受験を控えたごく普通の高校生三年生である。
強いて違うところをあげるとするなら、母親が幼いころに死んでいて、父親は海外に単身赴任しているから、家には俺しかいないことかな。名前は坂崎智哉(さかざきともや)。
まだ五月が始まったばかりだが、家族も彼女もいない、友達も少ない俺にとって、学校での一日はとても長いものだった。
そんな毎日を送ってたものだから、これから起こる日常に振り回されることなど、全く予想さえもしなかった。

「今日はみんなに転校生を紹介するぞ。」
「この時期に転校生?このクラス、ハルヒでもいるのか?」
「姫野優子(ひめのゆうこ)さんだ。」
「はじめまして、姫野優子です。残り一年もありませんが、みなさんよろしくお願いします。」
第一印象は良くも悪くも、普通だった。また一人増えただけ、そう思った。
「あー、席は…坂崎の隣しかないな。みんな仲良くな。」
(mjd?)
俺の平穏な日々にヒビが入るのは何とか避けたい。…我ながら寒かったな。
彼女はこちらの気も知れず笑いかける。
「よろしくね、坂崎君。」
「あー、席替えは一ヶ月に一度だからそれまでよろしく。」
俺は、その後彼女が見せた悲しそうな顔を見て見ぬふりをした。

HRのあと、当然のように質問攻めが始まった。
「ねぇねぇ、どこから来たの?」
「前にいたとこってどんなとこ?」
「どうして転校して来たの?」
その質問の一つ一つに、彼女は淀みなくすらすらと答えていく。まるで、どんな質問が出るか最初から分かっていたかのように…。
そんなこんなで、彼女はその日のうちにクラスに溶け込んでいた。二年以上この学校にいても溶け込めない俺とは、大きな違いだ。

HRが終わると授業が始まる。今日の一限目はリーディングだった。
「ねぇ、教科書見せてもらっていい?」
「うぇ?」
若干魔界に入りかけていたため、俺は我ながら情けない返事をしてしまった。
「私まだ教科書もってないの、お願い見せて?」
別に俺に断る理由はない。
「別に勝手に見てくれていいよ、俺どうせ寝てるし。」
「え~!そんなのダメよ!受験生でしょ?」
そんなこと俺の勝手だろと思いながらも、先生に聞かれても後々面倒なので、来る前に素直に従うことにした。
「ねぇ、坂崎君はどこから来てるの?」
突拍子のない質問。
「別に…どこだって良いじゃん。」
「ダメよ、私だけ根掘り葉掘り聞かれてフェアじゃないわ。」
「てか、授業に集中しろよ。受験生だろ?」
さっき自分で言ったことだ。
「そ、それとこれとは無関係よ!」
どこが無関係なのか、三行で俺に説明してくれ…。
「あのな…。」
その時、背後に異様な殺気を感じた。
「Hi,Sakazaki and Himeno.Are you kidding me?」
「…Yes.」
そして俺達は、仲良く教室の後ろに立たされた。

       

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