Neetel Inside 文芸新都
表紙

かげろう
承編

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今、教室の後ろに立たされながらも、ヒソヒソと雑談している私は、ごく普通の高校に通うごく普通の女子高生。強いて違うとこをあげるとするなら、ついさっき転校してきたことかな?名前は姫野優子。

雑談をしている相手はだれだって?それは前編を読んで悟ってね☆
なんだかんだ言いつつ、教室の後ろ立たされ事件(?)をきっかけに、私たちの距離は近くなった…気がする。
実際、最初は全く話せなかった彼と結構打ち解けることができた…はず。

授業が終わると、先生が教室を出ていった。
終始こちらを睨んでた気がするけど、私の友達作りのために先生には涙を飲んでもらうことにしよう。
授業が終わると、すぐに彼は自分の席に戻り、机に突っ伏した。
「あっ、ちょっと!まだ話は終わってない…。」
「まぁまあ、あんなやつほっといて俺たちとだべろうぜ!」
そこで、私と彼との会話は一旦途切れた。

それから一週間ほど、私は彼と授業中、ずっと雑談するのが日課になった。
自分が受験生ということを忘れて…。
そして二週間ほど経ったある日。
「ねぇ、家に来ない?」
「…は?」
「引越しの片付けかが、まだ済んでないの。手伝ってくれないかな?」
「あぁ、そういうことか。…って、んなこと運動部のやつらに頼め。俺が部活やってないこと知ってんだろ。」
「うん、だから頼んだの。暇なんでしょ。」
この辺りでは、部活は毎年五月の半ばまでやっているそうで、今運動部は大変なのだ。
「お前…。俺の予定は無視かよ。」
「…予定あるの?」
「大有りだ。家に帰って、昼寝して、夕飯食って、風呂入って…。」
「…予定あるの?」
「アリマセンorz」
私は半ば強引に労働力をゲットした。
そしてその日の午後。

「お邪魔します。」
「どうぞ上がってー!」
私は、リビングで片付けをしながら声をかける。
しばらくして、仏頂面で彼が現れる。
「…普通、玄関まで出迎えないか?」
「無駄口はいいから手伝ってくれる?」
彼は何か言いたそうだったけど、黙って片付けを始めてくれた(ゴメンね

しばらく無言で片付けをしていると、珍しく彼の方から話題をふってきた。
「…あのさ、親は?」
「ちょっと出かけてるの。一時間もすれば帰ってくると思うわ。」
「あ…そう…。」
そういうと、どこか期待外れ…というか、仲間外れのような表情をした。
そして、親が帰ってくるまでの約一時間。私たちは無言で黙々と作業を続けたのであった。
お母さんが家に帰って来て彼を見たとき、どんな反応をするかと思ったら、意外と冷静でこっちがビックリした。

「ねぇ、家に泊まっていかない?」
作業をだいたい終わらせた頃に、お母さんが彼にとんでもない提案をした。
「は?」
「ちょ!お母さんっ!?」
流石にマズイと抗議しようと思ったら、
「だって、引っ越しの片付けを手伝ってもらったんだもの、お礼をしないとね?」
「確かにそうだけど、方法に問題がある!」
「お家に電話しないとね。電話番号おしえてくれる?」
この人、我が親ながら何も聞いちゃいない。
「あ…、家には誰もいません。」
「え?」
「俺、小さい頃に母親が死んで、父親は単身赴任してるから家には俺一人なんです。」
場に重い空気が流れる。
「あ…、ゴメンね。悪いこと聞いちゃった。」
「いいよ、慣れてるから。」
「それじゃあ、尚更泊まってかないと!一人でいたら気が滅入っちゃうわ。」
自分でも何を言ってるか分からなかった。ただ単純に彼を慰めたい、そう思った。
親のいない彼と、親に付いて頻繁に転校を繰り返す私。それはどちらが不幸なのだろう…。
そんな五十歩百歩なことを考えて少し憂鬱になった。
結局、彼は家に泊まってはいかなかったけど、それから彼は、たまに家に遊びに来るようになった。

       

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