Neetel Inside ニートノベル
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「我ながら良いゴミ記事が書けた」
自虐的ともとれる言葉をつぶやきながら、蔵人は満身の笑みを浮かべる。

蔵人は次の案件に取り掛かる前に、別窓で開いていた検索ページを閉じる。
閉じようとしている検索ページには、全身脱毛に関する検索結果が並んでいた。
そう、蔵人は、ネット検索で得た情報だけで記事を書いていたのだ。

本来執筆作業というものは、膨大な専門資料や取材によって得た情報から記事を書き起こすものだが、低単価のWEBライティングではいちいちそんなことをしていたら赤字になってしまう。
それにタスク作業にはシステム上の制限時間があり、取材などをしている時間すらない。

必然的に検索による情報収集しか、選択肢の余地はないのだ。

勿論ネット上の文章をそのままコピペしただけでは、当然コピペチェックツールに引っかかり、記事は拒否されブロック、最悪の場合クライアントが裏で共有しているブラックリストに登録されてライター人生はおしまい。
そうならないためにも、複数のネットソースから適当に情報を拾い集めて、自分なりの文章に翻訳して記事にする。
それがこの世界で生き残る術だ。

可もなく不可もない、それでいてコピペチェックツールにコピペ判定されない程度のオリジナリティ。
それが底辺WEBライターに求められている執筆能力だ。

既存のありふれたネット情報をシャッフルして、それをオリジナリティと称してネットに垂れ流す。
そうして垂れ流された情報を基に、更なる似非オリジナル記事が量産されるという図式だ。

本当に吐き気がする行為だ――と、蔵人は心の中で吐き捨てる。

しかし切実な問題、人は生きるためには金を稼がなくてはならない、まっとうな方法でお金を稼げるのならそれに越したことはない。
だが、世の中にまっとうな仕事というものはどれだけあるのだろうか?
自分のしていることに疑問を持ちながら働き続けている人間など、世の中に巨万といる、自分の好きな事をしてお金を稼いでいる人間など一握りだ。

そう、これが当たり前なのだ。

そう納得して、蔵人は次の案件を探し始めた。


続く

       

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