No12 「冷凍星人の最期」

はるか大宇宙の彼方から地球を侵略しに来た侵略星人、モルツィロ星人と、宇宙道徳に従って地球を守る宇宙の空手家、カラテレンビクトリーの戦いは、カラテレンビクトリーの勝利で終わった。
星人の体はビクトリーの回し蹴りで粉々に砕け散り、その破片は地球に降り注いでいく。

どこかの雪原で、星人は意識を取り戻した。
モルツィロ星人の生命力は強靭で、粉々になってなお、生き続けていたのである。
しかし、生命維持に必要な器官のほとんど全てを失った星人は、最早戦う事は勿論、満足に動く事もままならない。
地球にある物質では、モルツィロ星人の体を復元することはできないので、このままではその命は長くないだろう。

「ココマデカ」

最早、星人には何かをしようという気力も無い。
素直に状況を受け入れた星人は、じっと、最期の時を待ち始める。

「あ、あの氷光ってる」

そんな時、星人の感覚器に、声が聞こえた。
星人が音や光を感知する器官は、地球人の物とは全く異なっており、砕け散った今もなお、人間並みに周囲の音と光を察知する事が出来のである。

「ほんとだ、綺麗だな」
「綺麗だからこれも雪だるまの部品にしよう!」

見れば、地球人の少年少女が自分を見て嬉しそうにはしゃいでいる。
最早地球侵略の達成は不可能であると確信している星人に、二人に対して悪意ある行いをするつもりはない。
なので、星人はしばらく二人に身を任せてみる事にした。

「この氷は雪だるまの鼻にしよう」
「よいしょ、よいしょ…あ、崩れた」

笑顔で楽し気に雪だるまを作る二人の子供。
ぼんやりとその光景を見つめていた星人は、自分達の星の子供達もまた、こんな風だったなぁと、遠い母星のでの出来事を思い出していた。
どの星でも変わら無い、無垢な子供達を、自分は自分の都合だけで、氷漬けにして死滅させようとしていた事にそこで思い至り、星人の心に罪悪感が生まれてくる。
宇宙の道徳に背いて、崇高な目的があるわけでもなく私利私欲で始めた星人の侵略は、今、周囲の雪の様に、跡形もなく静かに消えてしまった。
自分の決めた事の結果なので、仕方がない事だが、それでも、一抹の寂しさがある。

そこで、星人はせめてここにいるこの二人に、自分を記憶してもらう事にした。

「できた」
「わー、うまくいったね」

星人を含んだ雪だるまは無事、子供たちの手で完成を遂げた。
自分達の考えていたよりもうまい具合に出来上がったので、素直に喜ぶ二人。

「うまく私に体を与えてくれてありがとう」

不意に雪だるまからした声に、二人は一瞬固まった。
だが、声の調子に悪意が感じられない事を感じ取り、二人は恐る恐る雪だるまへと近づいていく。

「私はモルツィロ星人、君達が体を作ってくれたおかげで、私はこの星から旅立つ事が出来る」
「え?」
「どういう事?」

不思議そうに星人の言葉を聞いている子供達に、星人は雪だるまの顔を操り微笑ませる。

「君達が私を雪ダルマに加えてくれたおかげで、私はとても助かったのだ、ありがとう」

子供達はどうやら、自分達が星人に感謝されているらしい事を察した。

「いやいやいや、いいんですいいんです!お礼なんて」
「どういたしまして」

謙遜する男の子と感謝を受け入れる女の子、二人に自分の想いが伝わった事を認識すると、星人は雪ダルマを念動力で動かして、子供達から少し距離をとる。

「本当にありがとう、さようなら」
「え?もう行っちゃうの」
「もっといて、ください」

子供達が驚いて、名残惜しそうに見つめる中、星人は雪ダルマの下部からエネルギーを噴射すると、空へと飛び立った。

「さようなら、ありがとう、さようなら」

別れの言葉を述べ乍ら、高度をあげていく星人。

「さよーならー」
「さよならーーー」

子供達は会ったばかりの星人との別れに、目に涙すら浮かべて必死に地上で手を振っている。

「本当に、ありがとう」

子供達の対応に満足し、最期に心からそうつぶやくと、モルツィロ星人の体は大気圏突入の摩擦熱で雪ダルマごと燃え尽き、その魂はどこかへと旅立っていった。