Neetel Inside ニートノベル
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おんりーわんわんず
高校生

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新品の制服はとにかく動きにくい。今は授業中なわけだが、ノートをとる手は思うように進まなかった。そもそも、入学して間もないこの時期、やることなんてたいしたものでもない。私はハゲの板書なんか見ていなかった。生意気に先の単元を進めていた。
ふと、ざわつく教室内に、顔をあげる。マワリノヒトトハナシテコタエヲミツケナサイ
他の教師は2人組を作らせるが、このハゲは自分の板書の時間が欲しいだけで、喋らせることにこだわらない。
「まわりのひと」は私抜きでも十分お喋りできる。私がいる方ができない、の方が正しい。
私は視線を教科書へと戻した。



今日は機嫌がいい。誰とも会話せずに一日を終えられた。実際日付が変わるまで8時間ほどあるが。
後は最近見つけた商業施設内の学習スペースで21時頃まで時間を潰すだけ。勉強、私の取り柄はこれだけ。しかし、入学直後の課題テストで、1位をとったことは、多少なりとも私に自信をつけた。

「あ、**じゃん、お疲れー」
肩が少しはねた。人の声も少なくない駅のホームで、確かに聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。振り替えると、あぁ、やっぱり。なんて、顔に出さないように、お疲れと返す。こいつの話って聞いてて疲れるんだよなぁ。
電車の中でも声のボリュームを落とすことなく語りつづけたこの人は、一人でいることができない人。パシりでもなんでもいいから誰かにくっついていないと生きていけない、そんな人。中学で嫌われすぎてて私にベッタリだったなぁ、同じ高校受けて落ちてたっけ?犬みたい。犬の方が賢かったり。

誰にでも尻尾をふってたけど、高校でも誰にも見てもらえず、自殺したらしい。葬式は、まあ、あの子の繋がりの狭さが目に見えすぎて呆れもした。私は遺書に、葬式するなと書いているので問題ないだろうが、あの子の親族は閑散としている式にますます気が滅入るのだろうかなど、不謹慎なことばかり考えていたせいか、お焼香をまだ新しい制服につけてしまった。



なかなか白いあとはきえなかった。



       

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