自選集

12月18日/死臭に生えるキノコ
殺人現場や自殺があった部屋にだけ生えるキノコがある。
それを数人で、廃墟になったマンションまで探しに行く。
部屋はボロボロで床板などは今にも崩れ落ちそう。
枕の中や部屋の隅など、キノコが生えそうな場所を探すけど見つからない。
そもそもここは殺人事件のあった現場だったのだろうか?と話す。
その事については間違いない。なぜなら私がここで◯◯を殺したのだから。
結局キノコは見つからず、部屋を出る事にする。
押入れからは恐ろしい表情をした◯◯の顔がぼんやりと浮かび、こちらを見つめている。

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12月22日/へどろ
内臓と血を混ぜ込んだような、どす黒く細い道を歩いて行く。
足場は50cmほどで、踏み外せば恐らく命は無い。
ぬめぬめとした地面に足を取られながら歩いていると、スライム状の塊が巨大な目を見開いて追ってくる。
途中何度も捕まりそうになりながら必死に逃げる。
そのうちに、ぽっかりと空いた大きな穴に突き当たる。底は見えない。
捕まる寸前に、軽く助走をつけて、穴へと飛び込む。

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12月28日/数千メートルの地下世界の空
石造りの地下室をひたすら降りている。
これまでにどれだけ降りているのか分からないけれど、おそらく数日程度は。
どのフロアも迷路のような造りで、行き止まりや偽の扉が邪魔をする。
すでに地下数千メートルという深さなのに時折屋外に出る。
朝かと思えば夜、雨だったり晴れていたり、日本だったり外国だったりと安定しない。
西洋風の庭に出て渡り廊下を渡っていると、遠くには山脈が見えた。

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1月10日/旅行中に
かなり古い民宿の一室。
チャイムが鳴って扉を開けると、古い友人が数名。そのまま大浴場へ行く。
タイル張りの浴場の排水口からは、子供の腕が伸びている。
ナイフを持っていたので切り取ろうとするけど、すぐに腕は引っ込んでしまう。

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2月2日/後ろを振り向けば消える夢のように
吹き抜けのあるログハウス。その2階にいる私。
大きな机の上で寝転がっていると大男が話しかけてくる。内容は分からない。
背後には、色んなお店のショップカードが無造作に散らばっていた。
少し時間が経って、洞窟のようなゲームセンターにいる。
薄暗闇を画面の明かりが照らす。扉の立て付けが悪く、時折強い風とともに雪が入り込む。
特にゲームに興味はないので、あたりを歩いていると、また誰かが話しかけてくる。
「後ろを振り向くと見た夢は消えるのだから、背後には気をつけないといけないよ」。
その通りだ、と思うけれども、私は何に対して納得したのだろう?

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5月21日/やわらかいもの
トカゲと一緒に身長を測っている。
私は10cm以上伸びていたけれど、
トカゲはぬめぬめとしているので中々直立しない。
それに、彼は2m以上ありそうなのだ。
柱に傷をつけるのは諦めて、巻き尺を使うと
これもぐにゃぐにゃとして、触れることもできなかった。

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6月25日/背中に揺られて
延々と続く坂道。実家の周辺を歩いているらしい。
ただ、このあたりに坂道なんて無かったはず。
10kmほど歩いたのか、足が疲れたので休んでいると
目の前を巨大なヘラジカが通っていく。
うまく手懐けて背中に乗り、坂を駆け上がり天辺へ。
頂上は晴れ上がり、眼下に雲が揺蕩う。そのかなたには海。
季節は春と夏のあいだ。

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9月18日/散文的な夢
たびたび見る果ての夢。
沼の果て、橋の果て、川の果て、道の果て、地下の果て。
あるいは、私の果て?
そして、私は橋を越えて。

車がたくさん走っている坂の間。
横の店々は隙間がなく、暖簾と紙細工が縦横無尽。
坂を登るとそこは川。そして、橋を越えて。
橋を越えるとそこは海。

海の間を走る車の列。
継ぎ目なく、途切れなく、どこまでも渋滞。
空は晴天、突き抜ける青と白いコントラスト。
海を越えればついに陸。