Neetel Inside ニートノベル
表紙

インターネット変態小説家
堕落的

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みなさんには理想というものがあるのだろうか。俺にはある。理想は常識から外れているほど楽しいが、苦しみを生む。

例えば。
とある女性を好きになった。なったとする。
とても。かなり。もちろん人間だ。

俺は男で彼女は女だったので、繁殖としての視点において正常であったし、少子化だのなんだのと騒いでいるこの国にとってはそれが望ましい状態なのだろうとも思う。
この世には同性を好きになることもあるらしいので、俺はそうじゃなかったということと、つまり子供とか、生殖に関するそういう恋愛においての生物的プロセスを踏んでいけるという純然たる事実がそこにあった。

しかし俺にとってそんなことはどうでもよかった。
彼女の服の下が、存在してほしくないと思った。くびれを一片も意識したくなかった。
ただ、そこにいるだけであって欲しかった。
何かを食べたり吐いたりしてほしくなかった。空気を吸ってほしくなかった。
ただそこにいて笑って欲しかった。
そんな恋を夢見ていた。
冗句の様に振る舞ったが本心でもあった。

俺の人生の主役は俺で、すごろくで喩えるならコマだ。
その他のプレイヤーは本質的には居ないと考えていて、世界で起こる事件や事故はただのイベントととして俺が止まったマスで何かが起きた、ただそれだけのことだと思っていた。
両親が死んだ時も、そんな気持ちだった。
こんなこともあるんだなと思った。
少しだけ価値観が揺らぎはしたが結局は、ただのイベントだった。

今の所生活に難はなかった。
苛立ちはあった。
両親とは仲が良かったし、俺の人生でもまぁ、上位の大切な人だった。
それをこんなにもあっさりなくされ、かなりイラついてはいた。

しかし相手は社会的常識の視点から見ても、しっかりと反省をし、お金も通常の事故ではありえないくらいの額を払ってもらったので、もう、何も言えなかった。

解決した不条理に立ち向かう理由は世間にも俺にもなかった。

女の子の話になる。よくわからないフードの男?にもらったアレのことだ。
彼女は俺のことが好きみたいだ。
おそらくだが、プレゼントだと言っていたので、そういった好意も付属済みなんだろう。
しょっちゅうくっ付いてくる。最初はやんわりと断っていたが、最近は彼女を蹴り飛ばすようになってしまっていた。

彼女は部屋の隅にいた。こちらを見て笑ったのでその辺にあった何かを投げつけた。
台と一体化しているセロハンテープだった。彼女は怯えている。
俺は彼女のことが嫌いだった。

疑問はもうほぼない。前提としてある怪奇な現実以外にはなにも。

あの男?が言った通り、家で過ごしてるうちに彼女が話したことで全ての説明が事足りた。

簡単に言うと彼女は人間ではなく作られたプレゼントで、俺みたいな大きな不幸があった人間のもとに届けられ心の復帰の助けをするらしい。

いらないなぁ。心からそう思った。

今のところ俺がただ気に入らないことや不気味な出生の彼女に怯え、暴力で己の精神的均等を図ろうとしているように見えている人もいるだろうがそうではない。
積み重ねというものがあるのだ。嫌悪の積み重ねが。

始まりは数日前のことだった。

真昼間、未だ学校にもいく気になれず、というかもうこのまま辞めてもいいと思っていたのだが、昼過ぎくらいに起きて、顔洗ったり歯を磨いたりなどの支度をして、で結局特にすることなくまたベットの傍に腰掛けたときのこと。
彼女が隣に座ってきた。
この時はまだ何もわかってなかった時だし、彼女は可愛かったので少しドキドキしていた。彼女は俺にひっついてきた。
物凄くいい匂いがしたし、ベッドの上で引っ付かれたから俺は様々な邪な想像を膨らませたがその妄想を一言で表すように

「SEXしよっか?」

と彼女は呟いた。
俺は正直一瞬頭が真っ白になるくらいに興奮した反面やけに冷めていた。
向こうから誘ってきたこともそうだし言葉の直球さや、今のベットの上でひっついてきているガッツリとした雰囲気なども合わせて、興奮する反面冷めたのだ。

興奮は単純に肉体的接触による反応と、彼女のセリフとこちらの想像の一致による自身の考えと現実の反応が重なったことに対する歓喜が合わさって起こったものだと推測でき、それが正しい反応なのだと感じた。
それと同時にそういう考察やムードを投げ打ったストレートな言葉に、未だ精神はゆりかごな俺の性への憧れが穢されたかのように思えたのが冷めた原因だろう。

俺はゆっくり考え、考える前から思っていたことを口に出した。

「悪いがそう言う気分になれない。両親……近しい人も死んだし、わかるよな?それに君が悪いわけではないが、こういう雰囲気も嫌いだしな。」

なるべく傷つけないような言い回しをしたつもりだった。
彼女はわかった、というような顔をしてキスをしようとしてきた。俺は避けたが彼女の唇は尚追跡してきたので、立ち上がろうとすると服を掴み体重をかけ、のしかかってきた。
相手は華奢だがそんな風に掴みかかられると俺は立ち上がろうとして変な姿勢だったのもあり、無理矢理ベッドに押し倒された。
そしてそのままキスしてきたが、不味いと思い、すぐに顔をそらしたので触れたのは一瞬だった。
ちゅっってよりガンッって感じだった。
俺はとっさに反対に周り……つまりクルリとベット上で回転し、彼女に馬乗りになる体勢で押さえつけた。
彼女は少し暴れた影響か顔を赤らめてこちらを見つめていた。
正直かなりエロかったが、こういう格好になって初めてわかった事でかなり緊張するのだ。
AV男優はこの状況+カメラの前でやるんだからすごいなぁと思った。
俺はどうすることもできず、そのまま彼女の体から降りた。
ベッドに座り直す。彼女は寝たままだ。

「やめろよ……」

絞り出すように呟いた。

彼女はハアハアと呼吸をしている。
俺も息切れを起こしていた。運動量的に緊張によるものか。
静かな部屋で二人の呼吸音だけが鳴る中、彼女から話しかけてきた。

「じゃあ舐めるだけは?」

何を?
舐める、と女の子に言われたのは初めてなので少しだけドキッとしたが、ハッキリ言ってすでに嫌悪感の方が強かった。もうやめて欲しかったし、この部屋にもいないで欲しかった。
両親が死んでこの部屋に俺一人でいたかった。
多分本当は両親にいて欲しかったんだろう。
俺はそう思うと寂しくて、彼女といるとさらに寂しくなると感じていた。

彼女にダメとだけ伝えると俺は部屋を出た。
着替えて外に出る。
彼女が俺の近くに来ようとしたので無理やり部屋の中にいてもらった。
もし彼女らが詐欺集団なら通帳等貴重品などを取られるかもなと思ったが、今はもうどうでも良かった。ただ彼女から離れたかったし正直彼女がいなくなるなら通帳なんて盗られてもよかったとその時は思っていた。

青空を眺めた。特に関連性はなかったが普遍的な雲や空に今までの日常を投影し、それに続くように両親のことや今までのなんの心配や不安のなかった生活のことを思い出して、事故が起きてから初めて、少し泣いた。

何をするでもなく時間は過ぎた。
あっけなく流れていく時の中、俺の心が癒えるまでにはまだ足りないようだった。
夕日が俺を照らし、このままではしょうがないから帰るかと思考が促される。

全て夢であってほしいと思ったし、夕暮れの中を歩いていると子供の時みたいに母親が帰りの時間に関する小言を言いながら迎えてくれるのではないかと、淡い期待をしていた。

帰ってきた時、別にフツーに彼女はいた。
料理を作っていた。ハンバーグだ。
フツーに美味しかった。

でも材料はどこから持ってきたんだ?
買いに行ってたらしい。スーパーまで。俺の金で。
美味しくなかったら殴っていたところだった。

結局その夜フツーにSEXはした。

フツーだった

       

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