Neetel Inside ニートノベル
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インターネット変態小説家
群青

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子供の泣き声が聞こえる。
隣の車両からかな。
どうやら、私は電車に乗ってるらしい。
子供の泣き声は嫌いだ。

車窓から外を覗く。
雲一つない澄んだ青空が、見渡す限りの地面いっぱいに広がっていた。水の上か。
どうやらこれは千と千尋の神隠しに出てきた電車のように、水上に敷かれたレールを走っているらしい。とても綺麗だ。
どこまでも続く青。地平線まで真っ青だ。
そんな群青の景色を眺めるのにも飽きた頃、周りに、乗客がいないことに気がついた。

私だけなんだな。
子供の泣き声が聞こえる。そうだ。隣の車両には子供が乗っている。いつまで経っても泣き止まない。向こうも一人なんだろうか。しかし特に興味も用事もないので、私はまた座席に座り、窓の外を眺めた。

いつまでも、どこまでも青い景色。
しかし、なんだか少しづつ懐かしい気分になっていった。こんなに綺麗なところ、来た覚えなんてないんだけどな。
穏やかな反面、私はこの電車をいつ降りればいいのかわからなくて不安になってきた。

子供の泣き声が聞こえる。
これさえ無ければ、完璧な空間なのになぁ。
私は窓の外を眺めながら完璧なノスタルジーに浸っていた。
不安は消え去り、もう、何もなかった。
どこまでも続く青に心を奪われていた。
全くもって綺麗だ。私の心まで、全てがこの透き通る青に染まった気分だ。清々しい。

私は青が一番好きな色なのかもな。なんだかふと、そう思った。車窓から覗く景色が私を魅了していた。子供の泣き声が聞こえる。
心は一片の濁りもなかった。ただ満たされていた。窓の外。綺麗な青が光を反射する。

青い空間は私の心を掴んで離さない。もうその他の何もかもがどうでもよかった。
電車は走り続ける。遠い遠いこの線路の先、どこまでも続く地平線の向こうを。そんなこと関係なかった。ただただ美しかった。

電車は走り続ける。
窓の外は澄み切った青空を水が映し出し、とても綺麗な青の世界だ。私は車窓の外を眺めていた。

子供の泣き声が聞こえた。

       

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