籠
「ねぇ、ちょっと・・・」
私とミサは、ルームメイト。
でもミサは、外に出るのが嫌い。
「・・・ミナ、どこに行くの?」
「買い物」
正直、私はミサに冷たかったのかもしれない。
私がそう冷たく言い放って買い物に出てたころ、彼女は手首を切っていた。
帰ってくると、ミサは手首からドクドクと血を流しながら、泣いていた。
私はいたたまれなくなって・・・・・・。
その日以来、二人の部屋を仕切ったカーテンをはずし、二人いっしょの布団に寝た。
買い物に行くときは、手をつないで。
離れてしまわぬよう、絆と言う名の鎖でつないで。
そのうち私もミサから離れられなくなって。
目を離せば、あの日のように手首を切ってしまうから。
もうあんなミサの目は見たくない、そう思っているうちに、ふとした事で出かけなくてはならなくなった。
出かけて帰ってきて、ミサは全身血まみれで部屋に倒れてた。
・・・・・・私もミサとおんなじ痛みを分かち合おうと、全身をカミソリで傷つけた。
そして、血まみれ同士、抱き合った・・・・・・。
私も外へは出なくなった。
次第に消衰してゆく二人、けれどそれさえ恍惚の中で。
残り少ない時間。せめて、この瞬間だけはと。
そんな平穏なある日、ミサはつぶやいた。
「ミナ、月の見える部屋に住みたい」
私は屋根を壊した。
大分時間がかかった。なにしろ疲れていて、力が入らなかった。
やっと壊したころには、ちょうど月が天頂に上っていて。
きれいな月光が、二人を照らした。
「・・・まるで私たち、ウサギみたいね」
ミサがつぶやいた。
ミサの瞳はまるでウサギのように、透明な赤色をしていた。
私は微笑んで、
「そうね」
とだけ、つぶやいた。