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ベル詩集
“時間”

「空の片隅が」


空の片隅が、その瞼を大儀そうにもちあげると、
薄明かりは濃紺の目となって、街の細部をとらえる
どうにか今、生まれたばかりの大気の下で、
風は安らぎ、涙のように冷ややかだった

時間は、私がはっと息を呑む、
その瞬間に停止する
凍った時間の感触をたよりに、
止まった川をさかのぼる

街は、夜であった時よりも、
ずっとゆっくりと、厳かに眠って、
うずくまる家々の、ちぢこまる部屋々々は、
もはや息ひとつしていない

やがて囁きが飛び交うのだろう、
小鳥の目を覚ますに十分な声で、
芝生をそよがせるに十分な声で、
時間の秘密を十分に含んだ声で

彼らは何が言いたいのだろう、
あるいは言葉にならないのだろうか、
新たに迎えた夜の終わりと、
はじめて立ち会う《時》の誕生を
「そして流れだす」


そして流れだす瞼の溝に
光をはらむ川の水。
予感でいきづく睫毛のあいだを
こがね色の息吹きが鳴りわたる

流れる光のふるえを歌え、
おののく空間のとばりをやぶれ、
まばたきほどのわずかな時間で
世界の重みをふりほどけ!

鳥は絶壁をおそれはしない、
悲しみは光に追いつかない。
硝子(ガラス)のような跳躍の先で、

砕けちる肉体の輝ける核で、
命が絶えゆくまぎわに映る
瞳の光よ流れだせ


(2019/12/24 Tue.)

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