Neetel Inside 文芸新都
表紙

脳内麻薬が氾濫したら・・・
悪化

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 恐怖感が募る…父が亡くなって以来、・・・救急車のサイレンが聞こえてくると・・・
家族の帰りがいつもより遅いと・・・・・心臓がドキドキしてどうしようもなく怖い・・・・・・
不意に鳴った電話の呼び出し音に極端に驚いて、悲鳴を上げながら反射的に電話をカウンターから叩き落としたこともあった。
ここまでならまだ万人に理解してもらえるのだろう…か・・・・?

 恒常的に恐怖感を感じながら、記憶の継続性を欠き、高揚感と不安・焦燥感を繰り返しながら、おかしな妄想、思い込みも激しくなっていった。
 突拍子もない、他人には理解できない理論(今の自分でも理解できない)空想に振り回され、数々の奇行に及んだ。

・今夜、◯時に巨大地震が起きる。と思い込み、避難に持ち出すための荷物をまとめたり、浴槽いっぱいに水を張ろうとした。→時間が過ぎても何もおこらず、自分がおかしいと十分くらいで気付く。

・人が助けにやって来るので、鍵を玄関ドアの外に落としておく→??何で!?自分でも意味わからなさに気づき、拾いに行く。(数十分ほど玄関外に鍵を放る、拾う、を繰り返していた。)

・準備出来た(何の?)合図を送らなきゃと思い、部屋のドアを思いっきりバタンと閉める(音が小さくて聞こえてないかもと思い、何度も何度も開けては強く閉め直していた。)

・世界がヤバいことになるのを止めなきゃ…どうすれば・・、ああっ!そうか!コレで自動で止まるんだ!!と思い、浴槽給湯器の“自動”のボタンを押す。→押した瞬間に ん?なんのこっちゃ・・と思いスイッチを消す。

・通信システムが搭載されてると思い、秘密の暗号(?)をブレーカーにささやく・・・・

実際に何か行動を起こさなくても、あのビルが爆発する・・・とか、強く思い込む時もあった
自分で覚えている奇行もあるが、そうでない変なこともしているのかも・・・記憶が抜け落ちているのだから。

     

 しかし意識が正常に戻ると、これで治った、もう狂うことはない・・・とその都度思っていた。
家族は退院後にも起こる私の奇妙な言動に困惑したようで、入院していた精神病院に飲み薬をもらいに行ったらしい。
自分にとっては、この病院に入れられてから余計に具合が悪くなった(体中がしびれるような違和感は治りきっていない)ので、薬のせいだ、薬でもっとおかしくなったんだ、という認識が強く、飲むのを拒んだ。

薬を飲まず、奇妙な言動を続ける私に業を煮やしたのだろうか・・・。
 旦那と息子が二人で無理矢理私を押さえつけ、鼻呼吸を塞いで口を開かせると薬を押し込み、水を注いで鼻、口ともに両手で強く塞ぐと、「飲め!飲めっ!!」と旦那が怒鳴ってきた。
私は呼吸ができなくなり、水ごと薬を飲み下すと、ようやく二人からの拘束をとかれた。
「血が出てるな…」息子の声が聞こえた。後で鏡を見ると歯があたったのか、口の中から流血していた。服も水浸しだ。

7日分の薬を処方してもらってきていたので、この日から私は、指示通りに薬を飲むことにした。
もうこれ以上、ケガをするのは嫌だ・・・。

 精神病には拒薬という症状がある。飲んだふりをして吐き出す患者もいるとか。
この話を家族は病院で聞いてきていたのか、薬を飲んだ後は
「口開けてみろ、舌出して、持ち上げて」と、家族から毎回チェックを入れられていた。

     

 妄想や幻覚が起きている時はその内容が正しいと思い込み、正気に戻ると、もうあんな奇妙な考えにはならないつもりでいる。自分は病院へ行く必要性をまるで感じない。
間違った思い込みも、正気に戻るたびにもうこれで治った・・・これで終わりだ・・、と毎回思うのだった。
 息子が病院へ行ってもらってきた薬を飲んでいたが、本人の診察無しで薬を処方できるのは2回までと決まっていて、それぞれ7日分処方された薬は底を尽きると、私はまた薬なしで生活するのだった。

顔のケガも、体中のしびれも日毎に回復してきているので、「病院行こう」と言われても、なんで??治ってきてるのに・・と、思う。
「治ってねぇぞ。夜中に暴れてるのに」と、息子は言うが・・・。

暴れる?・・・そんな覚えはないーーー たしかに一人ものまね、ダジャレ大会が止まらなくなる日はあったが、それはそれはチョー楽しい。自分で悪いと思っていない。
でも、記憶の欠落はあるから、もしかしてそういう時・・・?
 …いやいや、誰も怪我してないし、部屋も散らかってない。
 
  私:「暴れるってー・・どーゆー風に?」
 息子:「個性が暴れる」
   ーーー??? こう言われても、私は、病院へ足を運ぶ意思がなかった。


       

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