Neetel Inside 文芸新都
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一輪のスミレを拾った。
壁に飾ると部屋が華やいだ。
一箱のアメスピを拾った。
火を点けるとそれがくすんだ。
一羽の烏を拾った。
籠に入れると退屈そうに窓を眺めた。
一抹の希望を持ってしまった。
もう夜だった。

ねえ、四つ葉は見つかったかい
ええ、あなたの足元で

茨の道とはよく言ったものだ
自分が傷つけていないとでも

君だった泥水を掬い上げようとしましたが、
酷く透明な上澄みしか掬えませんでした。
初めから無理だったんだね、君の全てなんて。

観覧車を背に君は踊る。
錆びついた遊具の音に乗せながら。
照明の当たらない舞台こそが僕らの墓標だ。

いかがお過ごしでしょうか。
まだモッキンバードのベースは使っていますか。
まだサントリーのウイスキーばかり飲んでいますか。
もう時計は動きませんか。
僕はそろそろあなたになります。

春を空にぶち撒けたような日、滴り落ちてくる桜に目を奪われた。
塗り残された雲はそのままにしておいてくれ。
街を冬で染めるまで。

       

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Neetsha