Neetel Inside 文芸新都
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今日の授業が終わり、とりあえず予備校から少し離れたところで一服する。
「……、はぁー」息を吐く度に口から白煙が沸き出てくる。別事の憂さ晴らしの為だけに煙草に嵌まったというのに、今や手放せない嗜好品になっていた。
「さて、何食おうか」
「悩んでるのなら俺と食うー?」少し男にしては高い声を持つ男はヘルメットを被ったままこちらにやってきた。見覚えのあるライダースジャケットが散らばっていた記憶を呼んでいく。
「秋人か?」
目の前に立つヘルメット男はヘルメットを脱ぎ、赤く染めた髪を夕日で煌かせる。
彼は日高秋人。高校生からの仲で正直に言うと腐れ縁と形容した方がいいかもと思うほどずっと一緒にいる。ちなみにアキヒトと呼ばずにシュウトと呼んでいる。
秋人は大学には進学をしようともしなかったし、就職もしなかった。秋人は腐れ縁ではあるが僕にはその理由は分からなかった。決まったレールがない人生なんて僕には想像がつかないからこそ秋人は一目を置いている。……なんてことを言ったら秋人は調子に乗るから絶対に言わないけども。
「よ、春樹。グーゼングーゼン」
「偶然なわけないだろ、予備校終わったタイミング見計らって来たくせに」
そうだっけ? と秋人はとぼける。
「何の用?」
「何の用って、分かってるくせにぃ」
意味深な言葉が空っぽになってきた脳に深く突き刺さり、煙草を銜えながら秋人に詰め寄る。
「本当だろうな……」
「俺が嘘吐くように見えるぅ?」
「秋人だからな」
「あはは、辛辣。……鞄にあるよ。さっき…先輩に会って渡してくれたんだ」
「そ、そう。う、う…ん。ちょうど良かった、だって切れるとこだったから…」
「……鼻血、出てるね」と秋人は言って僕の鼻にティッシュを詰める。鼻血は首筋まで流れていた。
「出てるねー。それ」
「まぁ、ね」
ティッシュを更に鼻に押し込んだ。

       

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