Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      







 ゆうべの魔女、イコトが仲間になった。王に同行せよと命じられたらしい。不敵な笑みが特徴の女魔導士だ。歳は十七歳くらいか。パープルヘアーに金色の目がよく似合っている。

「あんたが勇者か。よろしく」
「ああ」
「痰壺のなかに出したってほんと?」
「え?」

 振り返るとルナが恥ずかしそうにもじもじしていた。なんてことだ。あの痰壺はルナが掃除したらしい。ということは……ああああ。俺は頭を抱えた。仕方ないじゃないか。男なんだから。女にはわからないんだ。この快感も苦しみも。

「ほどほどにね。それよりあんた、魔王を倒したらどうするの?」
「え?」
「倒したら、先の人生があるでしょう? 今からそれを考えておかないと」
「そんな……そんなの全然、思いつかないよ」
「そう。じゃ、この旅はあんたの夢探しってわけでもあるんだ」

 夢探し。
 俺は前世では夢なんて与えられていなかった。父親の道楽で学費を使い込まれ、奨学金を全額使われた。働いても働いても奨学金の返済に迫られる。大学にいったからといって、新卒カードが切れるだけだというのに。それだって俺みたいに大学で何も学ばなかった人間には手札なんてない。大学? 入学したらたっぷり遊べるって言ってたじゃないか。大嘘だ。たっぷり遊んだら困ったことになった。大人の社会は穢れている。浄化すべきだ。焼却だ。

「あんたは火の魔法とか得意そうだね……」

 イコトは俺の目を覗き込む。

「すべて焼き払う。それもまた夢の一つとしていいんじゃないかな」

 イコトはそういって、クッキーをひとかけら口に放り込んだ。ルナにくらべて、すこしふっくらした体型。巨乳だ。魔道士用のローブはゆったりしている。

「手相見せて」
「な、なにをいきなり」
「ふんふん。あんた、天才だね」
「天才?」
「そう。すべてを司る王の相が出てる。前世では一般市民だったのが災いしたみたいだね……あんたは、王になるべき男だ。痰壺に射精しちゃうくらい性欲も強いみたいだし」
「う、うるさいな!」
「あんたは学術にも賢明の相が出てるよ。安心しな。これからあたしと精霊術について学んでいくことになると思うけど、ちゃんとあんたなら理解して使いこなせる。自分を信じて」
「精霊術」
「そう」イコトはうなずく。
「それだけが、魔王を倒す神の剣なのさ」










       

表紙
Tweet

Neetsha