Neetel Inside 文芸新都
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朝酒日記
5月の終わりに(空と地上の間をさまよう彼のために)

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僕の数少ない知り合いの一人が亡くなった。彼は天涯孤独の身だったけれど、最期は友人が手を握って看取ったらしい。かなりの偏屈だったけれども悲しんでくれる人はたくさんいて、幸せな終わり方だったのでは、と思う。
どこかの偉い人が「その人の価値は、死んだ時に悲しんでくれる人の数で決まる」だとか言ったらしい。じゃあ僕が死んだ時に悲しんでくれる人はどれだけいるのか、とか考える。一人くらいいれば多少は浮かばれるけれど。

ふかふかの愛はどこかの誰かの贈りもの。あて先も送り主も不明で街角に落ちている。それをひょいと拾い上げて、愛をぽろりと落とした誰かと繋がっていくのが生きる意味なのかもしれない。ハッピーエンドには、僕はまだ早すぎるようだ。

生きることの終局で、愛をただただ自分に向かって届けてもらうのは、何より素晴らしいことだろう。

彼は月が何より輝いている日に地上から飛び立った。今は月の裏側か、そこではないどこかに居ると思う。掴みどころのない人物だったから、どんな場所に居たって気楽に過ごしてるんじゃないだろうか。今日のお酒は弔い酒だ。

     

6月は僕にとって特別な月で、空に煌めく月も特別に見える。
ただただ欲しいものと、抜け出ていくものとの間のジレンマ。
16歳の頃に、僕は恋をしていた。それから何も変わってない。
何も成長せずに過ごした、無味無臭な日々に感謝しての乾杯。
川の底はすべて海。流れるまにまに色んなものが流されてく。
記憶だったり、もしかするとどこかになくした情熱だったり。
紫色に反射する水面は何も映さず、ただ不快な色をたたえて。
すべてのもしもが叶うなら、色んなものを消してほしいけど。

       

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