Neetel Inside 文芸新都
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グレイスケイルデイズ
-用語集-

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〝此方の世界〟:
 人間の目に見え、耳に聞こえ、手で触れられる世界。多くは生き物や物質として存在し、蛇神や〝彼方の世界〟の住人が『そちら』と言うこともある。現世や、常世などと呼ばれることも。
 自然、人工物などの物質的な世界であり、生き物は〝此方の世界〟に属している。その為、鱗道は生き物の感情を感じ取ったり、意思の声を聞き取ったりすることは出来ない。


〝彼方の世界〟:
 人間の目に見えず、耳に聞こえず、手で触れられない世界。蛇神や幽霊、精霊などのオカルト的なものの世界で、〝此方の世界〟と大きく隔たりがあるわけではなく隣接し同じ場所に存在している。霊感のある人物や、子供などは〝彼方の世界〟を認識出来る場合がある。
 多くの存在は意思と力で構成されているが、両方が揃っている必要はない(例:クロは意思のみの存在)。また、意思と力の両方あるいは一方が〝此方の世界〟の物に宿った時、依り代の物にはただの人間なども触れられる。


柱・一柱:
 土着神、あるいは土地神として一定領域内における〝彼方の世界〟と〝此方の世界〟の均衡を担う強力な〝彼方の世界〟の住人。〝此方の世界〟しか知覚できない人間には区別が付かずに神と呼ばれるが〝彼方の世界〟は神や仏の世界とはまた違う世界ので、人間の宗教上の存在と対立することはなく神道や仏教と共存共栄していることが殆ど。
 土地や歴史に執着のある死霊(人間霊、動物霊は問わず)が成っていることが多く、殆どの場所は古くから柱が変わることはない。柱相当の強い力を持つ物が棲みついて間のない頃や両世界の住人の出入りが激しいと、土地の性質の変化や均衡を保つ困難さで入れ替わることがある。


整地:
 柱が自分の領地で〝此方の世界〟と〝彼方の世界〟の均衡を保つ行為のこと。〝此方の世界〟も〝彼方の世界〟も認識の可不可はあれど同じ時同じ場所に存在しているので、片方の世界に大きな変化や偏りが発生するともう片方にも何らかの影響が出てしまうため、柱や領地内の住人が安住するためには必要な行為。
 もっとも、柱の性格や土地の性質によって安定する割合も異なる。白鼬のこごめが治める東北の山間は、〝此方の世界〟の物の出入りが殆どない為大きな変化はないが、〝彼方の世界〟や自然の力が強くて人工物は自然による腐食が早い他、〝彼方の世界〟の住人が多く存在する。大都会は〝彼方の世界〟にとっては新しい新しい土地である場合や、柱の目まぐるしい入れ替わり等による不在期間が長くなりがちで、両世界の存在が入り乱れた不均衡であることが多い。気性の激しい柱や災害や戦などがあった土地では〝此方の世界〟にしろ〝彼方の世界〟にしろ、他の存在を拒絶する荒寥としている場合もある。
 蛇神の領地であるH市周辺は郊外で人間の出入りはあるが都会ほどでもなく、整地を代理人が担っているためか〝此方の世界〟の方が優位にある。


蛇神の代理仕事・代理人:
 鱗道が行っている、蛇神の領地における整地や整頓、守護などのこと。他の領土では一柱が様々な形で自ら整地しているが、蛇神は自身で行えずに鱗道家に代々任せている。
 蛇神の代理人となったものは蛇神の力を降ろすことで〝彼方の世界〟に強い影響を与えられる。また、〝彼方の世界〟に対する感覚も開かれて、「聞くこと」と「感じること」が出来るようになる。「見る」ことも出来るが個人差があるらしく、鱗道は不得手。これらは蛇神が力を貸しているから可能なのであり、蛇神が代理人から取り上げることも可能。他、蛇神の代理人はかなり死ににくく、頑丈になる。鱗道が事故から生還したのは代理人となった故である。


鱗道家:
 蛇神の代理仕事を担っている血筋。歴史はかなり古い。元は蛇神の世話役であり、現在は蛇神の代理仕事を担っている。
 蛇神の世話役であった頃に、鱗道家の一人が蛇神に疑心を抱き、蛇神討伐を願って各地から猛者を集めた。その中の一人の武士が蛇神の眉間を突き負傷させ領地から追い出してしまう。柱が不在となった領地は荒れに荒れて、蛇神が傷を癒やして戻ってきた時に元凶となった一人を飲み込み、残った鱗道家に代理仕事を償いとして行わせることになり現在に到る。
 代理仕事を行うようになった当初は双子や三つ子なども珍しくはなかった。初期は危険も多く代理仕事の最中に命を落とす者も居たため跡継ぎを絶やさぬ為である。蛇神の領地に均衡が見られるようになってからは跡継ぎ以外の兄弟や女児は殆ど生まれず細々と続いていたが、鱗道灰人の代で償いは終わり蛇神との縁が切れるため、鱗道家は断絶となる。その為、鱗道灰人は蛇神に『末代』と呼ばれている。子が多かった時代も少なかった時代も蛇神が鱗道家の血に干渉した結果であり、他にも蛇神の許可なく領地外に定住することは不可能である。
 また、後期は髪の色が灰色で生まれるようになり、鱗道の父や祖父なども灰色の髪であった。その為、H市内では「鱗道家は灰色の髪」であることはよく知られている。



〝彼方の世界〟の種類
(全ては蛇神や鱗道などが円滑に話をするために付けている区別である為、詳細な分別はない)
穢れ:
 破壊と死滅を求めて招く意思、または存在。殆どの場合、同質の力である瘴気を取り込んでいるために、瘴気を含めた「良くないもの」や「破壊と死滅をもたらすもの」「腐敗したもの」を総括して言うが、瘴気と区別が必要な場合は意思を指す。
 憎悪や忌避などの強大な負の感情、持て余した力や時間に翻弄された元の性質が腐った結果、穢れとなる。他、土地や歴史の忌まわしさなどで最初から穢れとして生まれる場合もある。
 自らが有する力の大半を破壊などに用いようとする意思である為、非常に攻撃的、排他的、感情的な行動を取る。一度穢れてしまえば、穢れの部分のみを取り除くことは困難であり、存在そのものを排除する方法がとられる。


瘴気:
 破壊と死滅を求めて招く〝力〟を指す。穢れに近いものであるが、瘴気単体は「良くないもの」「不運」「不幸」「破壊」「死」などを引き寄せる力でしかなく、意思や指向性は存在していないこと。ただし、性質上、ただ存在している意思よりも穢れに引き寄せられて留まりやすい。
 瘴気を有している量が荒神や呪いなどの穢れの強さに直結する。鱗道には黒、もしくは赤黒い色をした塊や靄として見える。


荒神:
 〝彼方の世界〟の存在が穢れ、瘴気を溜め込み、「破壊と死滅を撒き散らすもの」と成り果てたものを言う。神と呼ばれるだけの充分にして強大な力を持っている為、柱などの強大な存在でなければ太刀打ち出来ない。
 一度、荒神に成り果てると元の存在に戻ることは不可能である。決まった住み処を持たず、穢れの意思が赴くままにあらゆる場所に移動しては両世界に多大なる被害をもたらす。


付喪神:
 〝此方の世界〟の物体、主に人工物に〝彼方の世界〟の意思や力が宿ったもの。長く使われた物に宿る。あらゆる物体に宿るため種類や性格も様々。
 特に人工物に宿った場合、人工物の目的(刃物であれば切ること、書物であれば読まれること)に導かれ沿うことが多く、目的の対象物(女物の着物であれば女性に、子ども向けのものであれば子どもに)に強く惹かれる傾向がある。
 殆どが人間に好意的であり、付喪神と成ってからも長ければ人間社会に精通していて、言語が達者で話が通じやすい。
 稀に、新品同様でも切っ掛けによっては〝彼方の世界〟の力を得て付喪神となることがある。この場合は物の性質に引っ張られる傾向が強く、言語に偏りがあって会話が通じない。 
 周囲の状況を見るための目と、物体を動かすための手足が備わっていることが特徴。強力な付喪神となると同質の物体を集めて体を強化、巨大化していくこともある。


精霊:
 〝此方の世界〟の物体に〝彼方の世界〟の意思や力が宿ったもの、という意味では付喪神によく似ている。付喪神との違いは、〝彼方の世界〟の力が先に集まり、〝此方の世界〟のものに宿っているという順序にある。〝彼方の世界〟の力が先にあるため付喪神よりも強い力を持つ場合が多く、純粋無垢なもの(自然物そのもの)や強い意思が込められたもの(願いや祈りの象徴物)などに宿る。
 また、付喪神と違って目や手足などを持たずにぼんやりと宿った自然物や願いや祈りの象形を取っている。鱗道の目では殆ど見ることが出来ない。


呪物・呪い:
 〝此方の世界〟の物体に、〝此方の世界〟の存在が負の感情の意思を注いだ物が呪物。注がれる負の感情が〝彼方の世界〟の瘴気を集め出すほど強い意思となると呪いと呼ばれる。前述の精霊(願いや祈りの象徴物に宿った場合)と非常に似ているが、集まった力が瘴気であれば呪物、呪いと分けている。
 多くが人間によって作り出されるものであり、瘴気を溜め込んで害を成す。溜め込んだ瘴気によって害の程度は様々であるが、強さは天井知らずで呪いの対象者に死を招くこともある。同じく瘴気を集める意思である穢れとの違いは、穢れは破壊や死滅に対象を選ばずそれ自体が目的であることに対し、呪いは人間の意思から始まって対象者や目的などを有していることである。
 呪物自体は意思を持たず、力の指向性を決める意思である呪いは外部から注がれているため、物そのものが意思を持つ付喪神や精霊とは全く異なる。呪いは上書きされるのではなく蓄積されていくものなので、呪いを注げば注ぐほど相手や目標が雪だるま式に増えていき、最終的には無差別化が進んで呪い手にも害を成す。
 鱗道の目には呪物となっているものに、瘴気に指向性を与えて放出する口だけが見える。口は注がれた呪いを無感情に淡々と発し続け、溜め込んだ瘴気が多ければ多いほど濃い黒や赤黒い液体や霞のように吐き出している。


幽霊・死霊・悪霊:
 〝此方の世界〟に生きているものが死を迎えた後、留まっているもの。幽霊はただ留まっているもので、死霊は幽霊がさらに力を溜めたもの、悪霊は死霊の中でも有害なもの、と鱗道は区別をしているが厳密ではない。
 死亡した物の意思が死後に〝彼方の世界〟力を得たものと考えられる。死亡前後の意思の強さによって原形を留めているか、集められる力の量などが決まると思われるが、詳しいことは不明。複数の意思が混在して一つの死霊になっていたり、生前とは似ても似つかない形状を取っていたりする。
 大半は死んだことで意思や力が弱いために〝此方の世界〟に触れられず、ただの幽霊として存在してそのまま自然消滅する。死に際や強い意思を持って死んだ場合は長く留まって力を溜め、〝此方の世界〟に影響を与える程の死霊となりやすい。
 善良な意思から死霊になっても、長く善良なまま留まれるとは限らない。意思が目的を見失うような出来事や時間経過で穢れとなり、持っている力を瘴気と成すのに加え更に瘴気を集めて周囲に害成す悪霊や荒神になることもある。


意思存在:
 〝此方の世界〟や〝彼方の世界〟で自然発生した物ではなく、人工的に作られた意思のみの存在。現在はカラスを模した人工的な器の中に充填された液体金属に宿っているクロのみが確認されている。クロの意思は〝彼方の世界〟に属しているらしく、〝彼方の世界〟に関して少々ならば関知できるが、シロには勿論、鱗道にも大きく劣る。
 どのようにして作られたのかや、新たに力を集める必要もなく現存していられる理由も不明。力を消費することなく存在していられるので永久に存在していられる可能性もある。が、与えられる影響を防ぐ力すら持っていないため密閉容器の中でもなければ意思の劣化や損傷が容易に発生する。また、物質を貫通する力を有する〝彼方の世界〟の存在にも無防備である。

       

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