Neetel Inside 文芸新都
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朝比奈は変身を解くと、異形の戦士に駆け寄り疑問を口にする。
「お前は………何のために、何の目的でアウターと戦ってるんだ?」
「俺は……彩菜を殺した蜘蛛のアウターを、俺の手で倒したい。」
暫しの沈黙の後、異形の戦士が答え。
「その為に、俺に……俺達、警視庁特務四課に何かできる事は無いか?
 勿論、タダってわけじゃない。お互いに協力する…ギブアンドテイクって事だ。
 人を救う為に、一緒にアウターと戦ってくれ。俺達が蜘蛛のアウターに関する情報を
 得たら、その情報をお前に伝える。それが、条件だ。」
朝比奈が、異形の戦士―――真節に問う。
異形の戦士は、そこで変身を解き真節輝次の姿になると
「人を救う為…か、いいだろう。この力、仇を討つ為だけに使うのは勿体無い。
 …但し、一つだけ教えろ。」
朝比奈の提案に乗る旨を伝え、言葉を続ける。
「仮面ライダーと言うのは何なんだ?」
朝比奈は、館塙から教えられた事を簡潔に伝える。
「人々が異形の脅威に曝された時、風のように現れ嵐の様に戦い、朝日と共に
 帰っていく、そんな戦士達が居るっていう…都市伝説だ。
 俺のコードネーム、仮面ライダー嵐<ストーム>は、その都市伝説を知って
 嵐のように人々の為に戦う戦士、と言う想いを込めて付けた。」
朝比奈の答えを聞き、真節は空を見上げて軽く笑う。
「………俺も、その都市伝説に出てくる一人の戦士になろう。
 閃光の様に力強く輝く戦士………仮面ライダー閃光<グランス>に。」

真節がその場から去った後、朝比奈はライドベースが現場に到着するのを
待っていた。
ターミナル駅のロータリーにライドベースを停車させ、高梨と館塙が
現場に来る。
「おいしい所、あの異形の戦士に持って行かれちゃったわね。」
悔しそうに呟く高梨。
「で、どうでした…?彼と話したんでしょ?」
朝比奈の顔を見れば、答えは聞かなくても解っている。
しかし、敢えてその答えを問う館塙。
「アウター1号に関する情報…それと引き替えに一緒に戦ってくれる。
 そう、答えてました。それから…あの異形の戦士<彼>の登録コードは
 仮面ライダー閃光<グランス>にしておいて下さい。」
仮面ライダー…その単語を聞いて苦笑いする館塙に、朝比奈の問いが突き刺さった。
「館塙さん、"仮面ライダーの資格"って何なんですか?」
一瞬、暗い表情になる館塙。朝比奈は、その暗い表情を見逃さなかった。
しかし、次の瞬間には館塙は普段通りの表情になり。
「『自らが人の道を踏み外さない範囲で、人の為に戦う気持ち』です。
 それが無い人が、どんな力を持っても…それは仮面ライダーとは呼べません。
 貴方にも、彼にも、その気持ちがあるから、貴方達は仮面ライダーなんですよ。」
そう答えて、朝比奈から視線を逸らす様に空を見上げる館塙。
何、クサいセリフ吐いてるんだ…。人間を救う為に人の道を踏み外してるのは
自分自身じゃないか…。そう、自分で言うのも何だが、自分には仮面ライダーと名乗る
資格はない。だから、そう名乗る資格のある者に…いや、者達に人間の未来を託し
自分は、彼らを自分のやり方で全力でサポートする…。そう、決めたんじゃないか。
人の道を踏み外している自分には、この青空は似合わない。
館塙は、雲の少ない晴れやかな空を見つめそんな風に思っていた。

道路の真ん中で子猫が一匹震えていた。
動こうとしても、車が行き交っていて下手に動けば轢かれる。
動かないでいても、いずれは轢かれるかも知れない。
偶々、その光景を見かけたその少女は、車の切れ目を見計らい道路に飛び出した。
しかし、少女は気付いていなかった。
バイクが近付いてきている事に。

バイクに乗っていた男…真節は、飛び出してきた少女の姿に急ブレーキをかける。
「危ないだろ、急に飛び出しちゃ。怪我はないか?」
バイクは少女の手前で停まり、事故を免れた。
「あっ………ごめんなさい。」
震える子猫を抱えて、しゃがみ込んでいる少女。
「………」
「あの、どうかしましたか?」
昔、妹が猫を助けるため道路に飛び出した事があった…。
子猫を抱えた少女を見て、真節はその時に事を思いだした。
まるで、彩菜みたいな事をする…今時珍しい変わった子だ。
そんな想いが頭の中を駆けめぐり、真節は思い浮かんだ言葉を口にしていた。
「………君は………。」
真節の言葉に応えるように、猫を抱えた少女は立ち上がり、自らの名前を口にした。
「……小波です、………倉角 小波<くらかど こなみ>…。」

第四話「仮面ライダーの資格」END

       

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