Neetel Inside 文芸新都
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 叱咤、そして散歩命令。矢継ぎ早の展開速度。めくるめくファンタジー。違いますね。とにかく、頑張ることを結果的にせよ放棄した俺にはそれらを甘んじて受け入れることしか許されませんでした。
「いってきまーす」
 玄関先から3人に極上の笑顔で見送られ、しぶしぶ家を出る。右足のつま先辺りに小石が入っていて気持ち悪いけれど、直す暇さえ与えられなかった。泣ける。
 目が覚めた時には既にかなり日も傾いてしまっていた。実に気持ちのよい眠りだったと自覚している。よだれが教科書に垂れていなければ完璧だったろう。
「ウーッ……ワン」
 今日一日構ってもらえなかったことを妬んでいるのだろうか、メイはいつもよりリードを引っ張る力が強い。ゼエゼエと苦しそうな呼吸をしているようですけど、大丈夫なんかな、こいつ。なんか自傷気味っぽいよ?
「そばの公園でいつもより長めに遊んでやるから、もっとゆっくり歩こうぜ」
 周りに聞こえないように、しかし一応声をかけてみる。当然聞く耳なんて持つ訳もなく、その後もメイは4本の脚を精一杯回転させ続けていた。
 結局公園まで猛然と前進しつづけるのをメイはやめようとはしなかった。首輪がのどを締め付けて呼吸が苦しそうだったので、できるだけ俺も走った。いちいち小石が親指に当たるので、その都度変なアクションを取りつつ痛覚回避をしながら、走りつづけた。
 
 

       

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