数学教師栗栖トリ
第三話B
栗栖トリは、朦朧とする意識の中でうっすらと目を開けた。
見えるのは・・・腹立たしいほどに青い空。そのあまりの青さに、うかうかしていると全てを呑み込まれてしまいそうだ。
だが同時に、何か自分にとって大切なものを思い出させてくれるような青さでもあった。
そんな空をぼんやりと眺めながら、股間をまさぐってみた。
(この青さ・・・何かに似ている)
何に似ているのか、必死で思い出そうとした。
そうだ。あの日自分が履いていた女子高生のパンティーだ。それに気が付いた瞬間、何かが空中に放出される感じがした。
手にはねっとりとした感覚がある。どうやら射精してしまったようだ。
(少し、ちんこが疲れている・・・)
どう乗ってもギイギイという音が出てしまう教壇のように、自分のちんこが悲鳴を上げているのが聞こえてくる。
何故こんなに疲れているのだろう・・・
起き上がろうとした。
・・・体が鉛のように重い。体の中にギッシリと鉛を詰められ、自分がまるで銅像になってしまったかのような感覚だ。博物館や、学校の前に置かれている銅像の気持ちはこんなものなのだろうなと、霧がかった夜の水銀灯のようにぼんやりとする頭の片隅でそう思った。
その瞬間、「いけー!」という若々しく、なんの憂いも感じさせない澄み切った大声が聞こえて来た。その、あまりにも美しく澄み切った声に、超高性能チンコセンサーがピクリと反応したが、先ほど放出した精子によりカピカピになった陰毛にからまり、身動きが取れなかった。
ハッとする。自分は今、肉棒高校の体育祭に来ているのだ。こんなところで油を売っている場合ではない。急いで生徒の応援に行かねば。
それは教師としてではなく、純粋な一人の人間として、そう思った。
いや、思ったというよりも、彼自身がそう望んだのだ。
上半身を起こした。すると、自分の陰部が視界に飛び込んで来た。
周りの景色は、何かぼんやりとしていてよく分からないが、それが自分の陰部であるということだけはハッキリと分かった。はっきり、くっきりと。まるで栗栖とは別の人格が陰部にいて、自己を主張しているかのように、チンポだけが浮かび上がって見えた。
その瞬間、彼の疲れきった心の中にまた何かが入り込んだ。
栗栖は抵抗しようと、必死に心の中で「やめろやめろやめろ・・・」と叫んだ。
頭が割れるように痛い。
だが、その栗栖の中に入って来ようとする「何か」は一向に止まろうとしなかった。グイグイと栗栖の精神を蝕んでいく。
まるで、バーゲンセールでお目当ての洋服コーナーに突進していく中年のオバさんのように。いつの間にか、頭の中の声は「やめろ」から「おなに」に変わっていた。
(おなにおなにおなに・・・)
「むひぃ・・・」
おかしな声が出た。自分の意思ではない。自分では望まない言葉がどんどん口から溢れてくる。
「あけけけけおなにぃぞぞぞぞおなにぃうひぃ。ないあないあないあおににおなにぃぃぃぃぃ」
栗栖の目の奥が再び煌煌と、精子色に輝き出した。
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栗栖は下半身丸出しで、そのグレートに勃起したチンポを携えて、「寺田国際記念競技場」を疾走していた。
目的など、ない。ただなんとなくだ。
前方から生徒がやってくるのが見える。どうやら先ほどまでサッカーをしていたのだろう。
サッカーシューズを左手にぶらさげ、右手ではこのうだるような熱さのおかげでとめどなく流れ出る汗を、しきりに拭っている。そして喉が渇いたのか、水を飲み始めた。
栗栖は自分の武器を装備した。背後から忍び寄る。
「きみぃ~~~んふぅぅうぶんぶんぶんんふぅ~~クリちゃんカルピス飲まないかい?」
その奇妙な声に驚いたのか、それとも栗栖が携えているグレート勃起チンポに驚いたのか、その生徒は目を丸くして栗栖を見つめている。
狐につままれたかのように口をぽかんと開けて。
しかしそれが良くなかった。その口が栗栖の狙い目だったのだ。
栗栖は得意のマッハしこりで精子を噴出させた。ものの2、3秒か。
消防車の消火ホースのごとく、ものすごい勢いで精子が尿道を通って飛び出す。
ドボゴッ
見事、生徒の口に入り込んだ。彼はそのままものすごい勢いで地面に叩き付けられた。それでもなお、栗栖のチンポは射精し続け、アナコンダのように暴れ狂っている。いや、踊り狂っていると表現した方が適当か。
生徒の口からは泡・・・ではなく栗栖の精子がとくとくと流れ出ている。
栗栖は満面の笑みでその生徒の顔を覗き込むと、気絶しているのを確認し、その傍らに特大のクソを残して足早に去って行った。
向かう先が決まったのだ。
そう、サッカー場である。
栗栖が美しく、力強く、そして何者も寄せ付けないような威厳を持ったポコチンを携えてサッカー場に到着した。
まだ何も知らない生徒達は、大きなかけ声を出しながらサッカーを楽しんでいる。最後の思い出となる大会なのだから当然である。ちょうど試合の終盤のようであった。
とその時、叫び声が聞こえた。
おっと。見つかったようだ。栗栖は少し鼻白むと、猛ダッシュでまだ試合中のサッカーフィールドへと侵入した。
プレーヤー、審判、観客、全員の視線が栗栖に釘付けになった。栗栖は大声で
「なふふっふふふふっっふ!!精子!!精子!!!でるうぅぅ・・・・ぅぉおおおおぉおおおお」
と叫ぶと、マッハしこりを始めた。生徒達は悲鳴にならない声を上げながら逃げ惑った。
少しでも離れたところへ行かなくては。栗栖の精子に体中、汚染されてしまう。
まるで上空に戦闘爆撃機でも来たかのような勢いで、皆が走り逃げていく。
栗栖はそんな中で一人の生徒に目を付けた。“島 次郎”だ。
“島 次郎”は以前、栗栖の授業中にエロ本を読んでいた奴である。
その時は顔射だけで勘弁してやったが、正直なところはまだ腹の虫が収まっていない。
容赦なくロックオンした。あの時の怒りが沸々と、下腹部にわき上がるのを感じる。
これでいっそうシコりにも熱が入るというものだ。
そしてついに命中精度99%と自負する肉棒ショットガンが火を噴いた。
いや、火ではない。正義という名の精子だ。うまいっ
精子は見事、次郎の背中に命中した。次郎は聞いた事もないような悲鳴をあげ、その場に倒れた。
「ふひひぃぃぃ」
栗栖は恐ろしいほどのスピードで次郎の元へ駆け寄ると、今度は顔面にクソを垂れてやった。
黒いウンコが精子に溶解し、なんだか訳の分からない水溶液になってしまった。
なんとも妖艶だ。エロスを感じさせる。また勃起した。ちなみに栗栖はスカトロではない。
次はどこへ行こうか。
そう考え、辺りを見回すが、当たりには“島 次郎”以外人っ子一人いない。
残念なかぎりだ。
栗栖は仕方なく競技場の観客席に腰を下ろし、少しこのアナコンダを休ませる事にした。
何気なく空を見る。一筋の飛行機雲が見えた。青い空に、白いコントラストで描かれた飛行機雲。
普通の人ならば見ただけで癒されそうな光景である。
だが栗栖にはそれが、青い空に引かれた一筋の精子にしか見えなかった。
一人ぼんやりとしていると、突然観客席の横にある雑木林から
「ダメだって!こんな・・とこでっ!」
という声が聞こえた。
栗栖は訝しげな視線をその雑木林に10秒ほど送ったが、百聞は一見にしかず。目で見てみる事にした。
音を立てないように慎重に近付いた。
息を潜め、木々の間から雑木林の中を覗いてみた。
そこには男が一人、女が一人。
どうみても肉棒高校の生徒2人だ。不純異性交遊をしているのだ。
顔を知らないから、3年6組の生徒ではない。
栗栖は、ふと「数学を教えてやろう」と思った。
隠れていた木々の間から、下半身丸出しで彼らに近付く。
物音にハッとして2人は怯えた目でこちらを向いたが、さらにそれが下半身素っ裸のハゲであることを認識すると、いっそう目を剥いた。
口がぱくぱくとしている。
栗栖はニタリと笑うと、
「ん~~~キミ可愛いねぇん~?名前~?教えてくれないかなぁ~~~んんん?」
と、しきりに男子の方に話しかけた。
男子生徒はたじろいでしまい、目がキョロキョロしている。
その様子に、栗栖のアナコンダがどんどん巨大化していく。
「じゃあ名前はいいよ~んンン?じゃあ数学を教えてあげるよぉぉおおけけけけ」
そう言うと、おもむろに男子生徒のズボンを下ろした。慣れた手つきであった。
男子生徒の手をグイと掴み、栗栖の方に背中を向けさせた。
すでに男子生徒の方は気が動転していまって、金縛りにでもあったかのように体をこわばらせてしまっている。
栗栖はアナコンダを手で持つと、生徒の耳元で「いくよ」と甘く囁き、ケツの穴に挿入した。
「だああああああああああ!!!!!!!!!!!」
男子生徒の悲鳴が聞こえた。だがそんな事は今の栗栖には関係ない。ただ今は、彼らに数学を教えたいのだ。
くるりと首を回し、女子生徒の顔を見てニコリとした。
女子生徒は唇に手をあてて、今にも泣き出しそうな顔で栗栖達を見ている。
「んん~?そぉんなぁに怖がらなぁくてぇ丈夫だよぉお!今かぁら数学をぉおお教えてあげぇるからねぇ」
栗栖はにこやかにそう言うと、バックスタイルで男子生徒に挿入したまま、上半身を後ろへ思い切りそらし、渾身の力を込めて叫んだ。
「双 曲 線 だ ! ! !」
想像して頂くと分かるが、確かに双曲線だ。
栗栖は達成感に満ちあふれた顔でその場にたたずんでいる。
女子生徒からの返事はない。
そのあまりにも寂しい空気に耐えきれなくなったのか、栗栖は満面の笑みで女生徒の方を見つめたまま、腰を前後させた。男子生徒の死にもだえる声が聞こえてくる。
彼女の目の縁からついに涙が溢れた。
すると彼女は今まで忘れていたかのように、来ていた上着のポケットから携帯電話を取り出し、110番し始めた。
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警察が到着したのはそれから15分後。
警察の到着時、栗栖はまだ男子生徒のお尻の穴にチンポを入れて、激しく腰をシェイクしていたという。
この一件により、栗栖の今までの暴挙の全てが明るみに出る事となり、栗栖はあえなく免職となった。
そして犯されていた男子生徒はゲイの道に目覚め、顔面に精子をぶっかけられ、さらにウンコまでされた“島 次郎”は見事にスカトロの道に目覚めた。
これにて一件落着であった。
だが関係者は、栗栖が最後にポツリと呟いた言葉が忘れられないという。
「思想は・・・受け継がれるんだ・・・・」
小さく、小さく、虫けらが呟いたのかと思うほど小さな声だったが、栗栖は確かにそう言ったという。
今はまだ誰も、その真意を読み解ける者はいない。
そう、あの黒板の「ちぃんちぃん」のように。
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その日、広平は「寺田国際記念競技場」にいた。彼はここの清掃員として勤務しているのだ。
いつものように、清掃用具を持って競技場内を徘徊する。
自分はゴミ収集車のようなものだ。落ちているものを広い集めてはポリ袋に入れて回る。
たまに水拭きもするが、ほとんど一日中ゴミを拾い続けている。ポリ袋がいっぱいになればダストボックスに捨てる。ただ、それだけだ。
その日ももいつも通りにゴミを拾っていた。
まず体育館周辺を綺麗にしてから、テニスコートへ、そしてサッカー場へと回って行くのが彼のやり方だ。
午後、気温がじわじわと上がって来た頃に、サッカー場の前のゴミ箱周辺を片付けようと、その辺りに行くと、彼は不思議な臭いを感じた。
懐かしいような、甘いような、自分を誘い込む匂い。
その香りがする方に歩を進めて行くと、信じられない光景が広がっていた。
そこには、生徒の顔に顔射し、クソを垂れる男の姿があった。
そう、それを見た瞬間から広平の全ての人生は変わってしまったのである。