Neetel Inside 文芸新都
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「ただいまー」
「なのですぅー」
ドアを開けた瞬間俺は戦慄した。
開けなかったほうが良かった。
なぜなら、俺の目の前には包丁を持った凛が鬼の形相で立っているからだ。
般若とかそんなの比じゃない。本当の鬼だ。
「どこに行ってたのかな? かな?」
「いいか、落ち着け。COOLになれ、な」
駄目元で説得に試みるが……。
「変なの。和人ってば何に怯えてるの?」
お前だよ! とは言いたいが言わない。
殺されてしまうからだ。
「凛、俺たちは散歩に行ってただけで……」
「嘘だっ!!」
こええええええ!!
後ずさりして尻餅を着く俺。
包丁を天高く振り上げる凛。
「危ないからそれを下ろせ!」
「うん。もちろん振り下ろすよ♪」
違うってーの!
振り下ろすんじゃなくて下ろす!
「う、うわぁああ!!」
玄関から飛び出す、逃げろ、じゃないと殺られる!
「どこに行くのかな和人。待ってよ、そっかぁ鬼ごっこかぁ……それじゃあ十秒数えるね」
ちょ、超怖ぇええええ!!
死にたくない死にたくない死にたくないぃぃ!
「あはははははははははは!!」
「うわぁあああ!!」
結局鬼ごっこは朝まで続いた。
その頃ぽちは……。
「抜き足差し足忍び足……」
「あら、どこに行くのかしらぽち」
「た、タマ……ちょと部屋に戻るだけです」
「ふーん……まぁどうでもいいけど飼い主様とどこに行ってたのかしら?」
「そ、そんなにどすの利いた声はやめて欲しいのです……怖いのです!」
「あら、何半泣きになってるの? 私はただ質問してるだけじゃない。ねぇぽち」
「あわわわわわわわわ」
結局尋問も朝まで続いた。

       

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