Neetel Inside 文芸新都
表紙

文藝SS漫画化企画(原作用まとめページ)
少女の見る世界

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 真っ青な空。暖かな春の日差し。
 少し冷たい風がそこには吹いている。
 広い砂浜と、遠くの山まで続く堤防。その上に立つ少女と、その上に座る少年。
 少女の右腕には海鷲がとまっている。
「さすがに、近くで見るとでかいね」
 少年が言う。
 少女はふわりと笑みを浮かべた。
 穏やかな時間が流れていた。
 まだ出会って僅かしか経っていない二人の間には、それは優しい時間が流れている、そう、少年は思った。
「僕も動物と話がしてみたいなぁ」
 僅かな沈黙の後、少年はそう言った。
 少女はその言葉を受けて、ようやく僅かに口を開き、言葉を紡ぎ始めた。
「正確には……話をしている訳ではないの」
 澄み切ったその音。どこか詩を朗読するような、優しい響き。
 何より、はっきりと耳に残るその言葉の一つ一つが少女の存在感を、ある種異常なまでに主張している。
 動物と共感出来る少女、ただの少女ではないのは明白。故に少年は、それを異常だとは感じない。
「話は出来ないの?」
「ええ」
 少し物憂げに、少女は目を細めた。
「ただ、感じるだけなの。まるで、自分がその動物であるかのように、感じられるだけ」
 それがどういう意味なのか、少年には少し分からなかった。
 会話が出来ないのと、具体的にはどう違うのか。
「そうね……『私のコト』もこの子達は理解してくれるから、彼等も警戒しないで私に寄って来てくれる。というよりは、この子達にとっては、私は分身みたいなものなのかも知れないわ」
 聞けば聞くほど訳が分からない。
「共感出来るって事?」
 少女は目の前にとまる海鷲を暫し眺めた後、少年の方を向いて小さく頷いた。
「へぇ……僕も動物と分かり合いたいな」
 少女は柔らかい笑みを浮かべて、小さく首を振る。
 そんな穏やかな物腰とは裏腹に、どこか強い口調でこう言った。
「あなたには、無理よ」

 少年は思う。それはただ、強い風の中に声が埋没しない為の次善策だったのだ、と。だからこそ、はっきりと、少し大きな声で、言ったに過ぎない、と。だがそうではないという事は、次に告げられる一言ですぐに分かった。
「あなたのその幼い心では、耐え切れない」
 見た目には同じくらいか、あるいはそれ以下。そんな少女が語るには、どこか重い言葉。
 だが、今まで少女が少年に与えてきた存在感は、その言葉を語るに相応しい。
「え……?」
「人間には私の心は共感出来ないみたいだけど、私にはあなたのこれまでの人生も、今あなたが何を考えているのかも分かるわ」
 依然として、陽は暖かく、海風は穏やかに二人の間を過ぎ去っていく。
 少年は酷く混乱していた。何もかも見透かされているというその現実に。
 そんな事がある訳がない、そう思った瞬間から、ありえるかも知れない、そう思わされてしまう。
 その葛藤に終止符を少女は穿つ。まるで壊すように。
「そんなに惑わなくて良いの。ただ、あなたという存在が分かる、ただそれだけの事なのだから。だからこそ、私には分かる。あなたでは、この子が背負った苦しみは耐え切れない」
 暫しの沈黙。
 まるで、少年が次に与えられる衝撃に耐えられるまでの時間を見計らっているように。
 少年が僅かばかりに落ち着いてきて、耐え切れないとはどういう事かを問おうと口を開こうとした。
 口を開いた。だが、その口が言葉を発する事はなかった。
「これを見れば、あなたにも理解出来るわ」
 少女がそう言うと同時に、海鷲はゆっくりと少年の方を振り向いた。
 その顔は反対側がズタズタに切り裂かれて、目の玉は既に無い。
 毛も生えてこないのか、白い肌が露わになっていた。
「う……わぁ!」
 少年ははいずるように立ち上がると、堤防から転げ落ちるのも厭わずに逃げ出した。
 少女はそうなる事が分かっていたように、どこか寂しそうに微笑んで空を見上げる。
 海鷲も同じように空を見上げた。
 そこには真っ青な空が広がっていた。

     

描いてくれる人に見てもらいたい文章(作品概要?)

それはどこまでも気持ちの良い天気。
少し暑過ぎるくらいの太陽。
海風がその熱を奪っていき、気持ち良い。

出会ったばかりの二人。
地元では誰も近付かない少女に、少年は近付いた。
穏やかな雰囲気。
少女が作り上げているもの。
その光景は、何も知らない者が見れば微笑ましく思うような暖かいものだった。

雰囲気が少しづつ変わり始める。
それは、少年の心が揺らぎ始めた証拠でもある。
何も変わらない。
気持ちの良い天気である事も、穏やかな雰囲気である事も。
ただ、少女の力を知るうちに、少年の心が揺らぎだす。
それは「あなたには無理」という一言で決定的なものになる。

それまでの事が幻だったかのように真実の姿が明らかになっていく。
何も変わらない筈のソレがいかに狂気であったかを理解するにつれて、少年は恐怖を感じていく。
その頃には、少女が浮かべる笑みも、もはや恐怖の対象でしか無くなっている。
そして少年は海鷲の酷い怪我を見せられ、それをきっかけにそこから立ち去る。
本当に逃げたかったのは、勿論少女から。




基本的に少年の視点で書いてもらいたくて、まとめてみました。
雰囲気が少しづつ変わっていって、最後には畏怖すべき相手になっている、という。
一番最後の空を見上げるというシーンでは、少年のフィルターが入っていない状態です。
なので、それまでの怖い雰囲気だとかはまるで無かった事のように穏やかな感じです。
あくまで怖い雰囲気は少年が感じていたもので、実際は淡々と少女は語っていたに過ぎないという。

まぁそれはそれとして、怖い雰囲気は、ひぐらしとかスクールデイズのあの人みたいな感じを意識してます。
(書いた後に思ったけど、スクールデイズのあの人、雰囲気も似てるなぁ……w)
もし描いて頂けるなら、参考にしてみてください。
あと、この作品概要さえ見てもらえれば、作品本体の方は無視でOK(アレンジ、余分(だと思う)なシーン削除などなど。もっと短くしようと思ったのですが、長いですしねorz)ですb
ただ、本体も見ると、イメージが湧きやすいかも知れません。

       

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