Neetel Inside 文芸新都
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4の使い魔たち
シーナ再会

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 深い森の中、馬車の歯車が回る。
 時折、御者台に乗る茶色のフードを被った者が手綱を振るう。
 森の中の淡い香りを一身に受けながら水色の髪が舞う姿がそこにあった。

「フラメィン学園へはどれくらいなんでしょうか」
「後、数刻ほどになる。疲れたのなら言うといい」
「いいえ、大丈夫です」
 がらがらと音を立てて進む馬車は森の中でも魔法の力によって水平に進む。

「シーナ、やはり決意は固いのか」
 御者台の茶色いフードから女の声が放たれた。
「ええ、私はメイジにならなければなりません」
「シーナ……すまない、何度も言うようだが、君ほどの実力があればすぐにでも召喚魔法を執り行い、
 高名な学園で学ぶべきだと私は思う。メイジに拘るのなら絶対にその方が後悔は少ない」
「ごめんなさい。私は使い魔をつけないで高位のメイジにならなくてはならないの」
 シーナは横に置かれた剣をそっと撫でて言った。
「そうか……。私も騎士の端くれだ。これ以上の詮索はよそう」
「いいえ、私の方こそごめんなさい。今はまだ言えなくて……いつか必ず説明します」
 待っていると言った御者台の女は手綱を振るい上げて馬を加速させた。



「編入生ですって? この時期に?」
 それは四刻目の授業が始まってまもなくのことであった。
 この時期とはもうすぐ進級試験を間近に控えた夏の終わりであったからだ。
「その者はわけあって使い魔を召喚できず、この心深い我が学園に迎え入れることとなりました。
 先刻試験を終了し、見事編入が決定しました」
 マジョリアは紫色の帽子を教卓の上へ置くと体を教室の入り口に向けてどうぞと言った。
「ミス・シーナ。お入りなさい」
「はい」
 扉の音を立てて入ってきたのは水色の髪にミントの瞳を輝かせた可憐な少女であった。
「「おおおぉぉ……」」
 気品のある流麗なしぐさがクラスの男子を釘付けにした。
「彼女がミス・シーナです。ミス・スーシィに引き続き二人目の新しい仲間になりますが、
 前回同様に興味本位での質問は一切いけません。いいですね?」

       

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