「……あ……ぐ」
アリスは部屋の隅で呻きながら女を見た。
女はアリスを壁にしたおかげか、
ゆっくりと起き上がりアリスを見据えて微笑する。
「びっくりしたわぁ、ア・リ・ス」
――無傷。
女は煤こそついていたものの、全くの無傷だった。
「そうね、確かに靴の上からでもマナは流せるわよね。
手袋を履いて杖を使用するメイジもいるもの。
――でも残念、失策だったわね」
アリスは魔法の失敗を利用しただけのその場しのぎをしたに過ぎなかった。
それも自身の躰を擲(なげう)ってその場しのぎだ。
女はアリスの元いた場所へ近寄り、床に落ちたままの杖を拾う。
「まあ、それでも目的は果たすことができたわ」
「……?」