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自説自論
なんですぐ飽きるの?

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 少年漫画にすぐ飽きる

 これでそれなりに四半世紀以上生きて、そろそろ三十路に届こうかとしている。人生に含蓄のあるベテラン勢を気取っても良い筆者である。君からしたらな。フフン。
 少年漫画にすぐ飽きてしまう。人間に生まれつき備わっている偉大な三つの才能がある。慣れる、飽きる、忘れるの三つである(そして繰り返す)。少年漫画ごときが人間様に、正面ケンカを売っている! 由々しき事態であるので、制裁を下さねばならぬ。腹が立つ。どうしてそうなるのか、少なくとも筆者の場合においては、理解しておきたいものである。
 具体的な作品タイトルを挙げよう(これより先は個人的な偏見の羅列である。したがって鼻で笑いながら斜め読むのが適当なあしらい方といえよう。あまり真剣に読んではいけない)。
 
 からくりサーカス8巻
 めだかボックス10巻
 聖闘士聖矢1巻
 SKETDANCE4巻
 風魔の小次郎1巻
 銀の匙7巻
 イエスタデイをうたって6巻
 かんなぎ7巻
 ヒャッコ!7巻

 予め説明しなくてはならないことが幾つかあった。筆者はコミックス派であり、漫画喫茶を利用する習慣はない。漫画雑誌を定期購読する習慣もなく最新の流行とは無縁である。古本屋の百円コーナーに並んでいる、旬の過ぎた連載完結コミックスを何冊かつかんでレジに持っていくことを最近の趣味としている。
 上記の幾つかのタイトルと数字は、そういう習慣のなかで実際に集めたコミックスの数である。同時に「飽きてきたなあ」と実感した時点の巻数(これをn巻とおこう)である。次回古本屋に行くことがあっても、(n+1)巻の購入は一考を要するであろう。はっきり言ってしまうと、すでに買う気がない。

 ――なぜ飽きたのか。
 これには作品ごとの考察を要するのかもしれない。しかしながら、「なんでかなあ」と思いつつ、他のいろいろなタイトル(後述)を読み進めていくうち、思考のなかに、ひとつふたつの共通する特徴が浮かび上がってきたのである。そのうちのもっとも大きい要因は、おそらくこれであろう。

 登場キャラクターが増えすぎたこと。

 筆者にとっては、これがいちばん大であるように思われる。それがバトルもののマンガであるなら、新たな敵との戦いに、以前戦った敵キャラクターが解説役として登場することがよくある。そして、いつまでもその役職に留まる。紙面に無駄なカットがふえる。新たな敵は、いまいちよくわからない理屈で改心することが多くなる。巻数を追う毎、そういうキャラクターが増殖する。そいつらをいちいちぶち殺してしまえば、そういう細かい問題も生起しないのが道理であるが、下手に学園モノなどといって括ってしまえばそういうわけにもいかないのであろうか。

 少年漫画の真骨頂とは、勧善懲悪のマンネリズムである。頑固者どうしの一見おおげさな小競り合いを延々と繰り返すだけでよい。上でナニヤラと考えていた話も、マンネリズムに飽きるタイミングが、コミックス7~8巻ぶんの物語量なのだとそれだけのことなのかもしれない。只はっきりしていることは、車田大先生の漫画とはゼツボー的に相性が悪いらしいということだけである。


 ○


 コミックス十冊程度を同時並行して読み進めていると、自分だけの漫画雑誌を定期購読しているようで楽しくなってくる。レーベルもメッセージもなにもかもごった煮の連載陣が、古本屋で筆者の訪問を待っている。
 言い忘れたがコミックスは一巻ずつ買い集めている。まとめ買いをせず少しずつ読み進めていくとそういう楽しみ方ができる。以下はこの遊び全般についての散漫な感想。

 少年(というかジャンプ)漫画を意識して読むと、友情努力勝利、この三要素の色が本当に濃いのを思い知らされる。友情も努力も大いに結構なことである。われわれは少年漫画を読んで育ったし、大概の処世術はそれに学んだ。少年漫画は人生の基盤といって決して大げさではない人間に育ってしまった。
 ひとつ、強く頑なであれ、弱ければ笑われ、虐げられるものである。それと家族と友人の大切さはいつも後悔とともに気づかされるから、自分を犠牲にしても大事にすべきである。
 ひとつ、疑い深くあれ。世の中は空虚な嘘に溢れかえっており、大抵の大人たちは悪い考えをめぐらせ、まだ子供であるわれわれをいつでも騙そうとしている。
 ひとつ、きみは選ばれし者である。物語の主人公として生を受けたのであり、時期が来たらトラブルや幸せが息つく間もなく転がり込んでくるようになる。だから今はただ待つだけでよい。嗚呼、スバラシキ少年漫画の教訓である。
 間抜けには向かない娯楽であるかもしれない。

 主題とは逆に、読み進めて未だ飽きのこないコミックスのいくつか。 
  花の慶次6巻
  特攻の拓4巻
  無限の住人7巻
  まじかるたるルートくん6巻
  ディエンビエンフー5巻
  コブラ(メディアファクトリー版)5巻
  ベルセルク1巻
 このなかには基準となる巻数に達していないものもあるが、そういう不安は“拓”ちゃんのソレに抱くくらいのもので、“拓”ちゃんのまんが以外には絶大な“信頼”を抱いているのであまり心配していない。たぶんこれからもずっと面白いまんがでいてくれるでしょうこのラインナップは。でぇーじょーぶ。
 
 読者を惹きつける物語とは、その主題としてなにを扱おうが面白いのはほぼ間違いがない。ひとり若しくは何人かの特殊な才能の持ち主が集まって、ひとを楽しませようとした結果の物語であれば、なんだって面白いに違いない。そんなことは新都社民なら先刻ご承知というものである。このばあい“ひと”という言葉には作者自身も含まれているが、それも尚のこと面白いのである。出し惜しみしないことと、寄り道をしないことと、終わったらさっさと片づけることと、それくらいのもんでないか。


 ○

 オワリです。

       

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