そこには、一丸となって昨年の優勝校と戦う、青年の所属していた野球部の姿があった。
「この野球部は君なしでもしっかりやってるよ。つらいのは君だけじゃない。確かに、君はこの野球部に必要なワンパーツだったのかもしれないよ。でもそれ以前に、そのことを補うだけの力を持った、素晴らしいチームだったんだよ。その証拠に前年度の優勝校に勝利するっていう快挙を成し遂げてるしね。番狂わせ、ダークホースと最初はののしられたもんだけど、勝ち進む彼らを見ていて、誰もそんなことを言う奴はいなくなったんだ。準決勝で負けちゃったけど、彼らはすごくいい顔をしている」
ギターの彼が息を吐く。
「……君はもうこの野球部には必要とされてないんだよ」
右手の上の画面には汗だくで、泥だらけの球児たちが映っていた。
「君も過去にとらわれてちゃ、だめなんだ。早く、いかなきゃいけない。いつまでもしみったれてこんなところにとどまっいてちゃ、頑張っている彼らに申し訳なくないかい?」
そう言ってギターの彼は青年の背中をポンとたたく。
青年は悲しいような、嬉しいような笑みを浮かべて、「はい」とだけ言った。そして立ち上がり、「ありがとうございます」と言って、……消えた。
「……礼を言うんだったら、最初から成仏しやがれ、だ。じゃ、僕も帰るとするか。朝日は体に毒だしね」
幽霊だった彼にそうぼやき、桜の亡霊である彼もまた、朝焼けの公園に姿を消した。