Neetel Inside 文芸新都
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 俺は昼休みを利用して、鉄火の休憩している定盤(※1)の所へ向かおうとした。
向井が何やら俺に声をかけようとしていたがとりあえず無視、
いや聞こえなかった振りをしてダッシュする。
工場に入って鉄火の元へ急ぐと鉄火は定盤の上に発砲スチロールを曳いて寝ていた。
ガサツな性格のようだが、寝顔だけは見せないようにタオルを顔にかけ、腕を重しにしている。
ツナギの上からでも分かるそのボディライン、俺には最高のお握りの具材だぜ・・・・。


とにかく寝ているのなら仕方ない、と俺は立ち去ろうとしたが
不可抗力とはいえ溶接機のコンジットケーブルに足を引っ掛け大きな音を出す俺はお約束野郎だ。
更に俺は不可能を可能にする男さ。鉄火はその音で目を覚ました。

鉄火
「ン~?」

なんというセクシーな声、俺はもうその声だけでお握り4回はいけるぜ。
鉄火は眠そうに頬を掻きながら

「ごめん、来てくれてたんだ、まあ座りなよw」

と言い、俺に椅子を勧めた。
俺はにやにやしながらその椅子のほうに歩んでいったが、体がすぐに硬直する。
そう、この硬直を与える相手は一人しかいない。TIGだ。
TIGはすぐそばの定盤に腰掛け、先ほどから俺の様子を伺っていたらしい。
彼は俺が鉄火に歩み寄ったこと、そのはちきれんばかりのボディラインを
俺がいやらしい目つきで視姦していた一部始終をじっと見ていたのだ。

俺の草食動物的な固まる動作を見ていた鉄火は俺の視線の先を見、TIGに聞こえよがしにこういった。

鉄火
「ほっときなよ、醜いねえ男の嫉妬ってww、只の友達なのにね」

友達・・・・そうか、俺は友達か・・・
友達と呼んでもらえた微かな嬉しさと、友達程度に留まっている自分への評価に対する悲しさで
俺の心は複雑に高鳴った。

とりあえずビニ子の事を話してみたが、鉄火の食いつきがが俺の想像を遥かに超えて良かったのは
一体どういう意味なのだろうか。とりあえず鉄火に言われるまま彼女について説明をしていった。

鉄火
「はは・・・コンビニ店員かあ~それはいつまでたってもゴールが見えない感じだな~ww」
「で、どこの娘なのよ?」

鉄火は肘で俺をウリウリとにじりながら、ニヤニヤつつも俺を質問攻めに遭わせる。
どこのコンビニかを説明すると、鉄火はパァッと明るい顔で

鉄火
「ん~見てきていい?」

と俺にウィンクした。


「ドゾー」

彼女はバイクのキーがポケットに入っているかを確認しながら、バイクの所まで走ろうとした。
途中、何かを思い出したように立ち止まり、俺のほうを向きなおす。

鉄火
「ねえ、>>1!! はちごーごーよんはちよん!」

俺は彼女の口から突然発せられた謎の暗号に少々面食らったものの、

「あ、はいはい、ほな午後もがんばって」

というなんとも間の抜けた返事をし、彼女もなにやらガクッとするポーズをした後再度走っていった。
こうして彼女の発言の意味するものを理解しないまま俺の昼休みは終了した。

事務所に帰ってくると向井がなにやら怪訝な顔をしてこちらを見ていたが無視、
俺には関係ない娘だと思ったが、彼女の軽く開いた胸元を見た瞬間、
俺の血液と思考が急激な速度で逆流する感触に襲われた。
先ほどの暗号の意味するもの、それは・・・・・


スリーサイズ



今頃把握し、しかも記憶に残るその数字を反芻しながら彼女のシルエットをイメージしようとしたが
彼女がなんと言っていたかをド忘れしてしまい、
俺は彼女のスリーサイズを再度聞くために定時を待ちながら悶々としたのである。




(※1)定盤・・・鉄工所等で使う作業台(のようなもの)
       

       

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