Neetel Inside 文芸新都
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 鉄火から溶接教本を有り難く拝借した俺は鉄火と共に駐車場へ歩いていた。

鉄火
「~だから半自動溶接はTIG溶接(※1)よりも簡単って言われてるのよ」


「ほぇ~」

彼女に溶接の種類や難易度のランキングを教えてもらいながら俺は相槌を打つ。
既に事務所で工場長に教えてもらっている内容だが、色々と教えてもらってる身としては
「知ってますよ、それ」なんて言えやしない。まあ、会話が続かない俺には丁度いい。
そしてスリーサイズの件をしつこく聞いた結果、B85、W54、H84だという事も判明。
ゴクリ・・・・・俺には到底高嶺の花だぜ、並クラスのおっぱいですら拝んだことがないってえのに。
「恥ずかしいからもう言わないからね、二度と聞くなよw」
そう言った彼女の顔は、奇しくもスリーサイズを教えてしまうという黒歴史を塗りつぶすかのように真赤だった。だがそれがいい。

ポケットからキーを取りだし、車のオートロックを解除、
ヘルメットを被ろうとする鉄火のお尻を眺めながら車に乗り込む。
彼女は小回りの利くTT-Rを鮮やかにターンさせ、俺の車の横につける。
何かを言おうとしてるのかと俺は車のパワーウィンドウを開けた。

鉄火
「ねえ、今日さ、ウチでご飯食べない?いやお互い一人だしさ、ホレ、たまには二人でと思って。」
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「教唆、ウチで誤判食べない?嫌男互い一里だしさ、ホレ、多摩には二里でと主って」

「今日さ、うちで鉄火巻き食べない?いやお互い独りだしさ、これなら二人で握って」

「今日さ、うちで鉄火食べない?いやお互い寂しいしさ、惚れたら握りあいっこして」

「今日さ。うちで私食べない?いや私寂しいからさ、惚れたし御握りしてあげたいの」

「今日さ、セクロスしない?寂しいのよ。惚れた男には御握り奉仕してあげる」(この間0.5秒)












おれ  の もうそう の ほうそく が みだれる!!






一瞬で俺の顔はバファリンを静脈注射しなければならないほどに放熱する。
駄目だ、熱い、顔が熱い、何を言い出すんだこのお姉さまは。
俺の精神の割れ目に的確に、かつ豪快に楔を打ち込んできおってからに。
俺はかつてないほどの興奮と恥辱、いやここで恥辱という言葉をなぜ使ったか。
その鉄火の一言で俺のお息子はいじらしいほどの硬度をキープしてしまったからである。
とにかくこの場を離れたい、その俺の思いは俺の妄想を鮮やかに裏切り


「いや、バイクのパンク直すから、いいです」

という言葉を発せさせるのだった。


(※1)TIG溶接・・・溶接の種類。効き手で溶接トーチを動かし、逆の手で溶接棒を供給する
            作業を要するため、片手で溶接棒供給とトーチの運びを行う半自動溶接より
            難易度は高いとされる。その反面溶接跡が非常に美しく仕上がり、
            一般に外装などの接合に使われる。
            >>1の宿敵「TIG」が得意とする溶接。彼の名もここに由来する。

       

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