俺は今日もTIGを避けるようにして駐車場に向かう。
彼の横を大きく回り込んですれ違おうとしたけど、彼が俺を呼びとめた。
「おら、お前帰るのに現場の人間に挨拶もできへんのかい」
俺はびくっとなって足を止め、ゆっくりと振り向く
だがしかし、振りかえっても眼は見ない。
これいじめられっ子の必殺技、皆ももしいじめられたら覚えておくように。
「お疲れ様でした~」
作り笑いで誤魔化しながら挨拶をする俺、忘れるな、眼は合わせちゃあいけない。
「おいTIGや~はよ帰ろうや~」
ヒラメ顔のTIGの友達がTIGを呼ぶ
俺をしばらく睨んでいた(と思う)TIGだが、唾を吐く音と共に彼は歩いて事務所に向かって行った。
「はい、こうして俺は今日も蹴られずに済みました。結構なお手前で」
独り言を言い、車を取りに行こうと振り向いたその時
現場の奥で炭酸ガスアーク溶接の音が聞こえた。
「バチバチバチバチジジジジジィーッ」
確かに工場の奥で火花が散ってるのが見える
俺には分かっていた。誰があの光を出しているのかを