Neetel Inside 文芸新都
表紙

ショートショート集
美男美女

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一隻の宇宙船がある惑星を目指して進んでいた。ある惑星とは
最近発見され、文明がある。それを調査するためにこの宇宙船は
地球から派遣されたのだ。やがてその惑星から電波が送られてきた。
船員の一人が万能翻訳機を使ってそれを訳した。するとそれは
こういう意味のものだった。
「我々はデルタ星人といいいます。あなた方はどこからやって
きたんですか」
「地球というここから三十光年ほどはなれたところからです」
「どんな目的でやってきたんですか」
「友好を築くためです。またあなた方と貿易がしたい」
「それはいいことです。我々も無用な争いはしたくない。
着陸は我々が指定した空港を使ってください」
相手の言う通りに船員たちは空港に降り立った。宇宙船の窓から
見るとたくさんのデルタ星人たちが来ていた。おどろくことに
デルタ星人は地球人とそっくりの姿かたちをしていた。
船長が降りても人体に影響がないかどうかを調べ、船員たちは
デルタ星に降り立った。するとすぐにデルタ星の最高責任者と
言う人物が現れて船員たちを迎賓館に招待した。迎賓館では
翻訳機を使ってデルタ星と地球の大まかな情報交換を行った。
すると大して差がないということが分かり、船長はこうつぶやいた。
「全く。広いい宇宙で始めてであった生命が我々と
そっくりだとは…。こういうのを奇跡というのでしょうかな。
しかし新発見ができないのは残念ですが」
「まあそういわずに。細かな点では違いがあるかもしれませんよ。
ところであなた方はこれからどうするんですか」
「しばらく休んで地球へ戻ります」
「そうですか。ではわが星の最高級のホテルを使ってください」
そういうわけで船員たちはホテルへ向かって数台の車で移動し始めた。
街中の様子も大して変わらないように思えたが、広告用の看板を見て
一人の男性船員が声を上げた。
「なんだ。あの看板の女はとんでもなくブスじゃないか」
それを聞いて同じ車に乗っていた男性船員も同様の感想を漏らした。
「本当だな。人生で1、2を争うブスっぷりだ」
「いったいなんであんな女を広告なんかに使っているのだろうか」
「美容整形外科かなんかの広告じゃないのか。あの状態から美人に
なりましたとかいう」
「なるほど」
いったんは納得しかけた男性船員たちだがその後も街中の広告に出てくる
人間は醜男、醜女ばかりだった。船員たちはホテルに着くと、
他の船員たちにその事を話した。するとどうやら他の船員たちも
同じ感想を持ったようだ。なので船員たちは翻訳機を使って
ホテルの使用人にこの星のアイドルの写真集を買ってくるように頼んだ。
それを見た船員たちの感想はこのようなものだった。
「うあ。なんだこいつは気持ち悪い」
「こんなブスは見たことない。世界三大ブスに入るだろう」
「この男の人生理的に受け付けられないわ」
「この女を例えるためにブスという単語が生まれたんだろうな」
しかしデルタ星人たちはその連中を美男美女というのだ。
船員たちは大変驚いた。他の部分が全く一緒だったから余計驚きは
大きかった。一週間ほどたって船員たちは地球へと帰っていった。

地球にもたらされた船員たちの報告は大きな影響を与えた。
まずデルタ星にいきたいという人間が大量に現れた。しかし
ながらその願いはかなえられなかった。なぜならデルタ星へいく
には莫大な費用が掛かるからである。しかしながら費用の壁は
数十年ほどでなくなった。目標が明確になったおかげで大量の
資金が投ぜられたおかげである。一般人でもデルタ星に
いけるようになると地球からは地球人の言うところの
醜男、醜女が、デルタ星からは美男美女がやってくるようになった。
何しろブスだなんだと馬鹿にされていたのに向こうに行けば
もてはやされるのだ。行かない連中は貧乏人だけだった。
やがて両方の星では美男、醜女のカップルと醜男、
美女のカップルが大量にできた。このカップルは中々
うまくいった。なぜなら両方とも子どもの頃から容姿には
自信がない。それが美男美女と付き合えるのだ。ちょっとや
そっとじゃ別れない。これによって損をしたのはいたって
普通の顔をした連中である。今までは自分たちより下の連中が
いたから良かったが、今ではその連中はほとんど
いないのである。そんな時ある方面にある惑星を
調査していた宇宙船が帰ってきて報告した。
その宇宙船の報告を簡潔にまとめると以下のようなものである。

一 その惑星の文明レベル、文化などは地球に似通っており
一点を除き特に相違は見られない

二 その一点とはその惑星ではいたって普通の顔をした人間が
美男美女として扱われるということである

       

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