Neetel Inside 文芸新都
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 住所、電話番号、生年月日からおおよそのプロファイルまでこの地域の学校の美少女は全て暗記している。
 これだけの情報を学校から手に入れるのは生徒会という力とインターネットというものがあれば難しいことではない。
 ただし、犯罪に近い側面は無視できない。

 ――ガラガラ。
 僕は再び席に戻るが今思い返すと1/100美少女率の約大半は朝の一連で邂逅したことになる。
「不思議な日もあったもんだな」
 全校生徒971人。女生徒は443人だ。男子生徒が500人もいるとは物理的に考えて不要だ。
 そしてこの日も僕の夢とはほど遠いコトを繰り返すのかと思うと憂鬱で仕方がなかった。

 ――ヴヴヴヴ。
 携帯のバイブが鳴る。
 まだ一時間目の授業途中だというのに誰かと思えば父親だった。
 ディスプレイには一言『ハゲ』と表示されている。
「先生、ちょっと家族から緊急の連絡のようなので、失礼します」

 僕は母親が入院中で危篤であるという理由を元に携帯所持を許可してもらっている。
 これは普通の生徒には許されないことであるが、生徒会長、そして素行良質な生徒という前評判があっての許可だ。
「もしもし? 親父か、何してた」
 母親はとっくに死んでいる。危篤状態の女性は病院にいる有志に協力頂いた。
「おー、タクヤ、ついに出来たんじゃ。はやくもどってこい」
「なんだか知らないが、親父も僕の夢は知ってるだろ? 今は授業中なんだ。それより大事なことか?」
 いくら授業中とはいえ、みんなと違う行動をしていては風評が悪くなる。
 みんなと同じ。それがこの国における仲間はずれにならない方法なのだ。
「大事じゃ、お前の夢に必ず役に立つ!」

「それを聞いて安心したよ」
 ピッと携帯を畳むと僕は全力疾走で校舎を駆けた。
 親父は世界屈指の学者だった。2030年から学生時代にネットの論文で数々のノーベル賞を受賞し、
 挙げ句自分の研究施設を持ち、研究に没頭していた。
 詳しい分野は知らないが洋書を全く読めない僕が親父の研究を理解することなど出来ない。
 僕はただ、親父の作ったものをうまく利用するだけなのだ。

「――はぁはぁ」
 家につくと、親父がプレートクローシュを持って玄関で佇んでいた。
 その顔は痩せこけてもう何日も日を浴びてないような小汚い色白の肌で笑っている。
「待っていたぞ、我が息子」

       

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