Neetel Inside 文芸新都
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「あ、――ぃって!」
 僕は柊を担いだまま倒れ込んだ。
 正直言って自分が仕掛けたことなのに助けたことで痛いを思いをするのは不覚だと猛省する。
「大丈夫? 柊さん」
「う、うん……」
 運転手が降りてきて平謝りする。
 警察がやってきて事情聴取までされるとは、やはり使い方を誤ると面倒になるとタクヤはここで定義した。

「あの、タクヤ君。助けてくれてありがとう。その、どこか怪我してない?」
「ん、全然平気だよ。それより学校行かなくちゃもう遅刻だ」
 柊さんは頬を上気させていたが、逆に僕は冷静だ。
 そして警官に連れて行かれる運転手をみて不憫に思ったが、起こしたことはなかったことにはできない。
 そう割り切っていこうと改めて胸に刻んだ。
 
 職員室で事情を説明していたタクヤが授業に出られたのは二時限目。内容は体育だった。
「この寒いのに体育なんて入れるかよ。普通」
 午前授業の体育はやたら寒い。それが体育館でもだ。
「バレーボールかあ」
 女子と合同ではないバレーボール。野郎だけのバレーボール。タクヤはイマジンクリエイトを発動させることにした。
 やはり日常に花を持たせなければ面白くないってことだ。

『他校女子とバレーボールをする』
 しまったと思った。タクヤはつい勢いで自分の欲望を素で叶えようとしてしまった。
「なぐりこみじゃああ!」
 何かと思い振り返ると体育館の入り口でジャージを来た不細工なおっさん並びに少女軍団がバレーボール片手に叫んでいる。
 顔を覗かせる女子の数、六名。
「せめて美少女にしとくんだったあ……」
 タクヤは自分の安易な妄想についカッとなって膝をついた。
 すぐに妄想を追加しようと思ったがそれはやめた方がいいという直感が告げていた。
 試験的に昨日わかったことだが、妄想を追加していくと辻褄が合わないところを消すために様々な現象が副次的に発生する。
 この副次要素を無視した妄想は当然実現不可能なわけで(無いことにするのが不可なため)、
 もしこの瞬間、「美少女の他校女子と」という要因を追加しようとすれば今いる他校女子生徒が自分だけに美少女に見えるという比較的安直な実現へ持って行かれても不思議ではない。
「なんだ! そこで膝ついてる男ォ! なっさけねえ。おい、お前ら!」
「「「はい!」」」

       

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