Neetel Inside 文芸新都
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「ねぇ、ないしょだよ」

ちよちゃんがぽつりと呟きました。
時刻は真夜中近く。
ひとりお部屋の布団の中で、ちよちゃんはかみさまにいいました。

「ちよね、けんたくんとけっこんするの」

けんたくんとはちよちゃんのお友達で、かけっこの得意なぼうず頭が可愛い男の子です。

「ないしょなんだよ」

ちよちゃんはかみさまの方を見ずに続けます。

「ちよね、おとうさんとけっこんしてあげるってやくそくしてたからね、
おとうさんないちゃうからね、ないしょなんだよ?」

しゃべりながら、ちよちゃんのまぶたはどんどん重くなっていきます。

「ちよね…けんたくんがね…」

いつの間にか、ちよちゃんは眠ってしまいました。
そんなちよちゃんを見つめながら、かみさまはくるっと、空に円を描きました。
するとその円の中が、まるでスクリーンのようになり、何かを映し出しました。
そこにはひとりの女の子が映っています。
その女の子はぬいぐるみを抱いて、笑顔でこう言いました。

「あたしね、すてきなおよめさんになって、かっこいいだんなさんと、こどもとね、一緒にくらすの!
こどもはね、おんなのこでね、あたしににてかわいいの!」

映像は、しばらく続きました。
それを見ずにかみさまは、窓の外を見つめていました。
窓の外にはまぁるい月。
その中では、誰かが嬉しいようなかなしいような歌を、いつまでもいつまでもうたっていました。

       

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