「ぐーちょきぱーで、ぐーちょきぱーで、なにつくろー、なにつくろー」
ちよちゃんがお歌をうたいながら一人、遊んでいます。
「みぎてはぱーでー、ひだりてもぱーでー、ちょーうちょー、ちょーうーちょー」
ちよちゃんはひらいた両手を合わせて、ぱたぱたと動かしました。
それを見ていたかみさまも、ちよちゃんと同じように両手を合わせると、奇妙にそれを動かしました。
すると、
「あっ、ちょうちょ」
なんとかみさまの合わせた両手のすきまから、薄ピンク色のちょうちょがひらひらと飛び立ちました。
ちよちゃんはそれを目で追いながら、つかまえようと身構えています。
そんなちよちゃんの肩をぽんと叩き、かみさまが右の手をくるっと回しました。
するとちょうちょは音もなく空気に溶けてゆきました。
「あー」
ちよちゃんは非難するような目でかみさまを見ると、こう言いました。
「もう、どうしてころしちゃったの?」
かみさまは何も言わず、じっと自分の手を見つめました。
そしてちよちゃんの方を見ました。
ちよちゃんはもうすっかり今の事を忘れてしまったようで、また一人楽しそうに遊んでいます。
「ぐーちょきぱーでー、ぐーちょきぱーでー、なにつくろー、なにつくろー」
かみさまはそれからしばらくの間、自分の手をじっと見つめていました。