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ちよちゃんとかみさま
★そのいち〜じゅうに

小さい頃はかみさまがいて、不思議に夢を叶えてくれた――。



ちよちゃんは3歳です。
少し茶色がかったくせっ毛が、肩の上にくるりと乗っていて、いつも前髪は短め

緑の洋服が大好きで、靴下をはくのが大嫌い。
言葉数は少ないけれど、いつも笑顔の女の子です。
ちよちゃんの後ろには、かみさまがいます。
ふわふわと浮かんでいて、時々風に揺れています。
色は白くて、ちょっとすべすべしていて、まるでいびつな玉子のようです。
かみさまは子供には見えますが、大人には見えません。
ちよちゃん以外にも、かみさまがついている子はいますが、誰にでもついている
わけではありません。
かみさまにも性格があります。
怠け者やお調子者、無口なやつ、おしゃべりなやつがいます。
かみさまは人間の言葉がわかりますが、人間はかみさまの言葉がわかりません。
だから子供たちの願い事に対して、かみさまは動きで示してきます。
決して「~が欲しい」という願い事に対して、その物をただ与えるという事はな
いのです。




「あめなめたい」
ちよちゃんがかみさまにお願いしています。
指をくわえたまま、かみさまの方を見るでもなく、お願いしています。
すーっと、かみさまが手をあげます。
にゅーって手から指が生えてきて、部屋のすみに散らかったちよちゃんのおもち
ゃを指します。
「えー」
ちよちゃんはちょっと不満そうに、口をとがらせて、それでも素直におもちゃを
かたづけ始めました。
ぬいぐるみに積み木がいちにぃ、小さなボールをおもちゃ箱に詰めると、部屋は
すっかりかたづきました。
「おっ、えらいな、ちよ。言われる前に自分でかたづけたんだな。」
お父さんです。
お父さんはまたえらいと言って、ちよちゃんの頭をなでました。
そして、
「お母さんに言うなよ。」
と言って、小さなメロン味のあめ玉をくれました。
ちよちゃんは、
「ありがと」
と、お父さんとかみさまにお礼をいいました。




「まだ、や」
ちよちゃんがお布団の中でわがままを言っています。
もう朝ご飯の時間なのに、ちよちゃんはまだおねむなのです。
「もうちょっと」
ちよちゃんはかみさまにお願いしました。
しかしかみさまはただふわふわと浮いているだけです。
「ほら、ちよ、もう起きる時間でしょ。」
お母さんが布団をはごうとしました。
「もうちょっと」
と、ちよちゃんはまたお願いします。
そしてお布団のすきまからちらっとかみさまを見ました。
かみさまは窓のところで、よくわからない歌をうたっていました。
「もう」
ちよちゃんはあきらめて、お布団から出ました。
「のどかわいた」
ひとりでテレビを見ながら、ちよちゃんがわがままを言っています。
「のどかわいた」
もう一度、ちよちゃんは言いました。
視線はテレビに釘付けで、かみさまの方を見ようともしません。
かみさまには目が無いので、どこをみてるかわかりませんが、ちよちゃんの事を
黙って見ているふうです。
「おみずでいーからぁ」
ちよちゃんはあくまでも自分で水をくみにいかないつもりです。
するとかみさまはすーっと台所にむかいました。
そしてコップに水をそそぎます。
「ありがとう」
ちよちゃんが言うと、かみさまはことんと、台所にコップを置き、ちよちゃんの
そばに戻ってきました。
「…わかったよぅ」
おりこうさんのちよちゃんは、ついにあきらめて台所に立ちました。
かみさまはまたよくわからない歌をうたっていました。





「おかあさんきらい…いなくなっちゃえ…」
お母さんに叱られて、泣きながらちよちゃんが呟きました。
自分のお部屋で電気も点けず、ひとりで泣いているのです。
「おかあさんすぐおこるからきらい…」
かみさまは静かに浮かんでいます。
「おかあさん…」
ちよちゃんは泣きやみません。
そんなちよちゃんを、そこに無い目で見つめながら、かみさまがすっと手をあげ
ました。
「ちよ?まだ泣いてるの?」
するとお母さんがやってきました。
「ちよ、反省した?」
ちよちゃんはうなづきます。
「よし、ちよちゃんはいい子ね。もうしちゃだめよ?」
ちよちゃんはまた小さくうなづきます。
「お母さんも、言い過ぎちゃってごめんね。」
お母さんはちよちゃんを優しく抱きしめました。
さみしがりやのちよちゃんは、また声をあげて泣き出してしまいました。

ちよちゃんがお庭でにこにこしています。
ちよちゃんが毎日お水をあげて育てたお花が咲いたのです。
「良かったね、ちよ。きれいに咲いたわね。」
「うん」
ちよちゃんはにこにこしています。
次の日もその次の日も、ちよちゃんはお庭でにこにこしていました。
けれどそのまた数日後。
ちよちゃんがお庭にでると、大切なお花がうつむいています。
「おかぁさぁん」
「どうしたの?あら、お花元気なくなっちゃったのね。」
「おみずあげたらげんきになる?」
「うーん、どうかしら。もう咲いてからちょっと経つものねぇ。」
「かれちゃう?」
「そうねぇ…」
「おみずあげても?」
「しかたないわよ、ちよ。お花はいつか枯れちゃうの。だからせめて、いっぱいいっぱいお花を見ててあげなさい。」
「…うん、わかった」
そう言って、ちよちゃんはお花といっしょになってうつむいてしまいました。
「ずっと、かれなきゃいいのに…」
ちよちゃんが呟きました。
するとかみさまがすっとちよちゃんのそばによってきて、ぽんぽんとちよちゃんの肩を叩きました。
「なぁに?」
かみさまはちよちゃんの手をとると、おうちのなかに入りました。
「こっちいくの?」
かみさまはちよちゃんのお部屋にはいりました。
「おへや?」
そして、ちよちゃんのおもちゃばこの中から、おもちゃのお花を取り出して、ちよちゃんに渡しました。
「おはな?」
かみさまはほこりだらけのその花をぽんぽんと叩くと、すーっと窓のそばにいってしまいました。
ちよちゃんはかみさまが何を言いたいのかわからず、首をかしげました。
お庭では、お花が寂しくうつむいていました。

ちよちゃんがお庭で穴を掘っています。
新しい、買ってもらったばかりのスコップが嬉しくて、
にこにこにこにこ穴を掘っています。
だけど、もしこんなところをお母さんに見つかったら怒られてしまいます。
それにちよちゃんが夢中で穴を掘っているのはアリさんの巣なのです。
アリさん達は逃げまどい、つぶれてしまったものもいます。
それを見たかみさまが、すうっと手をあげました。
「あ…」
すると突然、ざあっと雨がふりだしました。
ちよちゃんはびしょ濡れ。
スコップを投げ出しておうちへ駆けてゆきました。
お庭では、アリさん達が溺れていました。




ちよちゃんがお絵かきしています。
空を、雲を、飛行機なんかを、かわいい色のクレヨンで描いています。
あまり上手じゃないけれど、何より楽しそうなのが良いです。
かみさまもそれをみながら、何だか嬉しそうに歌っています。
「うーん…」
ちよちゃんが悩んでいます。
どうやら雲が上手く描けないようです。
すぐに散り散りになってしまうせいで、上手に形が描けないようです。
それをみたかみさまは、ぴたっと歌うのをやめ、すうっと手をあげました。
するとみるみる空を雲がおおいはじめ、すっかりくもりになってしまいました。
「あー…おひさま、かくれちゃった…」
かみさまは少し得意そうでしたが、ちよちゃんはがっかりしてしまい、
お絵かきをやめてしまいました。
「やだっ!ほしいの!」
ちよちゃんがだだをこねています。
ちょっぴり高いお人形が、どうしても欲しいのです。
それはキレイなドレスを着たお姉さんのお人形で、お母さんは
「まだちよには早いわよ。」
と言って買ってくれません。
「ほーしーい、ほーしーいーのー」
「ちよ、わがまま言わないの。それよりほら、あっちのぬいぐるみは?ちよちゃんカエルさん好きでしょ?」
「やだ!ちがうの、これがいいのぉ」
ちよちゃんはとうとう泣き出してしまいました。
すると今までだまってぷかぷか浮いていたかみさまが、すうっとちよちゃんに近づいて肩を叩きました。
「…なに?」
赤くなった目でちよちゃんがかみさまをにらみます。
かみさまはそんな事は気にせずすいっと手をあげると、少しはなれたところにいる、
ちょっと身なりのいい男の子を指差しました。
としはちよちゃんより少し上くらいでしょうか。
いかにも「おぼっちゃま」といった感じの男の子です。
「…あの子が、なぁに?」
ちよちゃんがきいても、もちろんかみさまは何も言いません。

けっきょく、ちよちゃんは緑色の、大きなカエルのぬいぐるみを買ってもらいました。

「あっ」

その日ちよちゃんはイヤなものをみました。

それは真っ黒なようでカラフルで、だけど透明にもみえる、
かたちの定まらないぐにゃぐにゃとしたもので、
おとなりのたけるくんの肩のあたりにふよふよと浮かんでいました。

「あっ、ちよちゃんおはよー」
たけるくんはちよちゃんに気づくと、にこにこと手を振りました。
「おはよ…たけるくん、それ、どうしたの?」
ちよちゃんはたけるくんの肩のあたりを指差してききました。
「それ?それって?」
どうやらたけるくんにはそれはみえていないようです。
そういえばたけるくんは前から、ちよちゃんのかみさまもみえないようだし、
たけるくん自身にかみさまもついていませんでした。
「…ううん、なんでもない」
「ふぅん…じゃあ、なにしてあそぶ?」
たけるくんが近づくと、何だかとても切なくなるにおいがしたので、
ちよちゃんは、
「ううん、かえる」
と言っておうちに帰りました。

季節が変わる前に、たけるくんは遠くへ行ってしまいました。

「あら、また降ってきた。」
ちよちゃんのお母さんが言いました。
「もー、だからこの季節はイヤね。洗濯物が全然乾かないわ。」
ここ何日か雨が続いたので、お母さんはちょっと不機嫌です。
「ちよー、洗濯物取り込むの手伝って。」
「えー」
「えーじゃないの。ほら。」
「はぁい」
ちよちゃんとお母さんは、洗濯物をおうちの中に入れました。
「まったく。明日は晴れてくれないかしら。」
ちよちゃんもそう願いました。

そして翌日。
その日も朝からしとしとと雨が降っていました。
「あら、また雨?やんなっちゃうわねぇ。」
お母さんはまたちょっと不機嫌そうです。
ちよちゃんはかみさまの方をちらっと見ました。
かみさまは何となくいつもより小さくなって、
おかしな歌もうたっていませんでした。
ちよちゃんは窓の外を見ました。
同い年くらいの女の子が、新しそうな赤い傘を、
楽しそうにくるくる回しながら前の道を歩いて行きます。
その子の後ろには、ちよちゃんのかみさまより、
少し大きなかみさまがふわふわと浮かんでいました。
ちよちゃんは誰にとでも無く、「ありがとね」と呟きました。




「Учитель!」
ちよちゃんがお部屋で遊んでいると、突然大きな声が聞こえました。
びっくりして顔をあげると、目の前におかしなものが立っていました。
それは大きな頭に大きな目と口、そしてその大きな頭からは細い腕が数本生えています。
首から下はいきなり足が生えていて、かみさまみたいにちょっと浮かんでいました。
「Учитель!」
それはまた大きな声で叫びました。
けれどちよちゃんはそれがちっともこわくなくて、むしろ何だか穏やかな気分になるのでした。
「なぁに?」
ちよちゃんはそれにたずねました。
しかしどうやらそれが用があるのはちよちゃんでは無いようです。
それはちよちゃんの後ろに浮かんでいるかみさまにむかって叫んでいるようです。
「Учитель!」
それがまた叫びました。
かみさまはまったくそれを気にせず歌をうたっています。
「Учитель!」
それはさっきよりかみさまに近づくと、さらに大きな声で叫びました。
するとかみさまは歌うのをやめ、すうっと左手をあげました。
その手をみると、それはびっくりしたような顔をしました。
そしてぺこりと頭を下げると、じわりと消えてしまいました。
ちよちゃんは少し寂しい気分になったので、お母さんを探しに部屋を出ました。
かみさまはまた歌い出しました。

「おかあさん!たぁくんしんじゃった!おかあさん!」
たぁくんとは、ちよちゃんが一番お気に入りのカエルのぬいぐるみです。
お母さんが見ると、たぁくんのくびの所がほつれて綿がはみ出しています。
「あらまぁ。ちよ、乱暴にしたんじゃないの?」
「してないっ」
確かにちよちゃんはたぁくんを乱暴に扱ったりはしませんでした。
けれど、大事にしていたからこそ壊れてしまう事もあります。
「おかぁさんなんとかして、たぁくんいきかえらせて」
「うーん、ちょっと難しいわねぇ…」
「おかぁさぁん」
「ちよ、また新しいの買ってあげるわよ。たぁくんとはお別れして…」
「やだっ!おかあさんのばかっ!」
そう言うとちよちゃんは自分の部屋に閉じこもって泣き出してしまいました。
「ちよ…」
かみさまはお母さんの後ろでふよふよと浮かんでいました。


けっきょく、ちよちゃんはその日泣き疲れてお夕飯も食べずに眠ってしまいました。


翌日。
ちよちゃんが起きると、枕元にはちょこんとたぁくんが座っていました。
「たぁくん!」
ちよちゃんはすぐにぱっちり目を覚まし、たぁくんを抱き上げました。
「おかぁさん!たぁくんいきかえったよ!おかぁさん!」
「ちよ?起きたの?」
ちよちゃんの声を聞いてお母さんが来ました。
何だか少し眠そうです。
「おかぁさんたぁくんがね!」
「あら、たぁくん直ったのね。良かったわね。」
「うん!」
ちよちゃんもお母さんもにこにこしています。
ちよちゃんはかみさまの方をむくと、小さな声で
「ありがと」
と言いました。
その時、窓の外で小さなカエルがぴょんと跳ねましたが、
ちよちゃんもお母さんも気づきませんでした。
かみさまは何となく寂しそうにしていました。

「かよちゃん!」

真夜中の事です。
ちよちゃんがお部屋で寝ていると、突然誰かが呼びました。

「かよちゃん!」

ちよちゃんは目を覚ましました。
「だぁれ?」
「あら、ひどいわ。いくら久しぶりだからって、忘れちゃったの?」
声のする方を向くと、そこにはかみさまがふよふよ浮かんでいました。
けれど、ちよちゃんといつも一緒にいるかみさまとは、
どこかはわかりませんがちょっと違います。
「だぁれ?」
ちよちゃんはもう一度聞きました。
「もう、よしてよかよちゃん。」
「あたし、ちよだよ」
「あら?かよちゃんじゃないの?」
「うん」
かみさまはちょっと驚いた風でした。
「そう…そうよね。あなた、ちよちゃんっていうの?」
「うん」
「そう。かよちゃんにそっくりだから、間違えちゃったわ。」
そこでちよちゃんはふと気がつきました。
「おはなし、できるんだ」
「おはなし?ああ。そうよ、あたしは、もう違うからね。」
「ちがう?」
「ええ。だけどそんな事はいいの。」
そう言って、かみさまは小さく息をはきました。
「かよちゃんに、あいにきたの?」
「そう…だったけど、もういいの。あなたに会えただけでじゅうぶん。」
「じゅうぶん?」
「ええ。とっても嬉しいわ。」
ちよちゃんは、かみさまの言っている事を考えようとしました。
けれど眠くて眠くて、考えがまとまりません。
「あら、ごめんねちよちゃん、こんな時間に起こしちゃって。」
「だいじょぶだよ」
「ううん。ありがとうね。さ、おやすみなさい。」
「うん…おやすみ…」
目を閉じると、さっき以上に深く優しい眠りが、ちよちゃんを包みました。


「かよちゃん!」
「あら、ちよどうしたの?」
朝、台所に立つお母さんにちよちゃんがそう声をかけました。
お母さんはちょっとびっくりしています。
「かよちゃん!」
「なぁに?どうしたのよいきなり。」
「おかぁさんかよちゃん?」
「ええ、そうよ。あ、またお父さんに変な事教えられたんでしょ!」
お父さんは必死に自分じゃないと言いましたが、お母さんは信じませんでした。
ちよちゃんはずっとにこにこしていました。
かみさまも、嬉しそうにしていました。
「うー…おかぁさぁん…」

ちよちゃんが病気です。
昨日から高い熱にうなされています。
「うー…つらいよぉ…」
「熱、下がらないわね…お薬効かないのかしら…」
お母さんも心配そうです。
「ちよ、大丈夫?」
「…つらい」
「もうすぐ、お薬効いてくるから。そうしたら、きっと楽になるわ。」
「うー…」
ちよちゃんはぼやけた視界の中、かみさまを探しました。
かみさまはちよちゃんのそばに浮かんでいました。
かみさまもどことなく心配そうです。
「たすけてよぅ…」
ちよちゃんがかみさまに言いました。
けれどかみさまは動きません。
ただふわふわと浮かんでいます。
「ねぇ…」
かみさまがちよちゃんにすっと手をのばしました。
そして、ちよちゃんの頭を優しくなでました。
「…」
ほどなくちよちゃんは寝息を立て始めました。

ちよちゃんがすっかり良くなったのは、それから数日後の事です。

「ちよ、やっと熱が下がったわね。良かったわ。」
「うん」
「でもまだ大人しくしてるのよ?」
「うん」
元気になったちよちゃん、でも何だか不機嫌そうです。
「ばか…」
言ってちよちゃんはかみさまをにらみました。
ちよちゃんはかみさまが何もしてくれなかったから少し怒っているのです。
そんなちよちゃんを見てかみさまはすっと手をのばしました。
そしてちよちゃんを指差しました。
「?」
次にかみさまは、窓に止まった小さな虫を指差しました。
「なぁに?」
次にかみさまは天井を指差し、くるくると腕をまわしました。
「なによぅ」

結局、ちよちゃんがかみさまと仲直りをしたのは、それからさらに数日後の事でした。

「はい」

ちよちゃんがかみさまに、折り紙のツルを渡しました。
プレゼントというわけではなく、何となくです。
かみさまは歌っていたうたをやめ、そのツルをじっと見ています。
「うれしい?」
ちよちゃんがきくと、かみさまは何も言わず、
ツルを持ったまま窓の外へ飛んで行ってしまいました。
「なによぅ」

その日のお夕飯は、ちよちゃんの大好きなオムライスでした。




ちよちゃんがかみさまをじっと見ています。
かみさまは気にするふうもなく、ぷかぷか浮かんでいます。
「ねぇ」
ちよちゃんが口を開きました。
「おなまえは?」
かみさまはもちろん答えません。
けれどちよちゃんは、かみさまの名前が気になって仕方ありません。
今まで考えた事もなかったから、よけい気になるのです。
「ねーえー、おなまえはー?」
ちよちゃんはだだをこねるように言いました。
そんなちよちゃんの方を向きもせず、かみさまはすっと手をあげました。
すると、
「ただいまー。」
「あっおとうさんだ!」
ちよちゃんは玄関へと走っていきました。
いつもより早く帰ってきたお父さんに、ちよちゃんは大喜びです。
「おとうさんおかえり!」
「ただいま、ちよ。一人で遊んでたのか?」
「うん!おとうさんあそぼ!」
「はいはい、着替えてからな。」

ちよちゃんはかみさまの事をすっかり忘れてにこにこしています。
かみさまは一人お部屋でうたを歌っていました。
「ちよ、誕生日おめでとう。」
「おめでとう、ちよ。」

今日はちよちゃんの4歳の誕生日です。
おっきなケーキとごちそうを前に、みんなにこにこ嬉しそうです。

「ほら、ちよ、プレゼントだぞ。」
「おとうさんありがとう!」

そんなみんなを見ながら、かみさまも何だか楽しそうです。

「わぁ!」
ちよちゃんがプレゼントを開けると、中にはちよちゃんが前から欲しがっていたお人形が入っていました。
「ちよ、前から欲しがってたもんね。でも大事にするのよ?」
「うん!ありがとう!」
ちよちゃんはお人形をぎゅっと抱きしめました。



その夜の事です。
ちよちゃんが眠っていると、誰かが肩を叩きました。
「…?」
目を開けると、そこにはかみさまが浮かんでいました。
かみさまはちよちゃんの手をとると、ふわりと優しく起こしました。
「なぁに?…ねむいよぅ」
かみさまはちょっとすまなさそうに、だけどあわてたようにちよちゃんの手を引きます。
「…おそと?」
かみさまは窓の前で止まると、外を指差しました。
「…わぁ」
ちよちゃんが窓の外を見ると、夜空にはいちめんの流れ星です。
「きれい…」
願い事も忘れて、ちよちゃんは空を見上げました。
かみさまも、静かに星を見つめています。
「ありがとう」
ちよちゃんはかみさまに言いました。
けれどかみさまは、ちよちゃんの肩に手をおくと、小さく首を振るように頭のあたりを動かしました。
「?」



「*****」



不思議そうにしているちよちゃんに、かみさまが何かを呟きました。
「え?」
ちよちゃんは聞き返しましたが、かみさまはまた窓の外を見つめ、黙ってしまいました。


夜空にはとめどなく星が流れ、ひとつ大人になったちよちゃんを見下ろしていました。

火呼子(ひよこ) 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha