Neetel Inside 文芸新都
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「させるかっ」
 ヒウロがファネルの背後に回り込み、剣を振り上げた。
「引っ込んでいろ」
 左手を突き出す。そしてそのまま、奥へと突いた。瞬間、ヒウロは声を出す事なく吹き飛ばされ、木へと叩き付けられた。
「げ、げほっ……。しょ、衝撃波……がふっ」
 血を吐く。内臓をやられたのだ。
「ヒ、ヒウロ……!」
 火花を散らしながら、オリアーが歯を食いしばった。しかし、勝てない。この思いが全身を支配する。このファネルは強い。自分たちとは次元が違う、そう思い知らされたのだ。
「さぁ、待たせたな」
 左手。ヒャダインでメラミごとメイジを、衝撃波でヒウロを吹き飛ばした左手がオリアーに向けられる。
「僕たちはここで死ぬ訳にはいかないっ」
「自らの運命を受け入れるんだな」
 瞬間、オリアーに力が漲った。間髪入れず、ファネルの右腕を弾き飛ばす。
「何だと」
「オリアー……!」
 メイジが攻撃力倍増呪文、バイキルトをかけたのだ。
「貴様、生きていたのか」
 暖かく黄色い光が、メイジの全身を覆っていた。呪文の威力を減少させる呪文、マジックバリアだ。
「はぁはぁ、オリアー、お前の剣術が頼りだ……!」
 しかしダメージは大きい。だが、戦える。メイジは続いて素早さ上昇のピオリム、守備力増強のスカラを唱えた。
「ありがとうございます、メイジさん」
 オリアーの動きが素早くなった。次々に剣撃を繰り出す。
「小癪な」
 しかし、その全てをファネルは捌いていた。だが、さすがに攻撃に転じる余裕は無い。
「右手だけでは殺せんか。小賢しい。左手でとっとと」
 瞬間、メラミが眼前を掠めた。身体が反応した。キッとメイジの方を睨みつけた。
「ガキが」
 左手をメイジに向けて突き出す。衝撃波。メイジの身体が吹き飛んだ。しかし、半身を起す。まだ戦える。
「しつこい、さっさと死ね」
 思わず眉間にシワを寄せる。
「メイジさんだけに集中する余裕があるのかっ」
 オリアーの剣。なおも捌いている。だが、バイキルト・ピオリムで強化されているために、油断が出来ない。左手を使って一気に吹き飛ばしたいが、そうすればメイジの呪文が飛んでくる。
「ならば、細かくだ」
 左手。間髪入れずに衝撃波を放った。オリアーの態勢が崩れる。大振りではなく、モーションを最小限に留めての衝撃波。威力は小さいが、オリアーの動きを止めるぐらいならば造作も無い。
「死んでろ」
 右手。一気に振り下ろす。オリアーが剣で受け流す。流れる動作でさらに横に薙ぐ。オリアーは受け流せない。鮮血が宙を舞った。しかし、浅い。オリアーが後方に飛んでいたのだ。ピオリムが掛かっているからこそ出来た。だが、態勢を崩している。剣を構えられない。
「フン」
 距離を詰める。トドメだ。右手を突き出した。
 金属音。
「ちぃっ。貴様もか」
 ヒウロがファネルの右手を弾き飛ばしていた。

       

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