Neetel Inside 文芸新都
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密室遊戯
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 天井に吊るされた照明は薄暗く、室内をぼんやりと現している。東と西には扉。北の壁に鹿の首の彫像、南の壁にテレビと壁時計。
 東の部屋から案内された7人の男は、無言で部屋を見渡した。中央に丸く白いテーブルがあり、7つの木製の椅子が用意されている。どこからか声が聞こえた。
「お客様方、ようこそいらっしゃいました」
 『マネージャー』の声だった。天井のスピーカーからだ。7人の男は皆、この男によってここへ来た。しかし誰もが『マネージャー』に実際に会ったことはなく、その部下によってそれぞれ連れてこられた。
 7人の男たちは、年齢も外見もばらばらで、なんら接点もない。この部屋に来て初めて出会ったばかりだ。唯一共通することは、『マネージャー』の誘いによってここへ来た、ということのみ。
「さあ、どうぞ椅子にお座りください」
 言われた通りに、男たちは空いている席へと腰掛けた。皆、無言だった。照明の不安定な光が、7人を幻影のように照らし出している。
 スーツ姿の、赤いふちの眼鏡をかけた中年の男性。
 ランニングシャツを着た、太った男。
 ロックバンドを意識したかのような、派手な服装、派手な髪型の青年。
 青いYシャツを着た、細身の男。
 不気味に口元に笑みを浮かばせた、黒いスーツに金色のネクタイをした細目の中年。
 がくがくと怯えている、ユニクロの服を着た若者。
 1番年齢が高そうな、頭の禿げかかったジャージ姿の初老の男性。
「今から私のエージェントが1人、そちらへ行きます。どうぞリラックスしてお待ち下さい。それまでに軽くゲーム説明を始めましょうか」
 男たちはマネージャーの声に神経を集中させた。
「6時からゲーム開始、それまでは皆さん楽しく談笑していて結構です。ゲーム終了までは部屋からは出られません。西側のドアはトイレにつながっていますので、便意を我慢する必要はございません」
 まもまくしてから、背の低い男が現れ、それぞれの席に座る男たちのテーブルの前に、黒く、手のひらにちょうどおさまるサイズの物を置いた。拳銃だった。さらに一人一人に、ほかの人間に見えないように小石をふところに忍ばせて、退室した。
「皆さんに行き渡ったようですね。それは見たとおりの銃です。どれも6発の銃弾がこめられてます。あ…」
『マネージャー』はかるく喉を唸らせてから、続けた。
「残念ながら、一丁のみ、空砲です。申し訳ありませんが、その銃を渡された方はその時点でゲームオーバーになるでしょう」
 7人の男たちがざわついた。『マネージャー』は更に落ち着いたまま説明を続けた。
「そして今渡された小石。赤い石が4つ、青い石が3つ。ルールは簡単です、拳銃で自分と違う色の石を持っていると予想した人物を撃って下さい。どちらか一色になった時点で生き残った方々には約束通り賞金をお渡しします」
 時計はまもなく6時を指そうとしていた。マネージャーは最後に通告した。
「あなたたちが今後どうするかは皆様次第です。そして最後にひとつ。時計が午前0時になった時点で照明は自動的に消えて、真っ暗になります。そうなった場合、ゲーム続行が困難になることが予想されますので、ゲーム時間はおよそ6時間ということになります」
 7人の男たちはそれぞれの顔を見合わせた。おびえるように周囲を見渡す者、椅子にふんぞり返って見下すように参加者を見やる者、拳銃を手にして、その質感を味わう者、緊張にがくがくと震えだす者。

時計が6時を告げた。『マネージャー』が再び言葉を発した。

「それでは、ゲーム開始です」

       

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