Neetel Inside 文芸新都
表紙

夏の文藝ホラー企画
掌編/コピペ的な/のなめ

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 「霊感があるんじゃないの?」と囃されたこともあったが、半信半疑もいいところだった。
 確かに、何か良く分からない……影か「もや」のような薄色を視界に捉えたことは一度や二度では無い。
 他の人には見えてない様子なのでまさか幽霊とも思ったが、気付いたときには既に雲散霧消、と。
 回を重ねるごとに、その何かははっきりと長時間見えるようになったが、実害はないのであまり気にする事も無かった。
 そんな「微」霊感を持ってる美恵は、今自室のベッドに横になって恐怖に震えていた。
 暖かい毛布にくるまり、まどろむ瞳でふと化粧台の鏡を見ると。
 
 ベッドの下に、影のようなものが存在していた。
 
 急に背筋は凍り付き、体温が低下している気さえ起きた。
 心臓が何かに握られ、体は縛られている錯覚も、同時に美恵を襲う。
 声も出せず。泣くにも泣けず。金縛りにあったように動けない……と言うよりも、本当に金縛りなのかもしれない。
 「はっ……はっ……」
 喉だけはどうにか動く。生まれたての赤ん坊よりも必死に、美恵は呼吸器官をサイクリングさせる。
 薄暗闇の中で「何か」は音をたてずにゆっくりと蠢く。
 目をそらしても消えない、いつもよりはっきりした影。
 低温で作動している扇風機が、顔に触るぬるい風が、それを夢でも疲れから来る幻覚ではなく、現実だと告げている。
 
 それにしても体が重い。ベッドにめり込んでるような感覚に陥ってくるほどに。
 鏡には映っていないが、何か、何かが上にいるような感じがしてならない。
 押さえつける力に逆らい、美恵は真上を横目で確認すると。

 全身水色で透き通った人のような何かが、美恵の上に座っていた。

 「……!!」
 こんどこそ、心臓が止まったかと思った。
 喉からはヒューヒューと僅かな空気しか出ず、気絶することさえ美恵には許されなかった。
 美恵に出来ることは(消えろ、消えろ)と念じ続けて、消えるのを待つのみ。
 幽霊は消えることなく、どっかりと居直ることを止めはしなかった。
 しかし。
 
 (……み……える……のか……)
 「!」
 
 確かに、幽霊はそう言った。口に出してではなく、頭に直接言葉を放り込まれたかのように響く。
 (み……見え……ます)
 そう、頭の中で答える。
 幽霊の表情はよく見えないが、どこか哀愁を感じさせる雰囲気だった。
 
 (きづいて……ほしかっ……た……ごめ……ん)
 消える。
 同時に、金縛りが解ける。
 呼吸も正常に戻ると、急に疲れと安心感が襲ってきた。深く、深くため息を吐く美恵。
 一分もたてばほとんど落ち着き、いきなり消えろなんて言ったりして少し悪いことをしたかな、という余裕さえ出てきた。
 
 私には本当に霊感があったんだ。明日友達に言ったら信じられるかな?
 ……いや、霊感があるかもと言い出したのは友達だ。信じて貰えるだろうな。
 そんなことを考えつつ、美恵は深い眠りについた。

       

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