Neetel Inside ニートノベル
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第一話 中

放課後になり、生徒たちが部活へ向かう中、枯野はバイト先に向かっていた。

枯野恭一は部活に所属していない。
片親な為に、生活費を自分で稼がないといけず、その為に週の大半をバイトに費やすからだ。

「今日は駅前でバイトか」
バイトの細かな予定が記されたメモ帳を開き、今日のバイト先を確認した時ふと、枯野の頭に授業中に純一が話していた話を思い出した。

「駅前の廃ビルって知ってるか?」
「ああ、今度コンビニになるだよね」
「夕方にそこの3階から夕陽を見ると、魔女に会えるらしいぞ」
「何よそれ?都市伝説?」

怪談の類が嫌いな志乃は怪訝な顔をして反応をした。

「いや、まーたぶんそんな感じなんだろうけどさ、バイトの先輩が話してくれたんだよ」
「でもその分だと誰か試しに行ってそうだね」
「いや、先輩も試したらしいが・・・なぜか行けないらしい。」
「何それ?どういう事?」
「ああ、例えば転んだり、急に電話がなったりでたとえついても日が沈んでるらしい・・・まぁ先輩が怖がらせようとしたのかもしれないけどな」
「ふーん、まぁ私はどうでもいいや、怪談嫌いだし!」

そうこうしてる内に、騒いでいるのに気付いた教師がこちらを睨み出したので、三人はそれぞれ前を向きなおした。
結局話はそこで終わり、僕はまた眠りの旅へ出たのだが・・・

「魔女・・・ね」
どうせ何も無いだろう。
しかしなんとなく、枯野は気になってしまった。
別段自分の目で見たモノしか信じないわけではないのだが、何か惹かれるものを感じていたのかもしれない。
「バイトが終わるのが5時30分、まぁ行くだけ行ってみるか」
まだ見ぬ魔女に、少しの期待をのせて、枯野はバイトへと向かった。


噂の廃ビルと、枯野が働く店は結構近い。
駅前の、人が混雑する通りを挟んで向かい側なのだ。
近いうちに廃ビルは取り壊され、コンビニエンスストアになるらしい。大方取り壊される事を聞いた誰かが作り話を作ったのだろう。枯野はそう心の中で結論づけながらも、どことなく期待していた。

バイトが終わり、廃ビルの前に立つ。
                                    「ヤメロ」
少し、寒気がしたが、枯野は怪談を上っていく。
                                  「ヤメテオケ」
電気がついておらず、薄暗い階段を上る中で
別段第六感に優れている訳ではない、
にも関わらず、枯野は予感していた。
                                  「イイノカ?」
自分を"何か"が待っている感触。
気づくと三階の、今は使われていない
旧オフィスに通じる扉の前についた。
ドアノブに手をかける
                                 「モドレナイゾ」
「ああ、それでいい。もう日常には飽きたよ」
僕は何かを確信して、ドアを開いた。そこには――




















――何も、無かった。







       

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