Neetel Inside ニートノベル
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わが地獄(仮)
存在しない安心

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 仕事でミスをした。
 ミス、といってもミスなのかどうか分からない。たとえば、会社で名指しで罵倒されたりしたわけじゃない(キレたクレーマーには怒鳴られたが)。
 別に俺が悪いわけじゃない、という俯瞰的事実は理解できる。
 でも、もう会社に行きたくないな、と思う。
 環境が悪いわけじゃない。この程度で辞めるなら、どこでも続かないだろう、という気持ちもある。もちろん、俺を王よ神よと崇めてくれて、腹が痛いんで今日ちょっと休みますと言ったら「いいよいいよ!有給減っちゃうから出勤したことにするね!業務上横領最高!」とあやしてくれる職場なら続くだろう。そんなもん存在しないけど。
 存在してくれないと困るんだけど。

 普通は、みんな、一日一日が終われば、回復していくらしい。
 その気持ちはわかる。たとえばブチキレたあとに、腹減ったなあ、と気づいたらもうどうでもよくなるとか、そういう感じで、みんなストレスに対処しているらしい。たぶん。
 切り替えとか。そもそも仕事なんかどうでもいいと割り切っていたりとか。
 それも俯瞰的事実としてわかる。
 俺も、今の会社に永遠にいるわけじゃない。契約社員だし、たとえば友達に相談したとして「そんなに気にすることか? たいした給料もらってないんだし、いつやめたっていいぐらいなんだから、ほうっておけばいいだろ」と言われるだろう(と思う)。
 それは俯瞰的事実としてわかる(この言葉べんり)。
 ただ、それでも、嫌だ行きたくない、という気持ちが根っこのほうにある。
 発達障害とか、うつ病とか、まあ、いろいろ理屈はつけられる。
 ただ、多分、自分を観察してみると、俺は嫌なことがあってそれが終わったことよりも、「一度、嫌なことがあった以上、また起こる可能性がある。そんな危険は犯せない」と考えている節がある。
 トラブルは終わった。それはいい。
 またトラブルが起こるのが耐えられない。
 というのが、俺の気持ちらしい。
 これに大しては誰だって「そんな、トラブルを永遠に発生させないなんて無理だよ」と答えると思う。俺もそれはわかる。
 だから、それに対して、他人を殺したり自分を殺したりするんじゃないかな、と思う。
 もう、永続的に、あんな『メ』には遭いたくない。
 その気持ちが本能から生じているから、会社に行きたくない。
 どうも、そういう気分らしい。

 で、実際に、たとえば今の会社から逃亡したとしても、この現象というのは、それこそトラブルを絶滅させることができないんだから、永遠になくならない。
 そういう意味で、俺は今の会社からの逃亡をはかる気になれない。
 これは俺の感情の話だから、理屈では突破できない。
 これに自分自身でも、最近困っている。
 俺は親が健在だから、すべてを投げ捨てれば80-50問題を展開して労働から逃亡することは、ギリギリで出来なくもない。発達障害とうつ病の診断はおりているから障害厚生年金の申請もできるとは思う。
 ただ難しいもんで、そうしたいわけじゃない。金銭的にも困るし(俺のライフスタイル的には、無限に読書して無限に映画見て創作したり創作論つくったりする隠者生活は適合度◎ではあるんだけど)。
 困ったなあ、と思う。

 俺は、世の中と触れ合ってみて、この世界は間違ってる以外の感想はほぼない。
 だから世の中から得られるネタというか、エネルギーというのは、この世界は間違ってるという認識の精度が上がる、というくらいでしかない。
 だから創作上では、俺はこの世界との関わりは正直それほど必要じゃない。ニート生活して(隠者生活、と最初に書いた。古い小説読んだノリが残ってる)、ひたすらに考察と試行を繰り返した方がいい。
 そう思うんだけども、どうなんだろう。
 俺は『安心』が欲しい。安心があれば、多少の無理ができる。
 安心がなく、先が見通せないというのはストレスだ。
 俺はもう、よほどの安心、何をしても許されるくらいの絶対の安心が欲しい。
 そんなものは存在しない。
 存在しないから、困り続けている。


       

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