Neetel Inside ニートノベル
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「よろしくな、アタシ山本早苗って言うねん…。」

そうやって照れたように春子に話しかける山本。
2年前の入学式の事だ。

自分から友達を作ろうしない春子からしたら、向こうから話しかけてくれた事はとてもうれしい事だっただろう。
しかし春子はあえてローテンションで

「おーう、志村って言うねん、よろしくなー。」

と言った。

結局春子と毎日話しをしてくれるのは山本だけで、そのまま1年過ぎた。
特に何もなく、無難に日々は過ごされた。


「なー…志村ってウザくない?いつも機嫌悪そうにしてるし。」

クラスメイトの田嶋美佐子は嫌いな奴を決めないとやっていけない性格らしい。
毎回ターゲットを決めても1か月ほどで飽きるんだけども
春子のひょうひょうとした態度が気に障ったらしい、もう3ヶ月くらい同じことを言っている。

「山本、お前志村と仲良くしてるやろ、きしょ。なんで?きしょいで?」

田嶋の取り巻きも山本に嫌な顔を向ける。
香水くさい田嶋が山本に言葉にならない圧力をかけていた。

昼休みに山本は春子に言う。

「志村さん…あんな…田嶋さんっているやん?あの人がな?」

てええええええええええええええええええええええええええええええい!!!!!!!
それえええええええええええええええええええええええええええええええええええいい!!!!!!!
どっこいしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!!!!
ほいさほいさほいさっさああああああああああああああああああいい!!!!!!!
うひひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!


頭に浮かんできたそこから先の思い出を、春子は無理矢理消しさった。


今春子は3年1組にいる。
クラス移動させられたのだ。

みんなはあえてこっちを気にしないようにしている。
それがとてもぎこちなく思えた。

春子は座っている姿勢を変える。
なぜか…どんな姿勢で座っても、自分が不自然な体制になっている気がした。


そして3年4組

「早苗!!!?心配したんやでー!!!?」

クラスメイトの黄色い声が聞こえる。
擬音にしたら「わちゃわちゃ」だ。

「ゴメンなぁ早苗、うちら気付いたげんと…。つらかったやろぉ?」

「これからはみんな早苗の味方やからな!」

「(以下同意文)」
「(以下同意文)」
「(以下同意文)」
「(以下同意文)」


その中には田嶋の姿もあった。

こうして「山本」は、「早苗」になった。

       

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