Neetel Inside ニートノベル
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車を走らせながら、あの女の眼を思い出す。
「あの眼が気になるんだよな。」
単に気丈な女性と言うわけではなさそうだ。
あの瞳の奥にはまだなにか大きな闇がある直感が
そういっている。
「今回のやまはどうやらこれじゃ終わりそうになさそうだ。」
渋谷のセンター街通り辺りの車の渋滞に悩まされながら
なんとか着いた渋谷中央病院。車から降りると煙草に火を付けた。
「とりあえず一服な。」
仕事終わり仕事始めその区切りはやはり一服である。煙草が高くなっても
そのスタンスは変える気は毛頭ない。これが俺流だ。
「っしゃ、行くとするかね。」
汚物だらけのコートを車に投げ捨て、小走りで病院へと向かう。
受付を見つけると、警察手帳を見せる。
「あっ刑事さんですか、病室は207号です。東館なのでここから真っすぐ行っていただいて
その二階です。」
「207号室ね。ありがとう。」
勿論、こういう時のための警察手帳だろう。役に立つ。出せば
いい出せば。
病院の受付で病室を聞くと俺は、気合いを入れて病室へ向かった。
「さて、なにが隠れてるのかな。」
好奇心と言うのだろうか、刑事になった理由もそうだったが
それが俺の原動力だ。
207号室の前に立つと、ゆっくりと扉をスライドさせていく。
月明かりに照らされて長く艶やかな髪とくっきりと整った目鼻が
少女の様な容姿だがその中には妖艶さがある。
「こんばんわ、お譲ちゃん。月は奇麗かい?」
窓の外を眺めていた彼女に俺はそう言った。
「貴方は!あの時の野蛮人!」
返ってきた言葉は俺の胸に突き刺さった。
「それが助けてもらった人に対する言葉かよ。」
「あら、ごめんなさいね、野生児といったほうがよかったかしら?」
この女思ったより化け狐かもしれねぇな。容姿からは想像がつかないぐらいの
毒吐きだ。
「顔が真っ赤ね刑事さん、言いすぎたわ。まあ座って話でもしましょう。
ねぇ、そのために来たんでしょう?」
何もかもお見通し、そんな感じだった。
「そうだな。いっぱい話したいことがあるんだわよろしく頼むわ。」

この化け狐なにを持っていやがる。

       

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