Neetel Inside ニートノベル
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 走馬灯。
 自分の脳裏を瞬く間によぎったその映像を、果たしてそう呼んでも良い物なのかどうか、自分はオカルトの専門家でも無ければ、死にかけた経験も無いので分かりかねますが、それは確かに、この世から去る時に見る光景としては、まずまずといった出来で、死を覚悟した自分の気持ちは、とても自然な事だったのです。
 くりちゃんがこの数週間で晒してきた痴態の数々が、スライドショーのように流れていきました。コンビニの床を汚したのに始まり、体育の授業中に乳を晒し、おもらしもして、かと思えばちんこが生え、同級生に手コキされ、見ず知らずの男の前でふたなり放尿をご披露し、後輩にあわやレイプされそうになり、挙句の果てにはロリ化。極めつけは屈辱のM字開脚。自分はてっきり、走馬灯とは白黒の映画みたいな物だと思いこんでいたのですが、実際はピンク映画だったという訳です。
 しかしながら、結論から申し上げると、自分は死に至りませんでした。もちろん、性的な意味で。
 頭上を見ると、間違いなく勃起率は100%に達しており、これまでの経験から言うと、これはHVDO能力者同士の戦いにおいて、決定的敗北を意味します。
 ここで少し、HVDOの性癖バトルについて整理しましょう。対三枝委員長戦においては、彼女の興奮率は、プレイのピーク時に147%まで到達していましたが、これは自分の能力を抜きにして、彼女が勝手にそこまで羞恥していたのであり、元来の、彼女自身が持っている露出癖からなる興奮ですが、そこに自分が能力を発動させると、彼女は更に発情し、150%を突破すると同時に「敗北」の判定がなされました。
 しかし今回の場合は、その時のように自分が自発的に興奮した訳ではなく、春木氏の「攻撃」によって、ここまで勃起させられている訳ですから、等々力氏とのバトルを思い出してみても、これで決着はつき、くりちゃんがM字開脚を決めた時点で、自分のちんこは爆発させられているはずなのです。
 つまり今、「ありえない事」が起こっています。
 そして、自分のちんこが爆発しないという事の他にもう1つ、「ありえない事」が並行して起きていました。
 自分はくりちゃんの胸を見て、呟きます。
「お……おっぱい……」
 春木氏も、自分と同じ物を見て、勃起率を91%まで上昇させていました。
 なんと、あの平成に蘇った洗濯板こと、崩壊しないベルリンの壁こと、やたら使い勝手の良いまな板こと、くりちゃんの胸に、確かな膨らみ、おっぱいがあるのです。しかもそれは、「巨乳」と呼ぶにふさわしい、お見事な、生まれたての赤ん坊にとってみれば実に頼もしいであろう、立派なおっぱいだったのです。
 自分は春木氏に視線をやりました。春木氏は自分に視線を返しました。
 これは、どちらの能力でもない。
 そう気づいた時、自分を取り巻く、この2つの「ありえない事」の理由が判明しました。


「待たせたな!」
 振り向くと、教室のドアの所で立っていたのは、
「等々力氏……!?」
 制服姿の等々力氏は、手を円形に作り、見た事のある構えをして、そこにくりちゃん(自分のおっぱいをたゆたゆと触って、状況もろくに飲めてないくせに若干嬉しそうにしているおもらし女)を捉えていました。
「EDが治ったのですか?」
 自分がそう尋ねると、等々力氏はにやりと笑い、「ああ、まあな。どうやらそうらしい」と気持ち悪く、かつクールに決めましたのでぶん殴りたくなりました。
「お前らと別れた後な、頭のキレる委員長の事だから、もしかして、たったあれだけの画像から場所を絞り込むかもしれないと不安になってな。それで、人形師、音羽さんの家に来た瞬間、突然この空間に飛ばされたんだ。この教室だけ電気がついていたから、すぐに分かったぜ」
 春木氏のシチュ能力の射程は半径50m。音羽邸の玄関くらいなら、余裕で入る計算です。それぞれの位置関係はそのままに飛ばされるので、等々力氏はこの小学校の下の階あたりに移動した、という事でしょうか。
「話は全部聞かせてもらったぜ。おい、春木」
 春木氏は、自分を仕留め損なったというのにロクに残念がりもせず、至って普通に「やあ、初めまして」と挨拶をしました。
「へへ、余裕こいていられるのも今の内だぜ? 何せ俺が来たからには……はうあっ!」
 聞いた事のある大きな爆発音を経て、股間から煙を発しながら、膝から崩れ落ちる等々力氏。
 どうやら等々力氏の視界に、裸ランドセルロリ巨乳くりちゃんが入ってしまったようです。
 教室の床に仰向けに転がったので、自分は駆け寄り等々力氏の体を起こします。
 ぜえぜえと口で息をしながらもどうにか微笑む等々力氏は、切れ切れの言葉を吐き出しました。
「はぁはぁ……悪いな、五十妻。やっちまった……。ロリ巨乳、か……なんて威力をしてやがる……くそっ! 俺はロリを舐めていた……ようだ……ぜ」
「等々力氏ーーー!」
 と、死に行く兵士を看取るような格好で叫んでみましたが、内心で「復活して負けるまでが早すぎだろ、こいつ」と思っていましたし、気づいたら実際に言葉に出してそう言っていました。
「邪魔が入ってしまったね」
 しかし、等々力氏のおかげで窮地を脱する事が出来ました。春木氏がくりちゃんを巨乳化した事により、自分はその豊満なバストに目がいき、勃起率が100%になった。つまり、春木氏のロリ能力に敗北した訳ではなく、なおかつ、等々力氏の「丘越」のみに敗北した訳でもない。2つの能力の攻撃を同時に受けた事により、勃起上限が高まって、100%ではなくなった。という判定と解釈するのが妥当な所でしょう。とにかく、自分はかろうじて一命をとりとめた訳です。


 突然の乱入者によって、自分の勃起率は急速に落ち着きました、と言いたい所なのですが、等々力氏が再起不能になり、能力が解除された事によって、元のつるぺたに戻ったくりちゃんの悲しそうな表情を見ていると、むくむくと、自分の息子が元気になっていったのです。
 というより、はっきり言って、等々力氏の助けは全然必要無かったんじゃないかな。という疑問も芽生えてきた現在の勃起率は、96%を記録。抜き差しならない状況はなおも続きます。
「さて、仕切りなおしといこうか。あ、その前に等々力君にはここから出ていってもらおう」
 そう言った春木氏が指をパチンと鳴らすと、等々力氏の死体(形容すべきは内実にあります)が煙のように消え去り、乱入してくる前と同じ状態に戻りました。
 本当に役に立たなかったな。
 と、改めて思いましたが、いえ、等々力氏はきちんと、噛ませ犬にしては十分過ぎるほどの働きを果たしていきました。
 春木氏の頭上を見ます。そこにあるのは、勃起率95%という数字。
 等々力氏の命がけのロリ巨乳は、確かに、春木氏にダメージを与えていました。
 本来、現実においては、「ロリ」と「巨乳」は両立がほとんど不可能な属性です。「幼い」という事は乳が十分育っていない事を意味しますし、乳が大きいという事は「幼くない」という事を意味します。それが頻繁に両立されるのはあくまでも二次元世界だけの話であり、「巨乳小学生」と銘打たれたイメージビデオに出演しているのは、既に発育しきった、こいつ本当に小学生か!? と疑うような女子達ばかりなのが実情なのです。
 くりちゃんは小学校の頃から小柄で、前へならえと言われると両手を腰にあてるタイプの人間です。そのような「完全なロリ」に対して「巨乳」が加わるという事は、もはや奇跡であり、不可能世界の未知なる可能性だと言えるでしょう。
 等々力氏が春木氏に残していったダメージは大きく、これは千載一遇のチャンスですが、残念ながら、くりちゃんは現在、春木氏の支配化にあります。
「くりちゃん! 今なら春木氏を倒せそうです! 自分の指示を聞いてください!」
 自分は心から、くりちゃんにそう訴えかけました。しかしくりちゃんは聞く耳を持ちません。
「誰があんたの言う事なんか聞くか! 泣いて土下座したって許してやらないもんね! 大人しくちんこ爆発してればいいよ!」
 今すぐにこの女が泣きながらおもらしをする姿が見たい。と、思いました。
「悪いね、五十妻君。これも君の、普段の行いが悪かったと思って納得してくれよ」
 春木氏の口ぶりには、これっぽっちも悪いと思っている節がありません。春木氏はくりちゃんに例の笑顔を向けて、淡々と言います。
「さて、くりちゃん。次の指示だけど……とりあえず、オナニーしてみてくれないかな?」


 くりちゃんが全身白ベタになって、最近ではちびまるこちゃんくらいでしか見ないような縦線が何本か入ったのはもちろんの事ですが、自分は自分で、その単語を聞いた瞬間に、脳内100インチプラズマテレビにロリくりちゃんのオナニーシーンがちらりと浮かび、勃起率は98%まで上昇しました。
 くりちゃんは「え?」を何回か言った後、「ここで? 今? 何を?」と聞き返しました。
「ここで、今、オナニーを」
 アニメの最終回サブタイトルのような台詞を、本気の目で言いきった春木氏。くりちゃんは、混乱の最中でようやく「この人間はどうやら本物だ」という事に気づいたらしく、結局、いつものように、潤んだ瞳で自分に助けを求めてきました。
「知りませんよ。さあ、とっとと公開オナニーでも何でもしてください」
 と、「く」のあたりまで言いかけましたが、やはり背に腹は変えられない物で、仕方ありません、今はとにかくこの淫売を手懐け、春木氏を打倒しなければ、勝負の後に再調教を施す事もままならないのですから。
「くりちゃん、こっちにきてください」
 そう言われたくりちゃんは、春木氏の様子を伺いながらも、局部を手で隠し、そろりそろりと机を下りて、自分の近くにやってきました。一方で春木氏は何も言わず、ただくりちゃんの行動を眺めていましたが、自分がくりちゃんに2度触れ、能力の準備を完了させると、真っ白な声でこう問うたのです。
「くりちゃん、裏切るのかい?」
 くりちゃんは、一瞬気まずそうな顔になったものの、今一度覚悟をしなおして、はっきりと言いました。
「人として、それだけはやっちゃいけないような気がする」
 三枝委員長にも是非聞かせてあげたい台詞です。まあ、くりちゃん自身も、散々人前でおしっこを漏らしてきた口で何を言うか、という話でもありますが、文句を言っている暇はありません。
「さあ、発動しますよ」
 自分はくりちゃんに最終確認をしました。もちろん、ポージングは以前のように、股間を突き出して、女の子の一番大事な所を相手に向ける形。こちらから特に指示しないでも勝手にやってくれるあたりに、調教の成果を感じました。
「五十妻君、先に言っておくが」春木氏はくりちゃんの性器をガン見しながら、「僕は放尿を既に克服している。だからその攻撃は、効かないよ」
「……命乞いですか?」
「いや、そういう訳じゃないが、こんなに熱い戦いなのに、興醒めするのが残念でね」
「なるほど。でも、安心してください」
 自分は凜として春木氏に言い放ちます。
「この一撃で、春木氏ほどの人物を倒せるとは思っていません。まずは状況を立て直す為に、くりちゃんには漏らしてもらうのです」
「え? ちょ、それどういう……」と、慌てるくりちゃん。
 黄命、発動。
 すかさず自分はくりちゃんの足と足の間に自らの頭を突っ込み、首と体を曲げて上を向くと、口を大きく開けました。第三者的視点で見れば、大男が裸ランドセルの小学生の股間に、不自然な体勢で顔を埋めて、しかも口が性器に接触しているという状況。間違いなく逮捕です。
 やがてくりちゃんのおまんこから溢れ出る、黄金色をした、命の水。
 黄金は命題に劣る。
 自分が生まれて初めて飲んだおしっこの味はしょっぱくて、ほんの少しだけ苦く、それから、どこか懐かしい、初恋の味がしました。

       

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