Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「ふぇ?」
 目覚めたくりちゃんの第一声に、自分は底知れぬ恐怖を感じ、戦慄しました。
 もうすっかり、どこからどう見ても「子供」になったくりちゃん、いえ、ここはろりちゃんとでも呼ぶべきでしょうか。とにかく、成長途中の中学三年生から、成長途中の小学生と化したこの1人の少女の姿は、ロリコンにとってみれば、まさに垂涎の存在、御璽の如き威光を秘めている事は明らかでした。
 触れる事さえ躊躇われるような白い肌と、とろん、とした柔い眼差し、幼いながらも美しい鼻梁に、長い黒髪(体だけではなく、髪についても子供の時の状態に戻っているようです)がぱらぱらとかかっています。自分の記憶の中にいるくりちゃんの姿と照らし合わせるに、おそらく、小学4年生の頃の姿のように思われました。
「くりちゃん」
 優しく声をかける春木氏。誰に許可を取ってその名で呼んでるのか、と自分は少し嫉妬をします。
「ん~? その名前で呼ぶなと……」
 くりちゃんが寝ぼけ眼をこすりながら、いつも自分としているやりとりを春木氏と行うのを見て、嫉妬は悋気までレベルアップし、自分はたまらず声をかけました。
「くりちゃん、とっとと起きてください。緊急事態ですよ」
 それからくりちゃんは自分の体の異変に気づきました。最初は、小さくなった手の平に違和感。次に腕の長さに戸惑い。そして立ち上がると、目線の低さに驚愕。やがて窓ガラスに映った自分の姿を見て、発狂。
 余りの事態に声も出ないらしく、教室を見回し、助けを誰に求めて良いかも分からず右往左往するくりちゃんに、春木氏が告げました。
「子供の頃に戻りたい。と、そう言ったよね? 願いが叶って、良かったじゃないか」
「お、お……」くりちゃんはわなわなと震ながら、「お前も変態か!」
 と、今更ながらの突っ込みを入れました。春木氏は当然のように、
「ああ。変態だよ」
 にこやかに答え、くりちゃんは苦悶に顔を歪ませていました。
 どうやら、この2人は以前に接触した事があるようです。そこで自分は、音羽邸の玄関口でした、春木氏と三枝委員長のやりとりを思い出しました。春木氏が「子供の頃に戻りたいと思った事って、ある?」と尋ね、三枝委員長が「無いわ」と即答したアレです。
 おそらくは、アレが春木氏の能力の発動条件となっているのでしょう。三枝委員長は無いと答えて、くりちゃんは、あると答えた。発動した春木氏の能力は、完全な子供に戻るのに、ある程度の時間が必要な物だった。その間に音羽(兄)が能力によって人形化させた事によって、状態が固定化された。くりちゃんの人形を初めて見た時、「幼い」と感じた自分の印象はやはり当たっていたという事です。
「わ、私が子供の頃に戻りたいと言ったのは!」自分の事を指差し、「恥をかく前に戻ってこの変態野郎を殺しておきたいって意味だ! 本当に子供に戻りたかった訳じゃないし!」


「あっそう」
 興味なさそうに呟いて、春木氏が自分に向き直りました。
「ところで五十妻君は、小学生にはどんなコスチュームが似合うと思う?」
 今、くりちゃんが着ている服はぶかぶかのゴスロリ服。愛くるしくはありますが、性的な魅力には乏しい状態だと言えるでしょう。
 この質問に答えてはいけないというのは、いくらなんでも誰だって分かりきった事のはずです。いかに自分の性癖を押し付けて相手を勃たせるかという戦いにおいて、相手の好みを尋ねるなんて事、普通ならありえない事ですし、それが分かったら苦労しません。そもそも自分は、以前断言した通り、決してロリコンではないのですから、「小学生に似合う衣装」なんてこれまで1度も考えた事がありません。
 無言の自分に、春木氏は言いました。
「僕の別の能力でね、1日に1度だけ、10歳以下の子供を好きな服装に着替えさせる事が出来るんだよ。君はくりちゃんにどんな格好をさせたい?」
「裸にランドセルでお願いします」
 即答した瞬間、「何やってんだ!」という声と、「よくやった!」という声が両耳から聞こえました。何故に自分は躊躇無くエロスを追い求め、窮地に向かってダッシュしてしまうのか。未だに解けない謎ですが、しかしここは、この答えで大正解です。後悔などする訳がありません。
「ははは! 良い趣味してるじゃないか。裸ランドセルは僕の好きなコスランキングでも3位に入る。気があうね、五十妻君」
「ちょ、ちょっと待て! 状況が分からんけど、分からんけど絶対おかしい! 何もかもが間違ってる!」
 くりちゃんはそう叫びながら、何のきっかけも無くすっぽんぽんになりました。
 ゆで卵のようにつるんつるんの肌、まな板に2つ乗った、色素の薄いピンクのポッチ。そして一番目を引くのは、おへその下でひっそりと閉じた1本の縦すじ。しかもそれらが、両肩にかかった2本の赤いベルトと、靴下と靴でより強調され、まさに自分の注文通り、幼稚さと妖艶さの混在した、比類無き至極の裸ランドセルでした。
 やばすぎる。
 道徳的な意味でも、戦闘的な意味でも、作品の存続的な意味でも、これは非常にやばい。自分はそう確信しました。
「またあんたのせいで変態に巻き込まれたんだ! なんとかしろ!」
 と、裸ランドセルくりちゃんは、今、己がしている卑猥な格好にまだ気づいてないらしく、自分に近づいてきたので、否が応でも我が息子は元気になっていきました。春木氏の攻撃が始まる前、心のどこかで、いくらなんでも子供に欲情するのは異常だと思い、むしろ現物を前にしたら、親心的な物が芽生え、男の本能にストップをかけるのではないか、と寄せていた淡い期待は亜空間へと吹き飛びました。
「く、くりちゃん、格好。自分の格好を見てください」
 ぽたぽた垂れる鼻血をおさえながら、自分はそう指摘しました。
 くりちゃんは下を向いて、一瞬呆けた後、顔を真っ赤にすると、右手で胸を、左手で股間を隠し、なんだか本格的にいやらしい事になってきました。


「素晴らしい」
 と、春木氏は拍手をしました。
「完璧な幼児体系、挑戦的な美少女顔、清純さを表す長い黒髪、そして何よりもその恥じらい方。素晴らしい。素晴らしすぎる」
 春木氏の言葉は至極最もで、自分は心から同意しました。
 いやいや、同意してちゃ困るのです。
 現在、自分の勃起率は95%。春木氏は80%。
 本来ならば、まずは愚息の暴走を止め、しかるのちに攻撃に転じる所ですが、実は、つい先ほど三枝委員長を調教した際に、自分は新しい能力を手に入れました。それを使えば、行動の順序を逆転する事が出来ます。
「今すぐ戻せ! 私を元に戻せー! なんで変態の相手をしなきゃならないんだーー!」
 局部を隠しながらも、全裸で地団駄を踏むくりちゃん。ちらちら乳首が見えて、危険度が高まるのでやめていただきたい。
「くりちゃん、元に戻りたいのなら、自分に協力してください。春木氏を倒さなければ、くりちゃんは子供のままですよ」
 と諭すも、ほぼフル勃起、両目は全開、鼻血だらだらでは説得力も無いかのように思われましたが、意外にもくりちゃんは納得、普段の行いが良いのか、あるいは藁をも掴みたい一心なのか。
「……分かったよ。またあんたの言いなりになればいいんだろ……」
 数多の変態に陵辱されてきた経験を持つくりちゃんは、最早諦めの境地らしく、悲しげにそう言いました。そこに口を挟んできたのが、春木氏です。
「くりちゃん。僕の言う事を聞いてくれたら、元に戻してあげるよ」
 自分と春木氏のちょうど間に立つくりちゃんに、春木氏は続けます。
「五十妻君の味方をしたって、彼が僕に勝てるとは限らない。先に断言しておくけれど、五十妻君が負けた場合、僕は君を元に戻さない。僕の能力は制限時間が無いからね、僕が飽きるまで小学生の姿で過ごしてもらうよ」
 鬼畜な事をさらりと言ってのける春木氏に、自分もくりちゃんもはっきり言ってビビっていました。この人間はおかしい、という共通認識。
「でも、僕に協力してくれるのなら、五十妻君に勝ったら必ず君を元に戻してあげよう。どうだい? 悪い取引ではないと思うけど」
 くりちゃんは突然の提案に混乱しています。


 今、くりちゃんの手には重要な2つの選択肢が与えられました。
 1つは自分に協力し、春木氏を倒し、元の貧乳中学性に戻る事。
 1つは春木氏に協力し、自分を倒し、元の貧乳中学生に戻る事。
 こう並べてみると、果たして元の鞘にそんなに魅力があるのかは甚だ疑問ですが、このまま小学生として過ごす事は、おそらく耐えがたい事であり、色々な問題が発生します。
「くりちゃん」
 自分と春木氏が、同時にくりちゃんに声をかけました。
 自分はくりちゃんと同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校に通ってきて、家は隣同士で、時に喧嘩し、時に助け合いながら、これまでの人生で、かなり多くの時間を共有してきました。自分はくりちゃんがブロッコリーを嫌いで、焼き芋が大好きなのも知っていますし、毎朝嫌々ながらも、くりちゃんは自分を起こしに来てくれます。さびしがり屋で、人見知りが激しく、だけど甘えん坊なくりちゃん。くりちゃんは、自分を知っていますし、自分はくりちゃんを知っています。一方で、春木氏とはほぼ初対面のはずです。
 だから、くりちゃんがどちらを選ぶかなどは、分かりきった事でした。
「春木……とか言ったっけ?」
 くりちゃんは、全裸ながらも精一杯虚勢を張って、春木氏に向き直りました。春木氏は笑顔で「はい」とだけ答え、自分は小さなお尻を眺めながら、くりちゃんの次の言葉を待ちます。
「あんたに協力する」
 えっ。
 くりちゃんは振り返り、両目に大粒の涙を溜めて叫びました。
「ざまあみろ! これからあんたのちんこを再起不能にして、あたしは変態から解放されるんだ! 今まで散々人をおもちゃにしやがって! 覚悟しろよ! へへーん!」
 くりちゃんは春木氏の仲間につきました。
 絶望。
 急激に、自分を取り巻く空気が重く、淀んだ物に変わりました。ブラダーサイトで見るに、くりちゃんの尿貯蔵率はたったの2%。この距離から飛びついて3回触るのは難しいでしょうし、暴れながら漏らされたのでは、春木氏を倒しうるエロさは得られないと断言出来ます。くりちゃんが味方するとなれば、春木氏が次にとる手は……。
「それじゃあくりちゃん、ポーズをとってもらえるかな?」
 春木氏は笑顔を崩さず、くりちゃんの肩に手を乗せました。
「……ポーズ?」
 くりちゃんは訝しげに見返します。
「うん。その机の上に乗って、M字開脚して欲しいんだ」
 くりちゃんは「話が違う!」というような顔で自分に視線をやりましたが、知った事ではありません。自分に反旗を翻したのは、むしろあなたの方でしょう。
「さあ、早く机に乗ってM字開脚でピースしてくれないか」
 さりげなく注文が増えたものの、追い詰められたくりちゃんは、しばらく無言で考えた後、覚悟を決めました。
「わ、分かった。それをしたら、あの馬鹿を倒せるんだな?」
「それはどうだろう。くりちゃんと五十妻君次第じゃないかな。くりちゃんが、五十妻君を発情させられるかどうか、だから。でも僕は、君なら出来ると思っている」
 ごくり、とくりちゃんは唾を飲み込みます。
「……やればいいんだろ! 変態行為もこれで終わりだ!」
 くりちゃんはまず椅子に乗り、股間を押さえながら、右足を机の上に乗っけました。ちら、と局部が見え、自分の勃起率は98%に到達。片足だけで乗る事はバランス的に不安らしく、胸を隠す左手のガードを解き、あいた手で机を押さえ、残る左足も机の上に乗せました。
 そしてこちら側に背中を向けたまましゃがみこんで、「くぅぅ」と小さく鳴きながら、大きく息を吸い込んで、一気に後ろに振り向きました。
 机の上、裸ランドセルでM字開脚をする小学生くりちゃん。
 その5秒後、自分の勃起率は「100%」に達しました。

       

表紙
Tweet

Neetsha