Neetel Inside ニートノベル
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 異性が確実に結ばれるように、神様が性器を用意したのだとしたら、同性でも愛し合えるように、唇は用意されたのかもしれません。何せ三枝委員長は、まるで絶対の権利を行使するかの如く偽くりちゃんの口内へ、遠慮なくずぶずぶと貪るように舌を入れていましたから、自分がそんな事を思ってしまうのも無理からぬ事です。
「ふぁ…………はぁ…………」
 宣戦布告なしの奇襲攻撃を受けた偽くりちゃんの全身からは、すとんと力が抜けたようでした。最早火薬庫には満足に抵抗出来る弾薬など残されていないらしく、ただただされるがままに蹂躙されるのみで、これにて完全に勝負は決したかに見えましたが、それは自分の愚かな勘違いでした。
 特攻。
 偽くりちゃんが次に取った行動をこう称して何ら語弊は無いはずです。
 観客達の視線は、首から上で行われる壮絶な空中戦から、そのずっと下の下、より壮絶な海戦へと移りました。三枝委員長の指が偽くりちゃんの秘部に猛攻を仕掛けているのと同様に、偽くりちゃんも三枝委員長の秘部へと果敢に攻め入っていたのです。
 こうなってしまうと、もう完全に性行為です。
 一体それは何基準だ、と苦情があるかもしれませんので説明します。まだどちらかが一方的に身体を弄るだけならば、年端もいかない子供達の無邪気な戯れと受け取ってもらえたかもしれません。特濃ディープキスも、まあ超ぎりぎりですが、仲が良いという意味のアレだと判断しようと思えば出来なくも無い。が、股間を指で刺激しあってるとなれば、もうそれは、誰がどう贔屓目に見ても、性行為ですから。性行為、ですから。
 しかしながら、偽くりちゃんのその反撃を「特攻」と呼んだのはもう1つの意味があります。それは即ち、冷静かつ客観的に見れば、敗戦国家が最後の最後に意地を張り通すような、馬鹿げた悪あがきであった、という事です。
 勉強しかり、運動しかり、じゃんけんなどという運勝負しかり、そして、愛撫しかり、この人に勝てる訳がないのです。三枝委員長は、偽くりちゃんが肉体に痛みを感じない範囲を重々心得ているようで、じらしてじらしてじらして攻める、最も快感の増すアルゴリズムを完璧に守る高等テクを保つ一方、偽くりちゃんの愛撫はまさに稚戯。三枝委員長の性器をただ指で触りまわしているだけで、全然核心には迫れていないのです。
 三枝委員長の手の動きが激しくなるのに比例して、偽くりちゃんの息遣いは荒くなり、小刻みな震えが増えて参りました。制空権も制海権も根こそぎ持っていかれている彼女には、もう全面降伏しか手は残されていないのです。 
 くたーっと骨抜きになった小さな身体を完全に預けられた三枝委員長は、最早戦う形にさえなっていない偽くりちゃんの性器に向け、これでトドメとばかりに舌を突き出して舐めました。やがて、地球の自転が早くなるのではないかと心配になるくらいの悲鳴をあげて、偽くりちゃんは絶頂に達しました。
 偽くりちゃんの身体を優しくステージに横たえさせ、ゆっくりと立ち上がった三枝委員長がほんの少し不満げに見えたのは、果たして自分の気のせいでしょうか。気のせいでないとしたら、その不満は、「もっと楽しみたかった」という悪魔的な不満であるに違いなく、戦果の大きさを物語っています。
 焼け野原となったステージには1人、魔王が立っていました。


 次の瞬間、誰からともなく、ぱらぱらと拍手が起こりました。拍手は次第に大きくなり、やがて万雷のそれとなって、三枝委員長と偽くりちゃんの2人に送られました。
 偽くりちゃんが絶頂を迎え、そのいやらしさ極まりない幼児体型をこれでもかというほどに見せつけ、これにて本日のメインイベントは終了し、そろそろ解散と思った者が大多数だったのでしょう。実際、ほとんどの人はもうカメラを仕舞っていて、周囲に国家権力の気配が無いか心配をし始めた所でした。
 あれだけ素晴らしいロリ百合まな板ショーを見せられたら、これでお開きだと思うのも仕方の無い事です。終わりの拍手を送りたくなるのも十分分かりますが、今ここにいる観客達は根本的な間違いを犯しています。
 そう、これからが、本番なのです。
「皆さん、お待たせしました」
 三枝委員長の一声で、拍手はピタっと止み、再び注目が集まりました。大衆は常に幸福の奴隷です。
「木下さんばかりが気持ちよくなってしまって……私は置いてけぼりです」
 さも悲しそうに、三枝委員長はそう言って、うつむき加減に客席に目を配りました。
「この中に、私を絶頂に導いてくれる方はいらっしゃいませんか? もしもいたら、出てきて欲しいのですが……」
 ストリップショーからの集団レイプ。エロ漫画で120万回ほど見てきた展開です。それを実際にやろうと言うのでしょうか。自分は三枝委員長の正真正銘のド変態さに唾を飲み込み、周りを見渡しました。
 圧倒的無言。その裏には、軟弱な男同士の牽制しあいが隠されています。
 確かにエロ漫画に良くあるシチュエーションとはいえ、ここはエロ漫画の世界ではありませんから、刑法181条により、集団強姦罪には4年以上の懲役がつきます。今の場合は、三枝委員長側から誘っているのは明白で、この事実に対しての証人もこれだけの数がいますが、全員が共犯となった場合、彼女の手の平がちょんと返れば、これまで積み上げてきたそれぞれの人生はあっという間に反故にされてしまいます。無論、人生を投げ捨ててでも抱く価値が三枝委員長にあるのも間違いはないのですが、しかし三枝委員長の身体はたったの1つですから、当然、1度火がつけば奪い合いになります。力の強い者が勝つ原始時代に一時的にタイムスリップし、弾かれた者はぶっかけすらままならない可能性もあります。
 よって、誰も動けないのです。「俺がやるぞー!」と大声で出て行こうものなら、後ろから新しい男がきて蹴飛ばされ、蹴飛ばした男も更に後ろからやってきた男に蹴飛ばされるという無限ループが待っています。あらかじめ順番をくじびきか何かで決め、効率よく輪姦していくプランが決まっていれば話は別ですが、このにわか集団ではそれも望めません。
 また、こういった高度に政治的な問題とは別に、「自信」という重要な問題もあります。
 何せ相手は、ほぼ未開発の幼女をほぼ指だけでイかせた性のスペシャリストです。それを相手に武器もなしに戦って、果たして勝てるというのか。三枝委員長は「私を絶頂に導いてくれる方」と指名しました。それが成就せずに、コトが終わると同時に豹変した三枝委員長に「……けっ、粗チンが」などと罵られようものならば、心にマリアナ海溝より深い傷が刻まれ、そこに大量の練りからしがなだれ込んでいく絵が容易に想像がつきます。
 つまり、動きたくても動けないのです。
「あれ、やりたくないの?」と、耳元でトム。
 やりたいに決まっている。しかし、やれないのです。


 そういった集団心理が生まれ、結局名乗りをあげる者が1人も出ないという事を、三枝委員長は想定した上で言ったのでしょう。次の台詞で、それが分かりました。
「……どうやら、いらっしゃらないようですね。それなら仕方ありません。自分自身で、慰める他ありませんね……」
 という訳で、蓋を開けてみれば何の事はない、非常に回りくどいオナニー宣言だったというオチです。半分安心、半分落胆という雰囲気に包まれた会場は、しかし侮りも色濃く、言葉に訳すに「いくら魅力ある身体といえども、流石に幼女とのレズプレイに勝るオナニーなど存在しえないだろう」という意見がクラウドしていました。
 そんな無難さを覆すのが三枝委員長というお人です。
 おもむろに、1つ1つ丁寧にシャツのボタンを上から外していく三枝委員。下半身丸出しスタイルの卑猥さは、先にも重々述べたのでご理解いただけたと自負していますが、それは同時に三枝委員長にとって強力な武器を1つ、封じているという事でもあります、これは言ってみれば、歩飛角香銀金玉落ちで将棋を打つようなものであり、羽生レベルでなければこれで勝つ事は出来ません。
 三枝委員長の持っている天性の武器。それは即ち、「おっぱい」です。
 中学生にあるまじきその胸の猥褻物。まったいらな偽くりちゃん、それに毛が生えた程度の(乳毛という意味ではありません)本家くりちゃん。両者は持っていない、そして未来永劫持つ事はないであろうリーサルウェポン。男には決してない、あってはならない母性の塊。即ちプルトンをついに今、三枝委員長は解き放ちました。
 ばぃぃ~~ん。
 という擬音が似合いそうな乳房。
 思えば、ここまでの戦いで、あえて口にはしませんでしたが、自分は皆さんが思っているよりも遥かに苦戦してきました。三枝委員長のスカートが落ちた時、偽くりちゃんが全裸になった時、愛撫が始まった時、舌が挿入された時、偽くりちゃんが絶頂に達した時、いずれも自分は99%まで勃起して、何度も何度も心の中で言い聞かせました「自分は変態であり、おしっこだけを愛していれば良いのだ」はっきりいって2人の裸を事前に見ていなければ即死でした。
 かろうじて堪えていたのです。常人ならとっくにちんこが爆発しています。
 しかし今回の戦いで最も危なかったのが、三枝委員長のおっぱいが解放された今この瞬間です。何度も見ているはずなのに、実際、この手に掴んだ事まであるというのに、その時よりも遥かに魅力的に見えてしまうのです。これがつまり、「露出」の真髄という事なのでしょう。
 次の瞬間、耳に聞きなれた音が届きました。BOMB! 例の爆発音です。自分は慌てて股間を確認しましたが、どうにもなっていません。ほとんど勃起していますが、まだ土俵際で踏ん張っています。次に爆発音のした方向を見ると、煙があがっていました。その周囲では、観客の何人かが騒いでいます。「どうした!?」「テロか!?」「突然こいつの股間が爆発したんだ!」「俺は何もやってないぞ!」
 前方に向き直ります。春木氏の後ろ姿を探し、それはすぐに見つける事が出来ました。しかし爆発したのは春木氏ではないようで、彼は平然と三枝委員長を見続けています。つまり、決着はまだしていない……!
 爆発したのは自分でもなければ、春木氏でもなく、三枝委員長でもなく、トムでもない。これはつまり、別のHVDO能力者が観客達の中に混ざっていたという事を示しています。
 自分はふと、思い出しました。
 人一倍おっぱいが好きな、彼の事を。

       

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