Neetel Inside ニートノベル
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act!on -Ragnarok-
Act1:Start

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「オズ、やはりお前か」
 ここは、広い工場の跡地のようだ。目の前でサングラスを掛けた日本人が、目の前の金髪の男をオズと呼ぶ。日本人の男の左手には、刀が握られていた。
「お前が計画を……!!」
「そうだ。俺がこの計画を始動させ、今までお前はいい働きをしてくれた」
 金髪の男には、憂愁の表情がうっすらと見えた。その右手には、やはり日本刀。
「そんな事……あのお前が、そんな事を……」
「もう遅い。こうなったからには……お前も分かってるんだろう? これからどうするべきか」
「……くっ!!」
「決着を付けよう。お前と、俺。どっちが正しいのか――」
 お互いの刀がそれぞれの相手に向けられる。その瞬間、緊迫した空気の中で、1つの歌が挿入される――


『ドアが閉まります』
 ……ギリギリセーフ。
 一人で映画を観に行った帰り、今にも出発しそうな電車を見つけ、滑り込みで間に合った。
 全く、劇場版のアニメ映画を観ようと思っていたら、間違えてどこぞのアクション映画を観てしまい、がっかり半分、満足半分だった。
 どうして満足半分かと言えば、結構楽しめたからなんだけど。
 挙げてみればきりがない。
 銃を突き付けられている所から、背負い投げで相手を投げ飛ばし、そのまま銃を奪っての銃撃戦。バイクシーンのスピード感はこの世の物とは思えなかったし、ラストの相手の頭領との戦いは、『スターウォーズ』さながらの激しいチャンバラで、心臓が爆発しそうな位だった。
 今でもその余韻は残っていて、頭の中では、アドレナリンとかそういう物質が、忙しなく駆け回っている。そのせいか、若干テンションのおかしくなった俺は、ギリギリ間に合った時少しポーズを決めてしまった。それで、他の人の白い目の集中砲火を浴びながら席に座る羽目になり、直後に後悔が俺の頭を冷やしていった。
 電車が動き始める頃には、いくらか周りを見渡せるだけに気持ちが落ち着いてきた。今日が平日であるせいか、いつもは賑やかな電車が今日は静かに感じる。
 その席の窓から外を眺めていると、後ろから声を掛けられた。
「動くな。動いたら殺す」
「……!?」
「俺は国際特殊警察だ」
 男が囁くような声で、そう言った。
 当然だが、訳が分からない。俺はただの一般人であり、国際社会の要人と言うわけでも、反社会組織の一員でも、ましてや犯罪者と言うわけでもなかった。生まれてから、ずっと自分に正直に、真面目に生きてきた自負がある。それなのに、どうして警察に捕まらなくてはいけないのか。
「河原崎健一郎だな?」
「誰?」
 俺は、突然金縛りに遭ったような気持ちだった。
「とぼけるな。河原崎健一郎だろう」
 だから誰だよそれは。
 どうやら、こいつは俺を誰かと見間違えたようだ。
 ……しかも、国際警察かなんかが追うような人に。
 自分が潔白である証明をしようと、まずは自分の名前を明かすことにした。
「俺は佐藤だ」
「ならば身分証明の物はどこか教えろ」
 かえって警戒させてしまったようだ。その河原崎という人が危険なのか、敢えて下手に動かせる事はしないようだ。どうしようか、悩んでいると後ろから苛立った空気が漂ってきた。
「早くしろ」
 俺には見せる気がなかった。と言うより見せたくなかった。まず、本当に特殊警察なら、簡単に身分を明かすことはしないはずだ。となると、俺の後ろに立っているその男は、冴えない強盗に違いない。というのがその理由だ。
 それに、考えも無い訳ではない。
「ジャンパーの……右のポケットに……免許証が」
「そうか」
 手が、脇の下から伸びて行く。そして、ゆっくりとジャンパーのポケットに掛かった。
 その瞬間、俺は相手の伸びている手を掴み、腰を密着させて背を向けたまま懐に潜り込み、その軽く曲げた膝を一気に伸ばしながら相手の体を背中で持ち上げた。
 ――見よう見まねの背負い投げである。
 俺は、地面に叩き付けられた相手の手から銃をもぎ取り(本当に持っている事には驚いた)相手に突き付けて、物心ついた頃から言ってみたかった台詞を吐いた。
「チェックメイトだ」
 その瞬間に大勢の乗客がどよめいた。俺が銃を持っている事を目撃した乗客が絶叫し、逃げ出す。数分後には、車掌が出てくる始末となった。アクション映画で観た通りの展開だったのが少し嬉しかったが、それでも彼を恨まざるを得なかった。

       

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